マチェーテ・キルズ鑑賞

【マチェーテ・キルズのトレイラー】

SNAKEPIPE WROTE:

待ちに待ったロバート・ロドリゲス監督の最新作「マチェーテ・キルズ」が公開された!
これは2007年に公開された「グラインドハウス」の偽予告編を2010年に映画化した「マチェーテ」の続編である。
「マチェーテ」についての感想は「CULT映画ア・ラ・カルト!【08】Robert Rodriguez part2」にまとめているね。
その時のブログの最後に

エンディングで「続・マチェーテ」の文字が出たのを観てまた笑った。
本気なのか冗談なのか分からないよね。
続編作ってくれるの、ロドリゲス監督?
どうなるのか乞うご期待!だね。(笑)

と書いていたSNAKEPIPE。
そして「続・マチェーテ」の情報を知った時には、小躍りどころの騒ぎじゃなかったんだよね。(笑)
やったー!やったー!と大興奮!
また我らがダニー・トレホ主演の映画を鑑賞することができる!
アメリカでの公開日は2013年9月だったので、日本ではいつになるんだろうと待ちかねていたのである。
そしてついに3月1日が公開日になることを知ったけれど、その日は先週書いたように「ウォーホル展」だったため、その翌週に行くことにした。

最近は座席予約がwebでできるシステムを採用している映画館が多いので、自分の好きな席を事前に確保し安心して映画館に向かうことができる。
「マチェーテ・キルズ」を上映している新宿バルト9 も同様のシステムを採用している。
前回の「マチェーテ」の時も新宿バルト9の単館上映だったね。
あの時は公開初日の初回に鑑賞していたはず。
「マチェーテ・キルズ」は1週遅れてしまったけれど、やっぱりその日の初回が良いので事前予約をすることにした。
予約完了のメールも届き、安心して当日映画館に向かったROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
バルト9で予約番号を入力し、チケットを受け取ろうとするが…?
何故かエラーが表示されてしまうのだ。
予約番号を間違って控えてしまったのだろうか。
仕方なく係員の方に聞きに行くと、予約番号が判らない場合は9階のチケットカウンターで調べてもらうことができるという。
上映時間を気にしながら、慌てて9階に向かう。
予約番号が違っている旨を説明すると、チケット予約をするためにwebでログインした時の情報を教えて欲しいと言われる。
こういう時、パソコンにしか情報を残してないから困るんだよね!
ニックネームは?なんて聞かれても忘れてるし。(笑)
ところがやっぱりさすがはプロ。
少ない情報からでもデータベースで検索できるシステムを持っているようだ。
「お客様、大変お待たせ致しました」
そう言って物静かな係員の女性が登場した。
その説明によると、なんとSNAKEPIPEが予約をしていたのはweb予約をした当日の座席だったとのこと!
つまり映画館に行った日よりも過去日の予約番号でチケットを入手しようとしていたことになる。
「ええっー!」
とひるむSNAKEPIPEに、係員の女性は
「よろしければ違う回への振替を致しましょうか?」
と素晴らしい提案をしてくれるではないか!
本来であれば、予約が成立した時点でお金は払っているため、観に行こうが事情があって行かれなかったにせよ、劇場側には何ら問題はない。
完全にSNAKEPIPEのミスだったのに、なんて太っ腹なんでしょ!
もちろん有難く翌日への振替をお願いし、頭を深く下げて退散するROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
新宿バルト9の、物静かな係員のお姉さん、ありがとう!
ROCKHURRAHにもお詫びをする。
今回は本当に本当に、何の言い訳もできない、下手を打ったSNAKEPIPEでした!

