ザ・ホーンテッド・コレクション 鑑賞

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【地下にあるヴァニラ画廊に降りる階段途中のポスター】

SNAKEPIPE WROTE:

先週の「YOSHIROTTEN Radial Graphics Bio」で銀座を訪れた時、もう一つの展覧会を鑑賞していたんだよね。
それはヴァニラ画廊で開催されている「ザ・ホーンテッド・コレクション -HNコレクション奇妙な書斎-」。
2016年6月の「シリアルキラー展」、その6年後になる2022年7月の「シリアルキラー展2022」で、モノホン(!)の連続殺人鬼、いわゆるシリアルキラーが描いた絵画を鑑賞した画廊だよね。
作品を所持していたのがHN氏というコレクター。
今回は「シリアルキラー展」の範疇に収まらないHN氏のコレクションを展示する企画だという。
どんな作品に出会えるのか期待しちゃうね!(笑)

「シリアルキラー展」は大盛況で、コロナ渦で人数制限されていた会場だったのに、作品鑑賞するために順番待ちする必要があったことを思い出す。
これは2016年の時も同様で、キャプションと作品を見比べようと、あちらこちらで渋滞するんだよね。
ヴァニラ画廊は、かなり小さめの会場なので、少しストレスを感じてしまう。
今回の「ザ・ホーンテッド・コレクション」は、事前予約なくて当日券のみ販売とのこと。
「シリアルキラー展」のように大混雑もあるかもしれない。

12時の開場時間少し前にヴァニラ画廊に到着。
行列ができているかと思いきや、地下への階段を降りていくと、なんと一番乗りだった。
大混雑の懸念はなくなったので、安心したよ。
SNAKEPIPEとROCKHURRAHの後ろに4,5人が並んだくらいで、「シリアルキラー展」ほどの人気ではないみたい。
ゆっくり観て回れるのは良いことだね。(笑)

ヴァニラ画廊は撮影禁止なので、今回も別の場所で画像を集めてみたよ!
感想をまとめていこう。

ヴァニラ画廊は会場がAとBに分かれていて、小さめの会場Bから鑑賞してみる。
ここには怪奇・ホラー漫画の原画が展示されていた。
水木しげるをはじめ、花輪和一、古賀新一、楳図かずお、つのだじろうなどの漫画家の作品が並んでいる。
元古本屋だったROCKHURRAHが、ほとんどの漫画家を知っているのはさすが!
壁に展示された漫画の原画の前に、ガラスケースが置いてある。
「わっ!黒死館だっ!」
ROCKHURRAHが驚いて声を出す。
小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」の初版本が展示されていた。
ROCKHURRAHが偏愛する作品なんだよね。
SNAKEPIPEもお勧めされて読んだことを思い出す。
黒死館と呼ばれる屋敷に関係する人は、召使ですら相当な知識人で文化的素養もあり、すべての会話についていかれることに驚いたっけ。(笑)
漫画の展示よりも本に大反応していたROCKHURRAHは、貴重な初版本が欲しかったのかもしれない。
昭和10年、1935年というと約90年前の初版本、一体おいくらなんだろうね?
はっきりした色使いと、アール・デコの影響を受けているような装丁が美しかったよ。

会場Aに移動して、一番最初に目を引いたのはピエール・モリニエの作品。
Wikipediaに「フェティシズムとエロティシズムを表現した官能的な作風」と書かれていて、ザッツ・ライト!(笑)
木炭を使ったような太くて黒い線で、女性を描いた作品が並んでいる。
これがとても小さくて!
近づかないとよく見えないほどだったよ。

写真も展示されていた。
モリニエが尻、足、ストッキングと靴のフェチだということがよく分かる。
倒錯者と敬遠されてしまうのも納得かも。
今回の「ザ・ホーンテッド・コレクション」では、作品リストがなかったので、タイトルや制作年についての情報がないんだよね。
「シリアルキラー展」では小冊子付きで親切だったのにな。
画家、写真家、人形作家と紹介されているので、モリニエの展覧会で全貌を観てみたいと思ったSNAKEPIPEだよ!

