ハウス・ジャック・ビルト 鑑賞

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【映画ポスターを撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

2016年に鑑賞したヴァニラ画廊での「シリアルキラー展」の時、映画の半券を提示すると割引料金でチケットを購入できます、と告知されていた。

それは「レジェンド 狂気の美学」で、1950年代にロンドンで暗躍したクレイ兄弟の伝記映画だった。
犯罪映画とタイアップして絵画展を企画しているのか、今年2019年にも同じような記事を発見した。
今回の映画はラース・フォン・トリアー監督の「ハウス・ジャック・ビルト」だという。

ラース・フォン・トリアー監督と言えば、カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した「ダンサー・イン・ザ・ダーク(原題:Dancer in the Dark 2000年)」が有名だよね。 
ニンフォマニアック(原題:Nymphomaniac 2013年)」など性に関する過激な映画もあり、話題に上りやすい監督と言えるのかな。
公開される映画について調べてみると、カンヌ国際映画祭でプレミア上映され、途中で席を立つ観客が続出したという「いわくつき」の映画とのこと。
そう聞くと俄然興味が湧いてしまうのはSNAKEPIPEだけだろうか。
映画について検索すると、不思議なポーズを決めたポスター画像が何枚も出てきて、猟奇殺人の雰囲気が漂う。
これは是非とも鑑賞しなければ!(笑)

公開は6月14日とのこと。
翌日を鑑賞日に決め、新宿のバルト9に向かうROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
なんと、この日は土砂降りの雨!
さすが自他共に認める雨男のROCKHURRAHだよね。
統計は取ってないけど、かなりの確率で雨模様の外出になっているような?
SNAKEPIPEは長靴を履いて正解だったよ。

劇場に入る際、チケットもぎりの女性から手渡された物がある。
これは映画用ポスターのポストカード。
嬉しいプレゼントだけど、何故か2枚ともトリアー監督がポーズを決めたバージョン。
体が捻じ曲げられたポーズを取るポスターは全部で7種類はあったようだけど、なんで2枚ともトリアー監督なの?
よりによって一番人気がなさそうな(失礼!)カードを手にするとは、アンラッキーだなあ。(笑)
公開2日目で、観客の入りは約8割かな。
映画館でイヤな気分になることは避けたいので、大抵の場合は2人席を予約することにしている。
今回は前も後ろも静かな方で良かった!
それでは映画の感想をまとめていこうかな。
※ネタバレしていますので、未鑑賞の方はご注意ください。

まずは映画のトレイラーを載せておこうか。

主演がマット・ディロンなんだよね。
マット・ディロンと聞いて、少し懐かしい感じがするよ。
1980年代には「アウトサイダー(原題:The Outsiders 1983年)」や「ランブルフィッシュ(原題:Rumble Fish 1983年)」で一躍脚光を浴びた俳優だよね。
SNAKEPIPEはサントラを所持している「ドラッグストア・カウボーイ(原題:Drugstore Cowboy 1989年)」の印象が強いな。
ROCKHURRAH RECORDSでは相変わらず週に1、2本の映画を鑑賞する習慣が続いているけれど、ここ最近マット・ディロンの映画を観た記憶がないんだよ。
たまたま好みの映画に出演していないだけかもしれないんだけど。
そのためSNAKEPIPEは、2000年以前のマット・ディロンの顔しか知らないんだよね。

そんなマット・ディロンが主演のジャックを演じている。 
えっ、本当にマット・ディロンなの、と思ってしまう。
確かに今年で55歳だから顔に変化があるのも当然ね。
血飛沫を顔に浴びながら、満足気に微笑む顔は、まさにシリアルキラーそのもの!
ちょっと反抗的な悪ガキのイメージから、本物の悪党になるとはさすがだよ。(笑)

ここで「ハウス・ジャック・ビルト」のあらすじを書こうかな。 

1970年代の米ワシントン州。
建築家になる夢を持つハンサムな独身の技師ジャックはあるきっかけからアートを創作するかのように殺人に没頭する・・・。
彼の5つのエピソードを通じて明かされる、 “ジャックの家”を建てるまでのシリアルキラー12年間の軌跡。(公式HPより)

最初から殺人鬼だったわけではなく、あらすじにあるように「きっかけ」があったんだよね。 
それが「1st INCIDENT」として語られる。
親切心から車の同乗を許したのに、高飛車な態度を取られたら、頭に来るのは当たり前じゃないかな。
裕福な家柄のマダムといった装いのユマ・サーマン、「キル・ビル(原題:Kill Bill 2003年)」の頃とはイメージが全く違うね。 
高圧的で、まるでジャックの殺人欲(変な言葉だけど)を煽るような発言を繰り返す。
ここで踏みとどまるのが通常の心理状態だけど、ジャックは一線を越えてしまうんだよね。
「キル・ビル」の時に習得した必殺技を駆使すれば、最悪の事態は避けられたはずだけど、そううまくいくはずはないか。(笑)

これが最初の殺人のようだけど、ジャックには元々「人を殺したい」という欲望があったんだろうね。
真っ赤なワンボックスカーは、荷物(死体)を運ぶのに適している。
冷凍ピザ用の倉庫を買い取っている。
最初の殺人まで使用された形跡がないので、「その日が来る」のを待ち望み準備していたのでは、と想像する。

車の前で画用紙を次々をめくり、投げ捨てるシーンがはさまれる。
これってボブ・ディランのパロディだよね。

以前にも別のミュージシャンが、このパターンでビデオを撮っているのを観たことあったよ。
1965年にリリースされたという、50年以上も前のアイディアが未だに影響力を持っているとは驚き!