そして翌日。
ようやく念願の「マチェーテ・キルズ」鑑賞である。
前日にお姉さんが渡してくれたチケットを持っているので、何の問題もなく上映会場まで向かう。
「マチェーテ・キルズ」は「マチェーテ」の時よりも宣伝されていたけれど、69席しかない小さめの会場で上映される。
そのため会場は満席状態。
意外と年齢層は高めで、一人で来ているお客さんが多いことに気付く。
M65や迷彩服を着込んだ「いかにも」な観客もチラホラ。(笑)

ようやく2010年より4年間待っていた「マチェーテ・キルズ」が始まった。
では少しだけあらすじを書いてみようか。
公式サイトから引用させてもらおうね。

マチェーテ(ダニー・トレホ)は、アメリカ大統領(カルロス・エステベス=チャーリー・シーン)から直々依頼を受ける。
それは、メキシコのイカれた男 “マッドマン”(デミアン・ビチル)を倒してほしいというものだった。
マッドマンの心臓とミサイルの発射が連動しており、万一、心臓が止まれば、ミサイル がワシントンを壊滅するようになっていた。
唯一解除できるのは、世界一の武器商人ヴォズ(メル・ギブソン)だけ。
ヴォズに発射装置を解除させる為には、 マッドマンを生きたままアメリカに連れて行かなくてはならない。
しかし、マチェーテとマッドマンを狙い懸賞金目当てに暗殺者集団やヒットマン、果ては金に 目が眩んだ住人達が襲いかかってくる。
やっと武器商人のヴォズの元に辿り着いたマチェーテは、ヴォズこそがマッドマンにミサイルを売り、操っていた黒幕と知るが…。

はーい、あらすじ読んでもさっぱり意味が解らない方!
そうね、ちょっと人間関係が複雑だもんね。(笑)
では登場人物の写真と共に簡単な感想を加えてみようか。
まだ上映中の映画だから、ネタバレはしないように気を付けよう!(笑)

「マチェーテ」に引き続き、「マチェーテ・キルズ」でも主役を務めるのは我らがダニー・トレホ演じるマチェーテ!
69歳で主役のアクション俳優って他にはあんまりいないんじゃないかな?(笑)
相変わらずの圧倒的な存在感と、変な片言のセリフは健在だったけれど、「マチェーテ・キルズ」ではあんまりエロチックなシーンがなかったのが残念だったね。
「マチェーテ」では偽の予告編にあったヌードの美女2人との絡みがうまく挿入されていて面白かったんだけど。(笑)
このままダニー・トレホには現役バリバリで突っ走って欲しいね!

 「マチェーテ」でもSHEの名前で出演していたミシェル・ロドリゲスも続投で嬉しいね!
この方もダニー・トレホと同じように本物のムショ経験者。
そのせいなのか迫力が違うんだよね。(笑)
眼帯姿でマッチョな肉体を晒しアクションができる女優は貴重だよね。
「マチェーテ・キルズ」でSHEがあんなことになってしまうなんて…。
次回作での展開に期待だね!

 「マチェーテ」では悪者上院議員を演じたのが、あのロバート・デ・ニーロだったけれど、「マチェーテ・キルズ」でアメリカ大統領を演じているのは「プラトーン」や「ヤングガン」で一世を風靡したチャーリー・シーン
今回は本名のカルロス・エステベスを名乗っている。
チャーリー・シーンも私生活ではかなりのトラブル・メーカーのようなので、ロドリゲス映画に出演するのはピッタリ!
きっとロドリゲス監督は付け焼き刃の悪者の演技では物足りないんだろうなあ。(笑)

「マチェーテ」でスティーヴン・セガールがラス・ボスである麻薬王を演じていたように、「マチェーテ・キルズ」でも「マッド・マックス」や「リーサル・ウェポン」で有名な大物俳優メル・ギブソンが武器商人ヴォズで出演していた。
ROCKHURRAHは「マッド・マックス」の大ファンだったようで、メル・ギブソンの変貌ぶりに「老けたなあ」と溜息をついていた。
メル・ギブソン58歳、あと2年で還暦だからねえ。(笑)
ちなみにSNAKEPIPEは、かなり長いこと観てからやっとメル・ギブソンだと気付いたよ。(笑)

上の大物2人と全く引けをとらない演技で大注目だったのがマッドマン役のデミアン・ビチル
初めて観た俳優だと思っていたのに、鑑賞済の2001年のスペイン映画「ウェルカム!ヘヴン」や2012年の「野蛮なやつら/SAVAGES」に出演していたことを知り、びっくり!
こんなにすごい演技をする俳優を忘れているなんて!
本当にイカレた雰囲気を、ヘラヘラしたり急に真顔になったりして見事に演じていたね!
デミアン・ビチルの他の作品も観てみたいものだ。