モリニエを鑑賞後、壁づたいに作品を観ていく。
「サーカスコレクション」として、古い時代のサーカス団員を撮影した写真が展示されている。
これはまるで映画「フリークス(原題:Freaks 1932年)」(画像左)や「エレファント・マン(原題:The Elephant Man 1980年)」みたいに、見世物小屋と曲芸などを披露するショーが合体しているサーカス団の写真なんだよね。
すでに衝撃的な映画を鑑賞していたせいか、「サーカスコレクション」に驚くことはなかったなあ。

「ザ・ホーンテッド・コレクション」で最も多く展示されていたのが、映画監督ティム・バートンのドローイングだったよ。
インクで線を引いたあと、水彩で色をつけている作品で、人物や謎の生物(?)が生き生きと描かれている。
ティム・バートン、絵が上手いなあ!
元アニメーターなので、サラサラと描けるのかもね?
作品はネットでも販売されていて、左の作品「On Pins and Needles」は、$8,775(約130万円)とのこと。
これが最も高額だったので載せてみたよ。
HN氏はたくさん購入しているので、お金持ちだよね!

映画監督で絵も描いているといえば!
敬愛するデヴィッド・リンチのリトグラフも展示されていたよ。
リンチ教という宗教あったらとっくに入っているSNAKEPIPEだけど、この作品は初めて観たかも。
右側の顔に斑点があり、左の額には「D.L.」の文字があるね。
リンチの頭文字だ!(笑)
どうやらこれは自画像みたい。
あまり意味は考えなくて良い気がするよ。
そしてこちらもネットで販売されていたようで、お値段$300、日本円で約45,000円だった。
リンチの作品がこんなにお手頃だったと知ってショックを受けたSNAKEPIPEだよ。
一桁間違ってない?

ROCKHURRAHと別に作品を鑑賞していたSNAKEPIPE。
慌てた様子でROCKHURRAHが駆け寄ってくる。
「イレイザー・ヘッドの赤ん坊が展示されているよ!」
えっ、嘘だ、そんなはずはない。
「イレイザー・ヘッド」の赤ん坊(通称スパイク)については、リンチが絶対に口を割らなかったとして有名だからね。
どんな仕掛けになっていたのか、未だに謎のまま。
展示品を観てみると、確かに「あの赤ん坊」によく似ている人形(?)がケースの中に横たわっているけれど、「実物」というキャプションはなかった。
帰宅後調べてみると、赤ん坊のレプリカを手作りして販売しているサイトを発見!
頭部はシリコン製で、注文を受けてから1週間で発送とのこと。
お値段はアメリカからの送料込みで約5万円くらい。
いくらリンチ教信者のSNAKEPIPEでも、赤ん坊のスパイクを可愛がる自信はないなあ。(笑)
HN氏のようなコレクター向けなのかもね?

他にも「羊たちの沈黙(原題:The Silence of the Lambs 1991年)」に出てきた髑髏の柄が入ったメンガタスズメの標本や、「シリアルキラー展」でも紹介されていたクレイ兄弟が描いた絵などの展示もあった。
クレイ兄弟の絵は、あの時と同じ作品だったのかどうかは覚えていないけどね。(笑)
全体的に「ホーンテッド(恐怖や不気味さ)」とタイトルにするほどの内容ではなかったように感じた。
期待していただけに、落胆も大きい。
リンチ関連の作品がなかったら、かなり不満だったかも。
行って観たから言える感想だ、ということにしておこう。(笑)

シリアルキラー展2022 鑑賞

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【ヴァニラ画廊入り口のポスター】

SNAKEPIPE WROTE: 

2016年6月に鑑賞した「シリアルキラー展」は、その後も何度か展覧会を開催していたようだね。
シリアルキラー展2022」の情報を知らせてくれたのは、6年前同様に長年来の友人Mだった。
友人MとSNAKEPIPEは鑑賞している展覧会だけれど、ROCKHURRAHは未鑑賞。
観てみたいというROCKHURRAHと一緒に、狂気の世界を再び覗き見ることにしたのである。

以前は銀座方面から歩いたはずのヴァニラ画廊だけれど、銀座8丁目に位置しているので、ほとんど新橋なんだよね。
今回は新橋から向かうことにする。
サラリーマンの街として有名な新橋で降りるのは、乗り換え以外では初めてかも。
心なしか銀座とは空気が違う感じがするよ。