「ハウス・ジャック・ビルト」のあらすじにも書いてあったけれど、ジャックはアートに興味があるんだよね。
劇中にゴーギャンやバウハウスの建築など何枚もの絵画や、カナダのピアニストであるグレン・グールドの演奏シーンがはさまれる。
ジャックは建築家に憧れている建築技師、という設定なんだよね。
日本とアメリカでは基準が違うのかもしれないけど、Wikipediaによる違いはこんな感じ。
・建築士は、建築物の設計および工事監理を行う職業の資格、あるいはその資格を持った者
・建築家は、一般に建築における建物の設計や工事の監理などを職業とする専門家
似ているようだけど、建築家は建物のデザインや芸術性にこだわりを持っている、ということになるのかな。
ジャックは技師として、それなりの収入を得ているようで、前述したように車を所持し、冷凍倉庫を購入している。
更に自ら家を設計し建築するために土地まで購入するんだよね。

自分のための設計をしながらも、殺人は続いていく。
映画はジャックが誰かに己の犯罪について告白する体裁を取って進行していく。
「こんなことがあった」と語り、その時の再現が映像として流れるのである。
2番目に語った殺人事件も被害者は女性だったんだけど、この時のジャックは見るからに挙動不審者なんだよね。
突然ピンポンして訪ねた男が、最初は警察官と名乗り、会話の最中で「実は保険屋なんです」と態度を変える。
こんなジャックを信用して家に招き入れた女性にも非があるとは思うけど、後から来た本物の警察官もかなりずさんな対応だったよね。
あの時に勾留していたら、ジャック逮捕につながったのにね?

ジャックは「強迫性障害」という病気なんだよね。
潔癖症のため、掃除が行き届いていないと苦しくなるらしい。
2番目の殺人の後、この病気が起こり、何度も殺人現場に戻り、血の跡が残っていないかを確認する作業を繰り返す。
松尾スズキが出演していることから鑑賞した映画「イン・ザ・プール(2003年)」でも、強迫神経症の話があったことを思い出す。
2017年9月の「映画の殿 第26号 松尾スズキ part2」で、感想を書いているね。
何度も鍵をかけたか確認するため家に戻るような症状なんだけど、犯人が何度も現場に戻り、掃除をするというのはブラック・ジョークだよ。
思わず笑っちゃったもんね。(笑)

強迫性障害だったり、感情を表情に表すことが難しいジャックだけれど、心を奪われた女性がいるんだよね。
恐らくニックネームだと思うけど、「シンプル」と呼ばれていたよ。
「殺しよりも好き」とまで語っていたジャックだけれど、シンプルに対する態度は、とても愛する女性への接し方とは思えないほど横暴だったね。
シリアルキラーが「記念品」を欲しがる、という話を何かで読んだことあったけど、この時のジャックがまさにこの状態だったよ。
ジャックに愛されてしまったシンプルを演じたのはライリー・キーオ
なんとエルビス・プレスリーの孫娘だったよ。
ランナウェイズ(原題: The Runaways2010年)」や「マッドマックス 怒りのデス・ロード(原題:Mad Max: Fury Road 2015年)」にも出演していたようだけど、あまり覚えがないなあ。

ジャックにとって人を殺すことには、どんな意味があったんだろう?
殺害後、ジャックは死体をモデルにした写真撮影を行っているんだよね。
まるで写真用のモデルが欲しくて、犯行に及んでいるかのよう。
デヴィッド・フィンチャー監督の「セブン(原題:Seven 1995年)」やテレビ・ドラマ版「ハンニバル」では、まるで殺人アートと呼びたくなるような「絵になる殺人現場」が特徴的だったよね。
ジャックもそんな「作品」を手がけたかったのかもしれない。
額に見立てた地面の枠の中に、カラスの死骸と人間の死体を並べた様子は、 アーティストを気取っているようじゃない?
恐らくこの殺人のシーンが、アメリカではカットされたのではないかと推測するよ。
どのシーンがカットされていたのか、調べたけどよく分からなかったんだよね。

ついにジャックは家を創る。
ジャックにしか手にすることがでない素材を使い、自分のためだけの家が完成する。
これがジャックが建築家として建てた作品なんだよね。
素材集めのためにシリアルキラーになっていたのかなあ。
「ハンニバル」っぽい感じだよ。
家の床にはぽっかりと穴が空いていて、声に誘われるまま穴に落ちていくジャック。

声の主はブルーノ・ガンツ演じるウェルギなる謎の人物。
映画の冒頭から、このウェルギとジャックの会話形式により展開していたんだね。
後半になってやっとウェルギが登場し、ジャックの案内人であることが分かる。
ブルーノ・ガンツはヴィム・ヴェンダース監督の「ベルリン・天使の詩(原題:Der Himmel über Berlin 1987 年)」で天使役だったんだよね。
天使から、地獄の案内人まで演じるとは!
どうやら2019年に亡くなっているようで、本作が遺作になったのかもしれないね?