「マチェーテ・キルズ」が前作「マチェーテ」より宣伝されていた最大の理由がレディ・ガガの出演だったんだよね。
トレイラーやポスターなどで観るともっと重要な役どころを演じているように感じるけど、それは気のせいだね!
はっきり言ってしまえば、別にレディ・ガガじゃなくても良かったように思ってしまうけど、話題性では抜群だろうから良いのかな。(笑)

アルモドバル監督最新作「アイム・ソー・エキサイテッド!」でカメオ出演だったアントニオ・バンデラスが、「マチェーテ・キルズ」ではカメレオン出演だよ!(笑)
なんだかお世話になった監督に恩返しで出演してるみたいだよね。
また「デスペラード」みたいなロドリゲス監督とのタッグを観たいね!

ロドリゲス監督作品の常連と言っても良いトム・サヴィーニも出演していた。
トム・サヴィーニはジョージ・A・ロメロ監督の「ゾンビ」などでの特殊メイクを担当した、その道の第一人者なんだけど、俳優としても大活躍だね!
「フロム・ダスク・ティル・ドーン」で笑わせてもらった武器が、「マチェーテ・キルズ」でセルフ・パロディのような形で再現されていたのも見どころの1つ。
それにしてもトム・サヴィーニ、67歳になったとは思えないほど若々しくてびっくり!
ずっと好きなことを続けてると年を取らないのかな?
秘訣を教えて欲しいね。(笑)

「マチェーテ」でのヒロインはジェシカ・アルバだったけれど、「マチェーテ・キルズ」ではアンバー・ハードになるのかな。
ミス・サンアントニオという役どころで、マチェーテに馬のりになるラブシーンを演じている。
ただしそのシーンは3Dメガネが必要という字幕が入り、はっきり見えないのが特徴!(笑)
出演しているレディ・ガガとの区別がつかなかったのは、SNAKEPIPEだけだろうか?

ロドリゲス監督作品で外せないのが、ボリュームのある肉体を持つ美女が武器をぶっ放すシーン。
「マチェーテ・キルズ」ではアカプルコにある娼館のマダムと従業員(?)がその役割になっている。
マダムのおっぱいミサイル、威力に疑問を感じたけど、面白いのは間違いない。(笑)
ROCKHURRAHによると元ネタは永井豪の「マジンガーZ」じゃないの?とのこと。
ロドリゲス監督だったらアリかもね。(笑)
そして写真右の金髪グラマーも従業員の一人なんだけど、なんと彼女、ロドリゲス監督の「スパイ・キッズ」でアントニオ・バンデラスの娘役だったアレクサ・ヴェガ
ひー!あんなに子供だったのに、今ではすっかり大人でびっくり!
こんなに成長しているとは!(笑)

濃い目のキャラクターが多数出演しているため、内容に関する詳しいことを抜いても、一人ずつ書いていったら結構長くなっちゃった。(笑)
「マチェーテ・キルズ」は「マチェーテ」で披露された残酷シーンがよりパワーアップされた演出が施されていたのも見どころだったと思う。
残酷なのに笑ってしまう、ロドリゲス監督お得意のパターンね!
これを一緒に笑ってもらえる人にだけ、「マチェーテ・キルズ」をお勧めできるかな。(笑)

映画は途中で次回作の予告編が入ったり、実際ストーリーが予告編通りになるような展開を見せていたし、終わり方も中途半端だったし。
本当に次回作、あるんだろうか?
「マチェーテ・キルズ・アゲイン・イン・スペース」の公開を待ちたいね!(笑)

アンディ・ウォーホル展鑑賞

【ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの大好きな曲。映像酔いに注意!】

SNAKEPIPE WROTE:

去年のうちから森美術館10周年記念企画として「アンディ・ウォーホル展」が開催されることは知っていた。
そしてすでに鑑賞を終えた長年来の友人Mから
「ウォーホル展、すっごい良かったよ!あと3回は行きたい!」
という連絡も受けていたSNAKEPIPE。
ではせっかくなのでご一緒しましょうと、ROCKHURRAHも加わり、またもや怪しい3人組が六本木に集合することになったのである。