蒸し暑くて、たまに日差しがあると体感温度が上がる。
ヴァニラ画廊は親切に、画像付きで道案内を載せてくれているので迷わないで到着!
オンラインチケットを予約しているので、チケットを提示しようとネットにつなげようとしたけれど、ヴァニラ画廊が地下2階のためか電波が入らないんだよね。
画廊側も心得ていて、名前を言うことで予約確認してくれる手際の良さ。
テキパキしているのは良いね!(笑)
コロナの関係で人数制限をしていて、1時間ごとの完全入れ替え制なので、6年前よりは快適に鑑賞できそう。

すでに並んでいるお客さんは若い女性2人組。
後ろに並んだのは40代くらいのカップル、次にはまた若い女性。
おそらく1時間に10名程度のお客さんだけ入場させているのかな。
これもまた6年前と同じだけど、「いかにも」な雰囲気のお客さんは見当たらない。
アイドルに歓声を上げているように見える女性たちなのに、シリアルキラーに興味があるとは。
人は見かけによらないんだね。
「いかにも」に見えた1位は、やっぱりROCKHURRAHだろうね。(笑)

いよいよ入場。
ヴァニラ画廊はAとB、2つの展示会場があり、所狭しと作品が並んでいる。
10名程度の入場でも、作品の前で立ち止まりじっくり鑑賞する人がいると、相当苦労して回避する必要がある。
シリアルキラーがどんな犯罪を犯したのかを説明する文章をすべて読むと、「じっくり」になっちゃうんだろうね。

6年前も今回も、撮影はすべて禁止。
カタログからの転載も駄目という厳しい条件のため、これから先の画像は別の場所で見つけた「シリアルキラー展」には展示されてなかった作品なのでご了承ください。

ヘンリー・リー・ルーカス(Henry Lee Lucas)

娼婦だった母親から虐待を受けながら育つ。
1983年に逮捕され、11人殺害の有罪判決を受ける。
逮捕後にFBIに協力していたことから「羊たちの沈黙」のレクター博士のモデルの一人と言われる。2001年、獄中で病死。

「シリアルキラー展」ではルーカスの自画像が展示されていた。
その絵は、左の画像とは似ても似つかない、穏やかな表情をした人物なんだよね。
シリアルキラーが描いたと言われなかったら、「バッド・アート展」に紛れ込んでいてもおかしくない雰囲気。
左は邪悪な存在そのもので、とても怖い絵だよね。
まさにシリアルキラーを表現しているので、「やっぱり!」と納得できてしまう。
自画像の時よりは格段に腕前が上達しているので、獄中でたくさん描いていたのかも。
育った環境が劣悪過ぎているので、違う家庭に生まれていたら、別の人生を歩んでいたかもしれないね。

ハーバート・ウィリアム・マリン(Herbert William Mullin)

高校時代には「将来最も成功する人物」に選ばれるほど、明るく人気があるスポーツマンだったという。
薬物中毒の果てに統合失調症となり、1970年代初頭に13人を殺害する。
アインシュタイン博士からの命令で大地震や自然災害から人類を守るためだった、と主張する。
現在も服役中で、2025年には仮釈放の資格がある。

マリンには「連なる山」の絵が多く、今回も青と白を使った作品が展示されていた。
アーティストが何枚も同じ主題の作品を描くことがあるのと似てるのかな。
絵だけを観る限りでは、薬物や統合失調症の影響は見受けられないように感じるよ。
構図もシンメトリーに近いし、光と影も正確に捉えられているよね。
2025年に仮釈放されたとしたら、マリンは78歳くらい?
1973年から50年以上獄中にいた後、社会生活を送ることができるのか。

ウェイン・ロー(Wayne Lo)

1974年台湾生まれのローは、パイロットの父親とバイオリン指導者の母親という恵まれた家庭環境で育つ。
若干7歳でバイオリニストとしてデビュー、音楽もスポーツもできる成績優秀な生徒だったという。
1992年、大学で銃を乱射、教授と学生を殺害し、4人に重症を負わせる。
現在も服役中。