非常に印象的な船のシーン。
元ネタはドラクロワの「ダンテの小船 (地獄の町を囲む湖を横切るダンテとウェルギリウス)」のようだね。
ダンテの「神曲 地獄篇第8歌」のシーンを描いているという。 
赤い頭巾のダンテと案内人であるウェルギリウスが小舟に乗り、地獄の川を下っていく。
小舟にしがみつき、這い上がろうとする死者達の姿が生々しく、恐ろしい表情を見せているところが印象的な作品だよね。
「神曲」は読んだことがないんだけど、様々な分野に影響を与えた作品のようで、永井豪の作品もあるらしいよ。
ダンテも永井豪も、どちらも読んでみたいね!(笑)

「神曲」同様、ジャックもウェルギに先導され、地獄めぐりをしていく。
60人くらい殺したかな、などと淡々と語りながら歩くジャック。
あらすじに「シリアルキラー歴12年間の軌跡」と書かれているので、割り算だと1年間に5人を殺害した計算だね。
殺しを重ねていくうちに強迫性障害が良くなっていった、というのもブラック・ジョークか?
自分にはツキがある、と信じていたジャック。
Wikipediaによると「神曲」では、ダンテが永遠の淑女ベアトリーチェに導かれ、天界へ昇天するらしい。
ジャックはどうだろう?
運をつかむことができるのだろうか。
と、未鑑賞の方のためにボカしておこう。(笑)

劇中に何度も流れたのが、デヴィッド・ボウイの「FAME」なんだよね。 
どうしてこの曲だったのかは不明だけど、強く印象に残ったよ。

「ハウス・ジャック・ビルト」という題名は、一節ごとに歌詞が長くふくらんでいくマザーグースの積み上げ歌『This is The House That Jack Built』から付けられている

この文章を読んだ時にピンと来たSNAKEPIPE。
デヴィッド・リンチの「ワイルド・アット・ハート(原題:Wild at Heart 1990年)」では、「オズの魔法使い」のオマージュが登場していたんだよね。 
「マザーグース」も「オズの魔法使い」も児童向けの書物であり、「オズの魔法使い」の作者であるライマン・フランク・ボームは、マザー・グースの韻文を散文の小説に直した短編集を刊行しているという。
そしてリンチの「ロスト・ハイウェイ(原題:Lost Highway 1997年)」 のオープニング・テーマはデヴィッド・ボウイの「I’m Deranged」だったよね!
前述したように殺人をアート作品にしてしまう先駆的作品を監督したのがデヴィッド・フィンチャー!
おお!見事に3人のデヴィッドが揃い踏み!(笑)
もしかしたらラース・フォン・トリアーは、3人のデヴィッドからインスパイアされて、「ハウス・ジャック・ビルト」を制作したのかもしれないね?

我らが鳥飼否宇先生の「痙攣的」に、伴鰤人がサインを書いたことで「殺人アート」が成立したミステリーがあったよね。
他にも「爆発的」や「逆説的」など、鳥飼先生は現代アートや音楽をミステリーと結びつけた作品を発表されているのである。
本物の死骸や死体を素材にした写真を制作していたのは、ジョエル=ピーター・ウィトキン
こちらもジャックの先駆者ということになるのかな。
「ハウス・ジャック・ビルト」は、こういう傾向の作品が好みの方に、お勧めの映画ってことだね!(笑)

横尾忠則「B29と原郷-幼年期からウォーホールまで」鑑賞

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【ギャラリーの入り口を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

先週書いた「トム・サックス ティーセレモニー 鑑賞」 の続きである、もう一つの展覧会についてまとめていこう。
東京オペラシティのある初台より新宿に出た長年来の友人MとSNAKEPIPEは、池袋方面を目指す。
山手線の内回り・外回りって未だに分かってないんだよね。
特に池袋方面に行ったことがほとんどないので、降りたことがない駅ばかり。
目的地は「日暮里」!
以前「日暮里繊維街」を歩いたことがあるけれど、ほとんど知らない場所と言って良いね。
友人Mも全く土地勘がないらしいけど、地図が読めるため不安はないらしい。
そのため一緒にいるSNAKEPIPEも安心なんだよね。(笑)

日暮里駅から目指していたのは「SCAI THE BATH HOUSE」。
元は銭湯だった建物を改装したギャラリーで、1993年の開設だという。
銭湯を改装して店舗にしたというと、「まい泉」青山本店などを思い出すよね。
それにしても25年もの歴史があるギャラリーなのに、SNAKEPIPEは名前も知らなかったよ。
今までの開催された展覧会について調べていると、面白そうな企画がたくさんあるんだよね。
気付いていなかったとは、残念なことをしたなあ。

そのSCAI THE BATH HOUSEでは、「B29と原郷 -幼年期からウォーホールまで」というタイトルで横尾忠則の展覧会が開催されている。
この展覧会については、以前よりROCKHURRAHから誘いを受けていたSNAKEPIPE。
友人Mからも誘われるとは、びっくり!
ROCKHURRAHから先に誘われていたのに、友人Mと鑑賞してしまい申し訳ない。
今度また一緒に行こうね!

横尾忠則についてSNAKEPIPEが書いた記事はいくつもあるんだけど、横尾愛を熱く語っているのは、2009年5月の「好き好きアーツ!#07 横尾忠則」だね。
昨年までの事務所には横尾忠則のポスターを壁に飾っていたので、いつでも身近に作品があったっけ。
個展の鑑賞は、2002年に東京都現代美術館で開催された「横尾忠則 森羅万象」まで。
それ以降グループ展での展示は観ているけれど、個展には行っていないみたいだよ。
久しぶりの横尾忠則、どんな作品が並んでいるんだろうね?