森美術館の開館時間に合わせて待ち合わせをする。
9時50分にチケット売り場を目指すと、もうすでにチケット購入を待つ人で溢れている。
ぎゃー!こんなにウォーホル展が大人気なのか!と思っていると、どうやら森アーツセンターギャラリーでは「ラファエル前派展」が開催されていて、半数以上のお客さんはそちらが目当てだったみたい。
あー、びっくりした!
きっとあやしい3人組は「ラファエル前派展」鑑賞チームとは思われなかっただろうな。(笑)

去年8月に国立新美術館で開催された「アメリカン・ポップ・アート展」も六本木だったので、2年連続でポップアートの展覧会が催されるのは珍しいんじゃないかな。
あの時はポップアートを支援していたパワーズ夫妻のコレクションが展示されている企画だったので、ウォーホルだけじゃなくて、複数のアーティストの作品を鑑賞することができたんだよね。
今回はウォーホル一人だけの展覧会。
「アメリカン・ポップ・アート展」の時のウォーホルについての感想に

有名な作品が展示されていたけれど、
あまりにも見慣れすぎているためか
確認作業をしている気分になった

と書いているSNAKEPIPE。
果たして今回の「アンディ・ウォーホル展」はどうなんだろう?
既に有名な作品については、その道の専門家もいてSNAKEPIPEが語るよりもずっと詳しい説明がされているはず。
シルクスクリーンについての説明はそんな御仁にお任せすることにしよう。
今回はもっと初期の、シルクスクリーン以前の作品について書いてみようかな!

入場するとすぐにウォーホルの自画像や写真など、ウォーホル本人に関する作品が展示されている。
確かにウォーホルってマリリンなどの有名な作品に負けないくらい、本人が前に出るアーティストだったもんね。(笑)
同じようにポップ・アートだったらすぐに名前の出てくるロイ・リキテンスタインは作品は知っていても、リキテンスタイン本人をすぐに思い浮かべることはあまりないよね。

ウォーホルの子供時代の写真や80年代の女装した写真などを鑑賞した後に、商業デザイナーとして活躍していた頃の作品が展示されている。
以前ウォーホルに関する本は何冊か読んだことがあり、デザイナーだったことは知っていたはずだけど、その当時の作品を観た記憶はない。
ウォーホルといえば、シルクスクリーンを使った例の作品群ばかりがクローズアップされるから余計だよね。
上の画像はウォーホルが女性ファッション誌用に描いたイラストである。
華奢なピンクのサンダルが横向きに描かれている。
他にも靴、バッグ、洋服など女性が喜びそうな素敵なイラストがたくさんあって
「ウォーホルって絵が上手!」
と今頃になって気付いてしまうのだ。
だってウォーホルの肉筆画を観たことないからね!

いくらアメリカのピッツバーグ生まれとは言っても元々スロベニア移民の子であるウォーホルだからなのか、色使いや構図がアメリカっぽくない感じがした。
鳥や蝶をモチーフにした作品が何点かあり、陶器や花瓶などに描かれていたら似合いそうな雰囲気。
そんな中、非常に目を引いたのが右の「2歳のアンディ」という作品である。
まるで子供がいたずらで描いてしまったような、ぞんざいな線がたまらない!(笑)
頭に乗ってる蝶、左右違う太さと長さの腕、無関心そうだけれど、ちょっと笑ってる顔!
本当にアンディ・ウォーホルが2歳の時はこんなだったのかな?

初期の作品でポスターがあったら欲しかったのが左の「feet」ね。
文字を描いている部分と貼り付けている部分が混在していて、とても魅力的だった。
別バージョンで手もあったんだけど、この2枚を並べて部屋に飾りたかったなあ!
ところが残念なことに、販売されていたのはやっぱりいかにもウォーホルらしいポップ・アート系の作品をモチーフにしたものばかり。
一目でウォーホルだ、と判るものじゃないと売れないんだろうね?