シリアルキラーという定義からは、少し外れているように感じるローだけど、「シリアルキラー展」に入っていたので、作品を載せてみよう。
ローが台湾系アメリカ人というのが、作品観ても分かるよね。
シリアルキラー展で鑑賞したのは、人物の顔写真に刺繍を施したものだったけれど、載せた画像はドラゴンを美しく刺繍している。
写真にミシンをかけるアートはどこかで観たことあるけれど、印画紙にここまで精巧な刺繍をするとは驚き!
頭脳明晰で音楽もスポーツも万能だったのに、どこで間違ってしまったんだろうね。

ハドン・クラーク(Hadden Clark)

1970年代半ばから1993年の間に2名の女性を殺害。
他にも殺人を自供しているが起訴にはいたっていない。
殺害後食べていたことを証言している。
現在は矯正施設に収監中。

まるで小学校に通う女の子が描いたような絵。
これをシリアルキラーが描いたと聞くと、印象がまるで違うものに変化してしまう。
クラーク自身が少女を好んでいたせいか、にこやかに笑う少女ばかりをキャラクター化して描いているんだよね。
そして特徴的なのが、手話をしている少女を登場させること。
クラークの署名の他に、「Nikayla(ニカイラ)」というクラークの分身の署名も加えることがあるという。
クラークの作品は、Serial Killers Inkで購入できることが分かったよ。
大量に在庫があるらしく、2つで$50だって。
買ってみる?(笑)

オーティス・エルウッド・トゥール(Ottis Elwood Toole)

6件の殺人事件で有罪判決を受ける。
ヘンリー・リー・ルーカスと共謀して30人から50人の殺害を自供。
1996年刑務所内で病死。

ルーカスの絵こそ、まさにシリアルキラーが描いた絵として認識されるだろうね。
稚拙だけれど残酷に見える、いかにもシリアルキラーだから。
トゥールの顔も、出会った瞬間から悪人だと分かる顔立ちなので、この人物ならこの絵を描くだろうと予想できるほど。
育った環境が劣悪で、精神障害をわずらっていたという。
教育や躾、家庭環境がトゥールに影響を及ぼしていたみたい。
時代が違っていたら、別の未来が開けていたかもしれないよね。

6年前と2022版を見比べたことになるけれど、印象としてはさほどの違いはなかったように思う。
シリアルキラーと一般大衆に、それほどの違いがないんだよね。
非常に絵が上手かったり、筆跡が几帳面な素人なんて、世間にはたくさんいるし。
本当に紙一重の世界だなと感じたよ。
どこかで、ほんの少しだけ違ってしまった方向が、どんどん思いもよらぬ世界に歩を進めてしまったような。

6年前にはHN氏だけしか書かれていなかったけれど、2022版にはH.Nakajimaと記されていた。
なかじま氏は、ずっとコレクターを続けていることが分かった。
人間像への興味ゆえ、だという。
答えが見つかることはあるのかな?
また何年後か、シリアルキラー展に行ってみたいと思う。

ジョーカー 鑑賞

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【台風19号の影響により、雨が降る中で看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

世界中でヒットしている映画、と聞いて「観たい!」と思うことは少ないけれど、今回ばかりはその波に乗ってしまったROCKHURRAH RECORDS。
そう、話題作の「ジョーカー(原題:JOKER 2019年)」を鑑賞したんだよね!
ジョーカーというのは、 DCコミックス「バットマン」に登場する最強の悪役
などと知ったように書いてはみたものの、実は漫画は読んだことないんだよね。(笑)
バットマンは映画でシリーズになっているので、その中の数本を観たことがある程度。

バットマンの宿敵であるジョーカーを主役にした映画ということは、いわゆるアンチ・ヒーロー物になるよね。
例えば「羊たちの沈黙(The Silence of the Lambs 1991年)」に登場するハンニバル・レクター博士のような感じかな。
正義や愛をテーマにした勧善懲悪物には、あまり興味を持たないROCKHURRAH RECORDS。
映画ランキング・トップのニュースを耳にしながらも、10月の3連休に観に行くことにしたのである。

ところが、この3連休には令和元年台風第19号(アジア名:ハギビス/Hagibis)が首都圏を直撃!
計画運休を決定した交通機関がほとんどで、なんと映画館も休館してしまった。
いつ上映が開始されるのか不明なまま、映画館のHPを何度も確認する。
連休最終日にやっと予約が取れたのである。