日暮里駅南口を降りて、谷中墓地を抜けていく。
名前は聞いたことあるけど、これがその墓地なんだね、と喋りながら歩く。
SCAI THE BATH HOUSEは墓地を抜けた先にあるようだ。
どんどん道幅が狭くなって、自転車用道路と歩行者用通路が重なるくらいの狭い道に出た時、「元銭湯」だったギャラリーが見えてきた。
ギャラリー前で写真を撮っている人、屋根を見上げている人などがいる。
SNSなどにアップするためなのかな?
SNAKEPIPEも、最近Instagramを始めた友人Mも負けじと撮影。
引き戸をガラガラと開け、中に入る。
ここって無料なの?
受付には女性が座っていて、特にチケット販売をしていない。
おー!無料とは嬉しいね!
小さな声で撮影について尋ねると、オッケーとの返事が。
やったー!これでまた写真が撮れるよ!(笑)
バシバシ撮影させていただこう。
気になった作品について感想をまとめていこうか。

作品は全部で16点展示されていた。
全体的に、かなり大きさがある作品が多い。
「エジソンと点滴」は2018年の作品で、大きさは60号。
女性の顔に巻かれたリボンの中央にエジソンがいるのが分かるね。
点滴されている黄色い腕が、女学生(?)に迫っている。
指の色が黄色、オレンジ、白、黒という4色に染まっているのは、人種を表しているのかな?
左上の文字が「45」となっているので、1945年を意味しているのかなと想像する。
今回の展覧会は、横尾忠則の個人的な思い出を表現しているようなので、解釈は人それぞれで良いのかな、と思ったよ。

「戦争の涙」は2009年の作品ね。
右にはマッカーサー元帥、左は渡辺はま子だね。
マッカーサー元帥を知らない人は少ないんじゃないかな。
そのマッカーサーが大粒の涙を流し、「Ah,SO」と文字があるのは謎だよ。
そして1/4アメリカの血が入っている渡辺はま子の存在は、更に分からないね。(笑)
渡辺はま子といえば「蘇州夜曲」!
横尾忠則は、憧れの存在や夢に出てきた人物を作品に登場させることがあるので、意味を考えるのをやめようか。
この2枚セットの配置も謎だけど、強く印象に残る作品だよ! 

「 T+Y自画像」は2018年の作品とのこと。
口元に手を置いた、あまり横尾忠則らしくない作風に驚く。
まるで岸田劉生の有名な自画像みたいじゃない?
横尾忠則の、ここまでストレートな「自画像」を観たのは初めてかも。 
SNAKEPIPEの勉強不足かもしれないので、断言はできないけどね。
何か心境の変化があったのかな。
左上に描かれている「首をくくるための縄」が、横尾らしいアイテムだよね。 
この縄は1965年に制作された横尾忠則自身を宣伝したポスターに描かれている、横尾忠則本人が首を吊っている、あの縄から来てるんじゃないかな。
SNAKEPIPEの記憶によれば、横尾忠則は自分が短命で30歳まで生きられないだろうと思い込み、29歳の自分の姿を登場させたポスターだったはず。
現在、横尾忠則82歳!
「死なないつもり」なんて著作もあるほど、現役で活躍してるよね!(笑)

「3つの叫び」は2019年の作品。
横尾忠則はモチーフを反復させることが多く、今回もターザンが登場しているよね。
ターザンの絵を初めて観たのは「ムー」のタイトルバックだったかな。(古い!)
真ん中はターザンの連れ、ジェーン?
そして右の子供は、幼少期の横尾忠則だろうね。
またもや右上に首縊り用の縄が描かれているよ。
様々な禁止マークも謎だけど、もっと不思議なのは、左下の3人の足。
まるでターザン達の幕の後ろに隠れているような感じ。
横尾忠則の作品は、個人的な要素が含まれているので、謎解きしても意味がなさそうだよね。

展示されている作品にタイトルが付いていなかったので、これが「原郷」なのか自信がないんだけど。 
もし間違っていたらごめんなさい!
また同じ服装の横尾少年が描かれている。
椅子の背を持ち、ポーズを決めているので、写真館で撮影された記念写真を元にした自画像なのかもしれないね?
そして中央には女性を描いている現在の自画像。 
戦闘機とパイロット、空虚な目で空を見上げる群衆、 意味不明の道路標識。
黒っぽいバックが、より一層混濁した印象を残している。
夢うつつの状態を描いたら、こんな感じになるんじゃないかな。

「白浜-喜びも悲しみも幾歳月」は2006年の作品。
左は横尾忠則の結婚写真を、右側にはY字路が描かれている。
この順番でいくと、左が「白浜」で右が「喜びも〜」かな。
タイトルの白浜は和歌山県白浜町で、灯台は「潮岬灯台」?
左の奥に親族の方々のモノクロームが写真が貼り付けられているように見えたよ。
横尾忠則らしい、複数の要素が散りばめられている作品だよね。
どうして右側に夜のY字路が配置されているんだろう。
横尾忠則は一目惚れした女性と21歳という若さで結婚している。
その時点では、ここまでのアーティストになるとは思ってなかったんだろうね。
家庭を持つことに少し不安があった、ということかもしれない。