今回の展覧会で面白かったのは、ウォーホルがニューヨークで作品制作を行っていた「ファクトリー」を再現したスペースがあったことと、「タイムカプセル」と称されたウォーホルがコレクションしていた雑多な資料の展示。
「ファクトリー」に関しては、今までにも何度かブログで書いたことがあるけれど、SNAKEPIPEの憧れの場所なんだよね!
一度行ってみたかったなあ!
もちろん「ファクトリー」にたむろしているような人種は、何かしらアート関係に携わっているような、日本で言うところのカタカナ職業(死語)で成功している人たちだろうから、見学に行くような場所じゃないんだろうけどね。(笑)
芸術家達の交流の場だっただろうなと想像するだけでワクワクしちゃうんだよね!

「タイムカプセル」は、なんでも収集していつまでも捨てないでいる性格が見えて、ウォーホルらしさがよく解るよね。
お菓子の包み紙とか、どこかの店のコースターまであるんだもん。
生涯独身だったというウォーホルは、もしかしたら子供っぽさをいつまでも持ち続けていた人だったのかもしれないね?

「アンディ・ウォーホルTV」という番組があったのかな、あまりよく知らないまま用意された椅子に座り映像を鑑賞していた時、驚くことがあった。
何かのパーティのシーンで、会場までTVカメラを案内していたのがなんと「ツイン・ピークス」での赤い服を着た小人だったの!
その映像では「ゼルダの伝説」のリンクみたいな服装だったけどね。
赤い服の小人については先週のブログでも書いたばかりだよね!
友人Mと顔を見合わせ「あっ!」と叫んでしまった。(笑)
奇妙な偶然の一致に驚かされたよ。

複製をアートとして認めさせてしまった、というのがウォーホルのすごいところだろうね。
マルセル・デュシャンがレディ・メイドをアートにしたのは1917年とのことなので随分昔の話だけど、世の中で一体どれだけの人がデュシャンの「泉」を知っているのかなあ。
ウォーホルのことはかなりの人が知っているに違いない。
アートを大衆にも行き渡らせた功績は大きいよね。
一目でウォーホルの作品だと判ってしまう点も含めて、ね。

残念だったこと2点。
1点目はヴェルヴェット・アンダーグラウンドについてほとんど紹介されていなかったことかな。
出ていたのは映像作品で少しだけ。
鳥飼否宇先生から頂いた今年の年賀状にも「ルー・リードが亡くなってしまいました」と書かれていたけれど、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのメンバーだったルー・リード死去などについては一言もなかったからね。
音楽との関わりも楽しみにしていただけに物足りなかったな。

もう1点は、観客のこと。
情操教育のつもりなのか、鑑賞した日は子供連れの家族が多く、非常に不快な思いをさせられた。
子供が走り回る、奇声を発する、大声で泣く。
静かに鑑賞している他のお客さんに迷惑がかかるような場合には、森美術館側でも対処して欲しかったな。
美術館は遊園地とか公園じゃないから。
静かに鑑賞できない子供は入場させないルールを作ろう。
映画と同じようにR指定が必要じゃないかと思ってしまう。
扱いとしては図書館と同じではないかと感じるがどうだろう?

去年の「アメリカン・ポップ・アート展」とは印象を変えて、アンディ・ウォーホルというアーティストをよく知ることができた展覧会だと思う。
最初に書いた「確認作業」だけにならなくて良かったな。(笑)

「驚くべきリアル」展鑑賞

【毎度お馴染み、MOMA敷地内の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

昨年よりずっとスペイン熱にかかっている。
あ、これ病じゃないからね。(笑)
スペイン映画がきっかけとなり、何かにつけてスペインをキーワードとして楽しんでいるのである。
東京都現代美術館でスペインのアート展があるよ!」
と教えてくれたのはROCKHURRAH。
当然のようにROCKHURRAHもスペイン熱に冒されているので、目を輝かせている。
2月15日から始まるから楽しみだね、と言い合っていたけれど、皆様ご存知のようにその日は大雪の影響で、とても外出するどころではなかったよね!
そしてその翌週、久しぶりに木場へと向かったのである。

前回行った日付を確認してみると、2011年11月の「ゼロ年代のベルリン展」だったみたい。
意外と長い間来館していなかったことに気付いてびっくり。
美術館情報はチェックしているつもりなので、SNAKEPIPEの好みの企画がなかったのかな。
木場駅からの長い道のりをテクテク歩きながら、横目で少し残った雪を確認する。
東京都現代美術館までの道のりは広大な公園があるので、散歩がてら歩くのは丁度良いんだよね。
そして日当たりが良いのか、本当に道の片隅にしか雪がなかったよ。
この日は晴れて気温も少し高かったので、歩くには良い日だったね!