木場にある109シネマズ木場に行くのは初めてのことだ。
東京都現代美術館に行く時には、必ず利用している駅なのにね?
イトーヨーカドーの3階にある、ということだけどシアターが1から8まで完備されているという。
度々訪れる新宿バルト9と、そこまで変わらない規模ということになるね。
恐るべし、イトーヨーカドー!(違う?)
バルト9の場合は、シアターによってフロアが変わるけれど、109シネマズ木場はワンフロアなので、迷うこともなく、上映時間に遅れることも少ないんじゃないかな?
ただし、恐らくこの映画館ではメジャーな作品の上映しかしないだろうから、ROCKHURRAH RECORDSがお世話になる機会は少ないだろうけど。(笑)

連休中だったことも、台風の影響で遠出できなかったせいもあったのか、客入りは9割程度。
109シネマズ木場では、2つのシアターで「ジョーカー」を上映していたので、やっぱり大人気なんだね。
初めて入った劇場は、ゆったりしていて、視界良好!
この映画館、なかなか良いね!(笑)

それでは早速「ジョーカー」の感想をまとめていこうか。
まずはトレイラーをご覧あれ!
※ネタバレしないように書いているつもりですが、未鑑賞の方はご注意ください!

「どんな時も笑顔で人々を楽しませなさい」という母の言葉を胸にコメディアンを夢見る、孤独だが心優しいアーサー。
都会の片隅でピエロメイクの大道芸人をしながら母を助け、同じアパートに住むソフィーに秘かな好意を抱いている。
笑いのある人生は素晴らしいと信じ、ドン底から抜け出そうともがくアーサーはなぜ、狂気溢れる「悪のカリスマ」ジョーカーに変貌したのか?

公式HPにあるあらすじを引用させて頂いたよ。

主役であるアーサー・フレックを演じたのは、ホアキン・フェニックス。
ROCKHURRAH RECORDSでは、ホアキンと聞けば、チリのプロ・ゴルファーであるホアキン・ニーマンを連想してしまうけど?(笑)
今回の主役は、1980年代に大人気だった、俳優であるリヴァー・フェニックスの弟なんだよね。
全然似てないんだけど、本当に兄弟?
兄であるリヴァー・フェニックスは1993年に23歳という若さで急逝してしまう。
死因は麻薬の過剰摂取とのこと。
Wikipediaの記事によれば、その時一緒にいたのがホアキンだったらしい。
どんな状況だったのかは不明だけど、19歳のホアキンが辛い経験をしたことは想像できるね。
現在のホアキンは44歳で、とても健康そうに見えるよ。

映画「ジョーカー」の時のホアキンがこれ。
上の画像とはまるで別人だよね?
ヒゲで顔の輪郭が分かりづらくなっているのは確かだけど、それにしても頬はげっそりとこけてるし。
調べてみると、どうやら「ジョーカー」のために50ポンド、約23kgも減量して役作りをしたようで。
ぽっちゃりしてるピエロもいると思うけど、確かに「ジョーカー」の主役としては、不健康そうなイメージのほうが合ってるもんね。

舞台は1981年のゴッサム・シティ。
恐らく裕福な地域ではない設定なんだろうね。
その時代のニューヨークは生活水準が低く、治安が悪化していたという。
特に地下鉄は犯罪の温床とまで言われるほど、危険な場所だったそうで。
移動するのも命がけになっちゃうよね。
そんなニューヨークの状況をゴッサム・シティは踏襲しているのかな。
アーサーは、ピエロとして生計を立てている。
社会全体が不満で溢れている中、楽しげな笑いは怒りの対象になるのかもしれない。
嫌がらせや暴力を受けるアーサーは、見ていて気の毒だよ。

あらすじにもあったように、アーサーは母親の看病をしているんだよね。
母親は一歩も外出していなくて、食事も入浴も、すべてアーサーの介護が必要なようで。
アーサーの優しさがよく分かるシーンだったよね。
そんな母親の楽しみはマレー・フランクリンの番組を観ること。
アーサーもマレーのファンなんだよね。

このトーク番組で司会をしているマレー。
演じているのが、ロバート・デ・ニーロ!
辛口コメントで番組を盛り上げていく司会者役がぴったりだったね。
日本でいうなら「みのもんた」か「小倉智昭」みたいな感じか?(笑)
あまりにもハマり過ぎていて、最初デ・ニーロだと気付かなかったほど。
役作りのために体重を増減させる俳優の第一人者として、今回のホアキンの変貌ぶりはどう感じたのか聞いてみたいね?