最後は60点の作品群「A.W.MANDARA」、2019年の作品である。
A.W.とは、展覧会のタイトルにもあるアンディ・ウォーホルのこと。
商業デザイナーとしてスタートしたキャリアを持つウォーホルと、グラフィック・デザイナーから画家に転向した横尾忠則は経歴が似ているよね。
そんなウォーホルに対して、横尾忠則はどんな思いで曼荼羅を作成したんだろう。
尊敬の念なのか、ある種の仲間意識なのか。
それにしてもウォーホル曼荼羅とタイトルには書いてあるけど、1996年の映画「バスキア(原題:Basquiat)」で、ウォーホルを演じたデヴィッド・ボウイに似た肖像画もあったような?
SNAKEPIPEの勘違いかもしれないけどね!

横尾忠則の新作を鑑賞できて良かった!
前述したように個展の鑑賞は2002年までだったため、17年のブランクがあるSNAKEPIPE。
それでもあまり変わっていない横尾忠則を確認できたかな。
子供っぽさが健在だな、という意味なんだけど、褒め言葉だから!(笑)
思い出や、好きだったこと(物や人も)を 、いつまでも同じ気持ちで大切にしているってことなんだよね。
そして年齢を重ねて、更に作品の自由度が高まったように感じたよ。
もっと新作を観たいね!

元銭湯だったという面白いエピソードを持つ、SCAI THE BATHHOUSEを初めて訪れた。
すっきりとした会場には、とても無料とは思えないほど充実した数の作品が展示されていて驚く。
お気に入りの場所が増えるのは嬉しいね。
また企画をチェックして、足を運んでみよう!
次回は是非、ROCKHURRAHと一緒にね。(笑) 

トム・サックス ティーセレモニー 鑑賞

20190609 01
【会場入り口を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

長年来の友人Mから展覧会ハシゴの誘いを受けた。
2つ共、面白そうな企画である。
移動距離はあるけれど、時間配分して回ってみよう!
ROCKHURRAHとウォーキングをしているSNAKEPIPEなので、足腰も強くなっているはずだし。(笑)
梅雨入り前の、割と涼しい日に友人Mを待ち合わせたのである。
冷房に弱いSNAKEPIPEは、脱ぎ着できるようにジャケットを着用。
なんと友人Mはノースリーブ一枚とは!
しかも背中部分はレースで、インナーが透けて見える状態。
「ストール持ってくれば良かった」
って、ちょっと服装が先取りし過ぎでしょ!(笑)

まず向かった場所は初台の東京オペラシティ アートギャラリーである。
このギャラリーに何度も足を運んでいる友人Mとは違って、今回が初めてのSNAKEPIPE。
オペラシティアートギャラリーではトム・サックスの展覧会が開催されている。
恥ずかしながらトム・サックスの名前を聞くのも、作品を鑑賞するのも初めてのSNAKEPIPE。
まずはプロフィールを調べてみようか。

1966年ニューヨーク生まれの52歳。
彫刻家、という括りで良いのかな。
バーモント州のベニントン大学卒業後、ロンドンの建築協会建築学部で建築を学んだ後、フランク・ゲーリーの家具店で2年間働く。
1990年頃ニューヨークでスタジオを設立。
その後、数年間は百貨店バーニーズ・ニューヨークの照明ディスプレイなどをしていたらしい。
1994年にクリスマス・ディスプレイを任され、「Hello Kitty Nativity(ハローキティ・キリスト降誕)」というタイトルで発表されたのが左の作品だという。
賛否両論のため注目を集めたというのは、納得だよね。
1995年にニューヨークのモリス・ヒーリーギャラリーで開催された個展「Cultural Prosthetics」では、ファッションと暴力の融合をテーマにしたという。
この発想は「収集狂時代 第6巻 Louis Vuitton編」で記事にしたモノグラムのチェーンソーやガスマスクを思い出すね。
トム・サックスのHPで確認すると、シャネルのロゴが入ったチェーンソーやギロチンを発見!
この手の作品を誰が一番先に発表したのか不明だけど?
経歴からは、例えば美大を卒業した、というような記述は見当たらない。
ディスプレイを任されたことからアーティストになったとは、異例かもしれないね。
トム・サックスの作品はニューヨークのメトロポリタン美術館、ソロモンR.グッゲンハイム美術館、ホイットニー美術館、パリのポンピドゥー・センターなど世界の主要美術館に所蔵されているという。
かなりの有名人であるトム・サックス、今回の展覧会は「ティーセレモニー」だって。
ギャラリーの受付で、撮影オッケーの確認を取る。
こういう美術館、大好きだよ!(笑)

「現代」と「茶の湯」が出会う「トム・サックス ティーセレモニー」は、アメリカ国内を巡回し、今回、日本で初めて開催する待望の展覧会です。
トム・サックスは茶の湯の精神や価値観を、21世紀の宇宙開拓時代に必須の人間活動の一つとして考え、ティーセレモニー(茶会、茶道)に真摯に向き合っています。
彼のユニークな発想や視点を通じて映る日本の姿は、新しい価値観や世界観を気づかせてくれる貴重な機会となるでしょう。

展覧会のイントロ部分を引用させて頂いたよ。 
キティちゃんをキリストになぞらえてしまうような、レディ・メイド(既成品)作品を発表しているトム・サックスは、どんな「茶の湯」を展開するんだろうね?
展覧会でも流れていた動画があったので、まずはこちらから。
13分以上あるので、時間に余裕がある時にゆっくり観ようね! 