「驚くべきリアル展」はスペインだけではなくて、スペイン語圏ということなのかラテンアメリカのアーティストの作品も展示されているとのこと。
スペインの現代アートにはなかなか触れる機会がないので、当然のようにHPでの紹介を読んでも知らない名前ばかり。
どんな作品に出会えるんだろう?

ガラス貼りの美術館は中に入ると陽射しで温められた空気が、少し暑いくらいだった。
この美術館はそんなに大勢の観客がいないことが特徴で、ゆったり鑑賞できる点がお気に入りなんだよね。(笑)
チケットを購入しようと売り場に歩いていく途中でまず目に飛び込んできたのが3体の人形だった。
「なに?あれ?」
一瞬で目が釘付けになる。
かなり不気味な雰囲気の人形で、少し近づいてみるとどうやら作品のようである。
まずはチケット買わないと!
それからじっくり鑑賞したいよね!

チケット購入後、受付の前にその人形たちはいた。
本来は一番最後の展示作品だったようだけれど、全くお構いなしにじっくり鑑賞する。
説明している文章によると、作者であるエンリケ・マルティの友人をモデルに、縮尺を変えて制作された作品とのこと。
その縮尺が変わっているといる点が、なんとも奇妙で不気味な雰囲気を醸し出している要因みたいだね。
頭部と手足だけが実物大の大きさで、体だけ小さい。
手や足の指の長さも実際とは違っている。
頭髪などは本物の毛を使っていたようで、かなりリアルな出来栄えなので、余計にギョッとしちゃうんだよね。(笑)
このアーティストの名前を記憶し、先に進むことにする。

次にまた足が止まったのは、エンリケ・マルティの作品の前だった。
実際にはエンリケ・マルティと知る前から、圧倒的な存在感の前に立ちすくんでしまった、というのが正しいのかもしれない。
壁一面を埋め尽くす、その大きさにまず驚いてしまう。
なんでもない家族のポートレートを組み合わせたような複数枚で構成された作品で、 タイトルはそのまま「La familia(家族)」である。
近寄ってみないと、それらが油彩画であることが判らないほど、精巧なタッチである。
そして更にじっくり一枚一枚を鑑賞していくと、ハッピーな家族の肖像だけではないことがわかってくる。
そのことに気付いてしまうと、あー、あっちにも、ここにも!という具合に気味の悪いポートレートに目を奪われる。 上の2枚のような絵が、ところどころに配置されているのである。
「幸せそうに見える家族だけど、本当はね」と内緒話をされているような、見てはいけないものを覗いているような罪悪感と、同時に秘密を知ってしまった優越感を持ってしまう。
そしてその暗部を描いた絵のなんとも魅力的なこと!(笑)
右側の人間なのか獣なのか判別し辛い生物が描かれている絵などは、大好きなフランシス・ベーコンの絵に通じる雰囲気もあるよね。
そして安穏そうに見える裏側には闇もあるんだよ、というテーマはまるで敬愛する映画監督デヴィッド・リンチを感じてしまう。

帰宅後、エンリケ・マルティについて調べたところ、自身のHPに作品がたくさん掲載されていて、見つけたのがこの作品。
タイトルはそのまま「Fire Walk With Me」(1999年)である。
これを観た時に「ああ、やっぱり!」と思ったSNAKEPIPE。
好きな物が似ているアーティストの作品はすぐにピンとくるものだからね!
「ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間」(1992年)の原題が「Fire Walk With Me」、監督はもちろんデヴィッド・リンチである。
「ツイン・ピークス」の虜になった人であれば、この赤い服を着た人物が誰なのか瞬時に判るはず。(笑)
「Fire Walk With Me」はシリーズになっていて、他にもローラの顔やデイル・クーパーの顔も描かれていた。
いいねえ!エンリケ・マルティ!
このアーティストを知ることができただけでも、「驚くべきリアル展」に行った甲斐があったよね!
この世界観をもっと知りたい。
エンリケ・マルティ展やらないかなあ。(笑)