アーサーの心の拠り所は他にもある。
同じアパートに住んでいるソフィーという女性だ。
ソフィーは、母一人子一人というシングルマザーみたい。
エレベーターで、ほんの少し言葉を交わしただけで、心を惹かれるアーサー。
他に女性との関わりがないということがよく分かるエピソードだよね。
アーサーには母親、ソフィー、そして司会者のマレーという3人が心の支えになっていたのかな。

アーサーには障害があることも、人との関わりが難しかった要因だろうね。
病名がWikipediaの解説によれば「トゥレット障害」とされているけれど、詳しくは分からないよ。
アーサーは何かしらの刺激により、突発的に笑い出す病気なんだよね。
例えばそれが怒りの感情から引き起こされても、笑いとなる。
そのため怒りながら笑っているという、非常に怖い顔が出来上がる。
竹中直人の芸で「笑いながら怒る人」があるけど、アーサーは本物なんだよね。
貧困、孤独、病気と、アーサーを取り巻く環境は良くない。

アーサーが「ジョーカー」になるきっかけとなった地下鉄の事件。
嫌なタイプの男3人なんだよね。
酔っ払って女性に絡んで、相手にされないと力づくで乱暴しようとする。
こんな男達は成敗されて当然だ、と思ってしまうよ。
一気にアーサーの怒りが爆発したのも納得しちゃう。

ブルー・スチール(原題:Blue Steel 1990年)」というキャスリン・ビグロー監督の作品に、銃を手にしたことで殺人を繰り返す男が登場する。
銃は力の象徴であり、自分自身が強くなったように感じてしまうんだろうね。
アーサーも武器を手にすることで、不満を爆発させる。
「社会の弱者だったアーサー」からの脱却ということだろうね。

ピエロの化粧に、赤いスーツ。
オレンジ色のベストに緑のシャツ、というド派手な色合いなのに、この時のアーサーにダンディズムを感じてしまったSNAKEPIPE。(笑)
自信を持ったアーサーの雰囲気が、通常のピエロとは別の人格に変えて見せているのかな。

弱者だった時のアーサーは、この長い階段をトボトボと一歩ずつ踏みしめながら歩いていた。 
赤いスーツの、「ジョーカー」に変貌したアーサーのステップったら!
階段降りる時は、転ばないように注意するSNAKEPIPEなんだけど、この時のアーサーはダンスしてたもんね。(笑)
王者は俺だ、と言わんばかりの堂々とした動き。
楽しげに笑いながらダンスしていたよね。
この時に流れていたのがゲイリー・グリッターの「Rock and Roll part 2」。
このダンス・シーンに合っていて、秀逸な選曲だったね! 

ゲイリー・グリッターは70年代、グラム・ロックの時代に大人気だった人物。
胸をはだけたギンギラのラメ衣装と、オーバーアクションが特徴!
ROCKHURRAHが書いた2011年1月の記事、「 時に忘れられた人々【07】グラム・ロック編 side B」もご参照あれ!

「心優しいアーサーが何故、悪のカリスマ・ジョーカーになったのか」とあらすじに書いてあったけれど、今回の映画を観て納得させられてしまった。
カリスマとして英雄扱いされている様子に拍手を送りたい気分になる。
世の中に一石を投じたジョーカーに陶酔する、民衆の気持ちが理解できるからね。
一度でも弱者扱いされたことがある人は、共感するんじゃないかな。
それが「ジョーカー」の人気の理由なのかもしれないね?