2012年から本格的に茶道を学んだというトム・サックス。
動画は、まず掃除をするところから始まっているよね。
お客様を迎える準備に余念がないけれど、道具や様式が日本人から見るとやっぱり変!
展覧会では動画で使用された様々な機械(?)や仕掛け、小道具などが展示されていた。
右は動画の中で木を切るために使われた機械じゃないかな。
切った木を花入れのような器にしていたように見えたけど。
この作業を行うために、わざわざ兜を模したヘルメットをかぶっていたのはギャグなのか?
日本人でも完全な茶室に入ったことがないSNAKEPIPEは、こんな儀式が茶道で行われているのかは不明だよ。
茶器を清めるために布で拭く動作を、トイレでも行うのはやり過ぎだと思ったけどね!
実は、動画を観たのは立体作品を観た後だったので、立体だけを観ている時には何のための道具なのか分からないまま鑑賞していたんだよね。
あの順番が逆だったら、もっと興味深かったのかもしれないな。

動画を鑑賞している時に、思わず吹き出してしまったのが鯉のシーン。
会場には、本物の鯉が泳いでいたよ。
動画では、この鯉を乱暴に網ですくい、刺し身にしていたよね。
あのー、日本人は茶道の席で、刺し身は食べませんから!
何か色んな日本的な習慣がごちゃまぜになっていて、その「ちぐはぐさ」がおかしい。(笑)

枯山水に見立てた日本庭園を表現している空間。
中央にあるのは盆栽で、左には五重塔が見える。
この位置から見ると、日本のイメージをうまく捉えているようだけど、、、。
盆栽に近寄ってみると、綿棒や歯ブラシが枝や葉の代わりになっていることが分かる。
更に枝部分はネジ止めされているし、植木鉢代わりになっているのは、アルファベットが印字された木箱。
既成品を流用して制作するというトム・サックスらしい作品なんだろうね。
松のようにも、桜にようにも見えて、日本っぽい仕上がりになっていたよ。

「おもてなし」をするための茶室。
茶室も掃除していたけれど、畳の縁を踏んでいたのは仕方ないだろうね。
恐らく多くの日本人は「畳の縁を踏んではいけない」と教育されてきたはず。
SNAKEPIPEは、この理由を知らなかったので、早速調べてみることに。
かつてはこの縁に、家紋が使用されていたという。
縁を踏むことは、家紋を踏みつけることになるため「踏んではいけない」になったらしい。
現代でも家紋を使用した畳の縁はあるのかもしれないけど、一般家庭ではお目にかからないよね。
マナーの部分だけが残ったということかな。
トム・サックスの茶室は、何故か3つのカメラでコンクリートブロックを縦にしたような木枠(?)を写し続けていた。
鯉の後ろにもその映像が見えるよね?
これは意味が分からなかったなあ。

茶室に向かう前に、ゲストが立ち寄るポイント。
火鉢にある焼けた炭をキセルに入れて、一服していたよね。
キセルについてもよく知らないんだけど、炭を持ちながら吸ってるシーンは見たことないよ。
茶室に入る前に手を清めていたけれど、あれも神社や寺にある手水舎だよね?
これもまたミックスされちゃったのかな。
一連の作法になっていたのが、観ていておかしかった。

アメリカ人であるトム・サックスが掛け軸を作ると、こうなるんだね。(笑)
これも観た瞬間に笑ってしまった作品だよ。
誰でも知っているマクドナルドのマークに、落款印代わりのアメリカ国旗。
ハンドメイドだから仕方ないかもしれないけれど、欲を言えばもっと掛け軸の土台をきっちり作ってもらって、表装部分に例えばハンバーガーの包み紙などを使用してもらったら、もっと良かったと思ってしまったよ。(笑)
他にもロケットの絵や、禅画の円相を描いたのか、日の丸を描いたのか不明の掛け軸などが並んでいた。

トム・サックスの動画は、特別に制作されたジオデシック・ドーム状のシアターで上映された。
このドームも作品だったんだね。
鑑賞するための椅子本体はサムソナイトで、これもトム・サックスの作品。
表側には「NASA」の文字があり、背面にはロットナンバーと人の名前がマジックで記載されていた。
人の名前にも意味があったのかもしれないけど、よく分からなかったよ。
30分おきに上映時間が設定され、SNAKEPIPEと友人Mは12時40分の回を鑑賞。
なんとも不思議な茶会風景を観たよ。

茶道はもてなしの心を慈しみ、儀礼を通じて地域の発展やコミュニティの強化を促し、「地」「空」「火」「水」といった基本的な要素を取り入れながら、心身の世界との一体感や親密なつながりを見出し、自身を静かに見つめ直す機会を与えるものです。
トム・サックスによる茶道はその無限の空間を探求することによって、新たな世代や観客層がこれらの価値観やそれを支える文化を体感できる、豊かで心動かされるプロジェクトなのです。

2016年に「ティーセレモニー」が開催されたニューヨークにあるイサム・ノグチ美術館のキュレーターの方が話した内容を転記させてもらったよ。
なんか拡大解釈してるような?(笑)
外国人からは、「日本の文化を再現」しているように思って「これぞJAPAN」と感じてしまうのかもしれないよね。
SNAKEPIPEは「豊かで心動かされるプロジェクト」というよりは、トム・サックスの「ブラック・ジョーク」と感じたよ。
トム・サックスがちゃんと正座ができていたところはすごいと思ったけど!

和菓子の代わりにOREOクッキーを出したり、映画「スター・ウォーズ」の登場人物であるヨーダのディスペンサーから出たPEZをふるまう。
抹茶を点てる時に使用する茶筅(ちゃせん)はモーター付き。
既成概念をおちょくったアートというと、会田誠を思い出してしまう。
会田誠の作品は、かなりブラック・ジョークに満ちているからね!(笑)
トム・サックスの「ティーセレモニー」では、会田誠のような禁忌に触れる作品は見当たらなかった。
レディ・メイド作品を初めて発表したマルセル・デュシャンを継承している、ということなのかな。

今回作品を鑑賞し、感想をまとめていて、非常に調べ物が多いことに気付く。
例えば道具の名前など知らないことだらけなんだよね。
茶会の席には掛け軸と花入、更にお香を炊くなんて知識もなかったし。
外国人の作品を鑑賞することで、日本の文化を勉強することになった、というのが驚きと収穫かな。
ただし、本気で茶道やってる人からは不評だろうけどね。(笑)

ハシゴしたもう1つの展覧会は、次回まとめることにしよう。
SNAKEPIPEは一体何を鑑賞してきたのだろう?
正解は次週を待て!(笑)

デヴィッド・リンチ Industrial Fantasy 鑑賞

20190602 top
【スクールデレック芸術社会学研究所入り口を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

今年のGWに鑑賞した「デヴィッド ・ リンチ_精神的辺境の帝国展」で、5月10日から開催されるデヴィッド・リンチ写真展のフライヤーを受け取った。
リンチの絵画展で、開催予定の写真展を知るなんて幸せだわ。(笑)
会場として書いてあるのはSgùrr Dearg、読み方が分からないので、スペルをそのまま打ち込んで検索する。
スクールデレック、と読むんだね。(笑)
おや?これは2008年に松井冬子のトーク・イベントに行った「ナディッフ」の場所じゃないの!
その時の様子については「好き好きアーツ!#03 松井冬子&金村修」に書いてあるのでご参照下され。(笑)
そのナディッフ2Fに、現在「スクールデレック芸術社会学研究所」が設立されている。

ここの所長である飯田高誉さん、 かなりのリンチ・フリークらしく、リンチ系の企画は全てこの方の手によるものだと判明!
もしかしたら1991年の東高現代美術館で、SNAKEPIPEと友人Mの往復はがきを受け取ってくれた方かもしれないよね?
この時の話は「好き好きアーツ!#16 DAVID LYNCH—Hand of Dreams」にまとめているので、詳しくはこちらをご覧あれ。
もしあの時の方だったとしたら、本当にありがとうございました!(笑)
1998年のパルコギャラリーにおけるリンチの写真展も、2012年のラフォーレ原宿の展覧会も、この方の手によるもの。
今まで手がけた企画・展覧会を見ると、SNAKEPIPEの好みに合ってるんだよね。
飯田高誉さんがキュレーターとして選んだ作品やアーティストは、間違いない!
飯田さんが絡む企画、チェックだね。

前に書いた「GYRE GALLERY」での展覧会は、とても無料とは思えないほど展示作品数が多く、大満足だった。
今回のスクールデレックは、どんな会場なんだろうね?
ROCKHURRAHとSNAKEPIPE、まずは恵比寿に出かけてみることにする。
最近はほとんど写真美術館にも出かけていないので、恵比寿に行くのは久しぶりだなあ。
調べてみたら2012年8月に「田村彰英—夢の光/鋤田正義—SOUND&VISION」を鑑賞していることが分かった。
なんと今から7年も前だって。
一応写真美術館の企画はチェックしているんだけど、「これは!」と思う展覧会ではないんだよね。

この日は5月でも特に日差しが強い日で、SNAKEPIPEは日傘を差して日焼け防止する。
スクールデレックの場所、ちょっと分かりづらいんだよね。
方向音痴に加え、久しぶりの恵比寿、迷わないわけがない。(笑)
ROCKHURRAHがGoogleマップで検索しながら道案内してくれる。
SNAKEPIPEは「なんとなく」覚えていたけれど、いつも通り、かなり曖昧な記憶だったね。

1Fは「ナディッフ」でアート系の書物やグッズが販売されている。
お目当てはリンチ展のため、2F会場に向かう。
TOPの画像にあるように入り口はすぐに分かり、会場内部に入ってみる。
誰もいない!
しかもちょっと暗めの部屋に写真が数点、中央のスクリーンには何やら風景が映し出されている。
撮影許可について尋ねようと、本棚の後ろにいる女性に声をかけるとオッケーとの返事が。
またバシバシ撮影させてもらおう!
そしてSNAKEPIPEが非常に驚いたのは、受付の女性の息を呑むほどの美貌!
あまりにびっくりしたせいで、前の文章に「の」が4つも入ってるじゃないのっ! (笑)
作品鑑賞以外に、目の保養として受付女性にご挨拶というのもアリですな。