ホアキン・フェニックスが出演している映画は、何本か観ているようだけど、あまり印象に残っていない。
今回のホアキンは、ジョーカーが乗り移ったようで、鬼気迫る演技に圧倒されたよ。
それにしてもホアキン、タバコ吸い過ぎだよね。(笑)

「バットマン」のシリーズでジョーカーが印象的だったのは、「ダークナイト(原題:The Dark Knight 2008年)」。
以前鑑賞しているはずだけど、10年以上も前のことなので忘れてしまったよ。(笑)
「ジョーカー」との比較の意味を込めて、もう一度鑑賞することにしたんだよね。
SNAKEPIPEと同じように忘れている方のために、トレイラーを載せておこうか。 

主役のブルース・ウェインことバットマンをクリスチャン・ベールが演じている。
ベルベット・ゴールドマイン(原題:Velvet Goldmine 1998年)」では、グラム・ロックのスターに憧れている青年役だったっけ。 
またもやグラム・ロックが出てきたよ。(笑)

そしてバットマンの宿敵であるジョーカーを演じたのがヒース・レジャー。
銀行を襲う最初の登場シーンから最後まで、ずっと顔はこの化粧のまま。
その場しのぎの仲間を作るけれど、使い捨てにする。
そのため結局は一匹狼なんだよね。
頭が切れて、行動力もある異常者。
人間の性悪説を証明することが生きがいらしいので、手に負えないよ。

ジョーカーの異常性が最も良く表れていると感じたのが、看護婦に化けているシーン。
かなり不気味で強烈な印象を残してるよ。
この時のジョーカーがフィギュアになっているのを発見!(笑)
欲しいような欲しくないような逸品だけど、商品化したくなる気持ちも分かるよね。
ヒース・レジャー版のジョーカーも迫力満点!
この映画の後、亡くなっているのが非常に残念な俳優だよ。

制作年度が逆だけど、「ジョーカー」で、その成り立ちが語られ、「ダークナイト」では、その活躍(?)を鑑賞することができる。
2人の俳優が演じた、それぞれのジョーカー。
どちらも魅力的で、根強い人気があるのもうなずけるね。
ピエロを題材にした映画といえば、「気狂いピエロの決闘(原題:Balada triste de trompeta 2010年)」や「IT(原題:IT 1990年、2017年)」もあるよね。
「ジョーカー」の開始前に予告されていたのが「IT」の続編だった。
まだまだピエロを主人公にした映画が続くんだね。
やっぱりアンチ・ヒーロー物は面白い!(笑) 

ビザール・ポストカード選手権!28回戦

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【サイケデリックなイメージのサンタクロース。グル・サンタと名付けようか!】

SNAKEPIPE WROTE:

定期的に特集しているのが「ビザール・ポストカード選手権」である。
特に書くことが多いのが、この時期。
クリスマスとニューイヤーでカードの需要が高いため、面白いカードがたくさんあるせいだろうね。
昨年のこの時期は書いていなかったので、約2年ぶりに特集してみよう。
今年はどんなビザールに会えるかな?(笑)

ビンテージのポストカードには不思議なアイデアがたくさんあって、以前からその魅力の虜になっているSNAKEPIPE。
今回もまた意味不明のカードに巡り会えたよ!
花の中から飛び出している少女達の頭部。
少女は愛くるしい、まるで天使のようだ、とでも言いたかったんだろうけど。
右下の「まるでおたふく風邪にかかっている」ように見える平べったい顔に愛らしさは感じないけどね?
SNAKEPIPEには、不気味な食虫植物にしか見えないよ。(笑)
左上にある蕾の中にも頭部が隠れているのかと思うと恐ろしい!
このクリスマス・カードを送られて、当時の人は「素敵!」と思ったのだろうか。 

これも困惑系のカードだね!
これは一体、なに?(笑)
仙人のようにも見えるし、マルチーズが立ち上がったようにも見えるし?
まさかスター・ウォーズのチューバッカの毛が白くなったとか?(笑)
どうして雨の中で佇んでいるのか。
裂けた傘を持っているのは何故か。
主題がよく分からないけれど、明らかにクリスマス・カードなんだよね。
心なしか、うしろの木に止まっている鳥たちも「あれはなんだ?」と囁き合っているように見えてしまう。
これがもし絵画だったら、是非ともトホホなアートを収集・展示しているニューヨークのMuseum Of Bad Artの仲間に入れて欲しいと思ってしまう。
ビンテージ、恐るべしだね!