再び会場に戻るROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
今回はリンチの1980年代から2000年にかけて撮影された写真群の展覧会で、作品数は全部で8点。
タイトルにあるように「インダストリアル」な雰囲気がある作品が多かったよ。
照明はオレンジがかった色調だったので、撮影した画像が影響を受けている。
フィルター着けたわけじゃなくて、会場で撮影したらこうなってたんだよね。
こちらの作品は「untitled ニュージャージー 13:7」だって。
遠くに霞むビルを、川のこちらサイドから眺めるというのは、どうして寂寥感を伴うのだろうか。
「あっち側」と「こっち側」で住む世界が違っているように感じてしまうからかもしれない。

今回の展覧会用フライヤーで使用された画像がこれ。
1980年代の終わり頃から1990年代初頭に撮影されたイギリスの写真との説明がされている。
この写真は、前にもどこかで観ているんだよね。
SNAKEPIPEが所蔵している(大げさ!)リンチ関連本をパラパラめくっていたら、1999年にフィルムアート社から出版されているリンチの本の中に似た写真を発見!
「インダストリアル・イメージ」と題されて載っていたよ。
今回の写真と少し角度が違っているんだけど、どちらも非常にカッコ良い。
これはポスターあったら購入して、部屋に飾りたい作品だね!

今回の展示は、全てガラス付きの額に入った状態だったので、反射した光を取り込まないように撮影するのに苦労したよ。
この画像はROCKHURRAHが撮影したもの。
SNAKEPIPEのほうは、自分の影まで写り込んでいて大失敗だったよ。(笑)
工場跡地(?)にある水たまりに映った光を捉えた作品なのかな。
淀んでいた泥水に光が差し込み、神々しさすら感じてしまうんだよね。
これぞまさに「インダストリアル・ファンタジー」というタイトル通り!
リンチが得意にしている、相反する単語による造語だな、と想像しながら鑑賞した作品だよ。

会場中央にあるスクリーンに映し出されていたのは、リンチの作品だと勘違いしてしまった。
どうやら「リンチにインスパイアされた作品」ということだったらしい。
1987年東京都生まれで、2014年東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了した伊藤久也の「BLACK OUT」は、いくつもの映像をつなぎ合わせた10分ほどの作品だった。
撮りたくなるのが分かるシーンがいくつもあって、ニヤリとしてしまう。

インダストリアルなシーンの中にも、霧で遠くが霞んで見えるような風景も混ざり、リンチへのオマージュだな、と感じた。
画像のトンネルはネガとポジの両方を交互に見せていて、前に書いたリンチの二律背反を表しているのかもしれないね。
伊藤久也という方の作品は、今回初鑑賞。
またどこかでお目にかかるかもね?

2Fの展示はここまでで、帰ろうとした時にギャラリー入り口付近にある本棚に目をやる。
これはもしかしてスクールデレック芸術社会学研究所の図書なのかな。
SNAKEPIPEも所持している本も何冊かあったけど、素晴らしいラインナップにため息がでるほど。
「ここの本、全部欲しい!」
と思ってしまったよ。(笑)

3Fにも展示作品があるようなので、行ってみる。
ここはMEMというギャラリーで、北山善夫の「事件」が開催されていた。
212cm×152.5cmの大きな作品が展示されている。
一瞬織物なのかと思い、近寄ってみる。
今度はシルクスクリーンによる版画なのかと思い、更に近付いてみる。
和紙にインクで手描きしているんです、と受付の女性から教えてもらう。
撮影の許可も頂いたので、パシャッ!
これだけの大きさを、点描みたいな手法で描きこんでいくのってものすごく根気が要る作業だよね。
これは2週間前の「百年の編み手たち〜ただいま/はじめまして 鑑賞」 に登場した手塚愛子や関根直子の先輩ってことになるのかな。
北山善夫のプロフィールを調べてみると1948年生まれとのことなので、今年71歳くらい?
若手アーティストの作品だと思って鑑賞していたので、驚いてしまった。
現役で活躍しているアーティストなんだよね!

「隣の部屋にも作品ありますよ」 
受付の女性が声をかけてくれる。
この女性も、スクールデレックにいた女性同様美しい方だったよ。
髪型が80年代風なので、親近感を覚えてしまうね。(笑) 
隣の部屋に行ってみる。
「こっ、これはっ!」
地獄絵巻の阿鼻叫喚図とでも言ったら良いのだろうか。
ホロコーストを表しているかのような、苦しみ悶える人々の群れ、群れ、群れ!

「すごいね、この梅干し人形は」
平然とした顔でROCKHURRAHが言う。
梅干し人形?!(笑)
いやあ、まあ、言われたら確かに梅干しに顔を描いたみたいだけどさ。
なんで勝手にネーミングしてるんだか?
タイトルは「生まれて 生きて 死ぬことを知り得る」で、2019年の作品だという。
どうやら人型の粘土の彫刻を最初に制作し、それから絵画にしているようだね。
インパクトのある作品を鑑賞することができてラッキーだったよ!

「ナディッフアパート」で3人のアーティストの作品を鑑賞することになったけれど、共通項はモノクロームだったね。
そしてリンチも北山善夫も70代のアーティスト!
これからも作品を発表し続けてもらいたいと思った。
そして今回初めて行ったスクールデレックとMEMは、要チェックだね。
厚みのある紙の素敵なフライヤーも嬉しかった!
次はどんな企画を立ててくれるのか、楽しみに待っていよう。(笑)