クリスマスに蛾? 
メッセージ付きなので、翻訳してみたんだけどね。
蛾はメッセンジャーの役割を果たしているようで。 
「夜は暗く、メッセンジャーの蛾は耐え忍ぶ私の重い愛を持ち出し、苦しみを与えるために笑っている私の目の光に飛び込むのです」
などと詩的に書かれているんだけど。
ラブレターとしてのクリスマス・カードだったとしても、文章重いし、意味も不明。(笑)
蛾が描かれていると、どうしても「羊たちの沈黙」を思い出してしまうSNAKEPIPE。
あの映画では「変身願望」の象徴として蛾が扱われていたっけ。
欧米と日本では蝶と蛾に対する考え方が違うのかもしれないけれど、クリスマス・カードっぽくはないよね?

あのう、もしもし?
あなた本当にクリスマスにプレゼントくれるサンタさん?
なんだかそんなところにいると、まるで覗きやってる変質者みたいに見えますけど?
本来なら姿を見ると喜ぶはずの子ども達が及び腰でカーテンに隠れているじゃないの!
「変なおじさんがいる」
「こわいよ」
と怯えているように見えるんだよね。(笑) 
ビンテージ物では何故かサンタが悪者になっている絵を見かけるので、これもそのシリーズの1つだろうね。
当時のブラックジョークだったのかな。
このカード、SNAKEPIPEは見た瞬間に大笑いしちゃったよ。 

クリスマス・カードなのに、スプラッター仕様とは!
少年の口元が血まみれになってるよ。
書いてある言葉は、どうやらドイツ語みたいね。
「ごあいさつ」とだけ書かれているようだけど。
うしろにいる山羊の角を生やした悪魔のような存在は一体なんだろう?
調べてみると、ドイツやオーストリアなどで受け継がれている伝説で、クリスマスシーズンに出没するクランプスという悪魔だという。
クランプスは、悪い子供に罰を与える役割を担い、良い子供には聖ニコラウスがプレゼントをくれる、ということになっているらしい。
「クランプスが来るよ」
なんて言うと子供には効果てきめんな脅し文句になるんだろうね。
そのクランプスを撃退した子供、という意味のカードなのかな?
クランプスは長い舌を持って描かれていることが多いので、少年が手にしているのはクランプスの舌だろうね。
そうとは知ってか知らずか、猫がじゃれついているところもブラック!
このカードを見て、「クランプスなんか怖くないやい」と思う子供が増えたらどうするんだろうね?(笑)

これも相当に意味不明のカードだよね。
男性が抱きかかえているのは七面鳥?
トサカ部分にサンタの帽子をかぶせているので、クリスマス・カードだと分かるね。
それにしてもクリスマスには七面鳥食べるのが欧米の習慣だったと思うけど?
この場合はどう解釈したら良いんだろう。
ペットとして飼っているので、みんなに食べないでと呼びかけるキャンペーン?
これから調理するけれど、その前に七面鳥に束の間のクリスマス気分を味わってもらうサービスタイム?
そしてこの男性は一体誰?(笑)
髪型や服装からして60年代から70年代を想像するけどね?
謎のクリスマス・カード、貰った人の困惑顔が目に浮かぶよ。(笑) 

最後はこちら!
なんでしょう、この不気味さは。(笑)
クリスマスやニューイヤーとは一切書かれていないけれど、ポストカードのようなので紹介してみよう。
この作品はニューヨーク出身のフォトグラファーでミクストメディアアーティストのmariの作品のようだね。
このアーティストは自分の作品をネット販売してるみたい。 
「かわいい」と「不気味」がミックスされた作品が多いのが特徴だね。
女流写真家ダイアン・アーバスの有名な作品である双子イメージが好きみたいで、アレンジした作品を何点か見かけたよ。
「ツイン・ピークス The Return」についても記事を書いてるのを発見!
SNAKEPIPEに近い臭いを感じてしまったので、大いに納得だね。
今度SNAKEPIPE MUSEUMで特集しようかな!

2年ぶりの「ビザール・ポストカード」を特集してみたよ!
どうしてもSNAKEPIPEの好みで選んでしまうので、ストレートなクリスマス・カードにはならないんだよね。(笑)
「なんじゃこりゃ」
と困惑したり笑ってしまうカードが好みだからね!
いつになるのかは不明だけど、次回のビザール・ポストカード特集もお楽しみに!