展覧会について書く時にいつも言ってることだけど、現代アートのジャンルとしてビデオ作品が必ずあるんだよね。
展覧会によっては何分の作品なのかを表示していないことも多くて、ほとんどの場合は途中から鑑賞することになり、結局意味が解らないまま数分だけ観て立ち去ってしまう。
どんな展開になるのかどうしても知りたいと思うような作品に出会っていないというのも理由なんだろうけど。(笑)

ビデオ作品には少々辛口のSNAKEPIPEが、今回はじっくり鑑賞した作品があったんだよね!
Oedipus Marshal」(保安官オイディプス)という2006年の作品でアーティストはハビエル・テジェス。
残念ながらハビエル・テジェスについての情報が少なくて、自身のHPも見当たらないの。
ベネズエラ出身のビデオアーティストで、現在はアメリカ在住だというくらいで許してね。(笑)

「Oedipus Marshal」はギリシャ悲劇として知られる「オイディプス王」をウエスタン仕立てにした作品だった。
しかも登場人物が着けているのは、日本人には馴染みのある能面!
ギリシャ・ミーツ・ウエスタン・アンド・ノーガク!(笑)
なんとも不思議なミクスチャーだと思ってしまうけれど、これが全然違和感なく鑑賞できちゃったんだよね。

上の写真でも判るように、ウエスタンの衣装に能面、なかなか良いよね?
そして映画みたいにセリフが入った作品だったんだけど、その時々で表情が違ってみえるところもびっくり!
日本の芸能でありながら、詳しくは知らない能の世界だけど、やっぱり伝統芸能っていうのは能面1つ見てもさすがだな、と感じることができたのは大きな発見だね。
音楽も能楽の音を使っていたんだけど、それもしっくりしていて作品に合ってたんだよね。
外国人から日本文化を学ぶとは!(笑)
この作品は映画として観ても十分面白いと思うので、アートの世界だけではなくて娯楽作品としての上映も希望したいところだ。

スペインのアートを全く知らないまま、ちょっと賭けのように出かけた展覧会だったけれど、ピッタリとフィーリングにマッチする(死語)アーティストに出会えて嬉しかった。
エンリケ・マルティの今後の活動に注目だね!(笑)

SNAKEPIPE MUSEUM #25 David Lynch Snowmen

【雪だるまの顔に国の違いはあるんだろうか?】

SNAKEPIPE WROTE:

先週と今週の週末にかけて、40年ぶりと言われるような大雪に見舞われた関東地方。
2013年の夏は猛暑で大変だった記憶が薄らいできたかと思うと、今度は雪に苦しめられるとは、トホホ!
子供の頃は、雪が降ると嬉しかったはずなのに。
雪合戦はあまり記憶にないけど、空を見上げて降ってくる雪を見ていると空に吸い込まれそうな不思議な感覚に心が踊ったり。
真っ白な地面に一番で足跡を付けることに快感を覚えたり。
思い返してみると、雪の思い出にはワクワクした楽しいものが多いんだよね。
一体いつから「雪だと大変」に変化しちゃったんだろう?
この変化が子供心を忘れてしまった、ということなのかな。
それはちょっと悲しいね!
今回のSNAKEPIPE MUSEUMは、雪をテーマにした作品について書いてみようか。
これで少しは雪を楽しむ気持ちが戻ってくるんじゃないかな?

雪に関するアート作品で、SNAKEPIPEが自宅に飾りたいと思う作品を探してみたけれど、なかなか難しかった。
例えば雪の写真だと、ほとんどがネイチャーフォトで被写体は風景や動物になってしまう。
もちろん素晴らしい作品はたくさんあるんだけど、SNAKEPIPEの好みじゃないのよ。(笑)
リンチの作品、あったじゃない」
と提案してくれたのはROCKHURRAH。
あっ、そうだった!
2012年11月の「好き好きアーツ!#18 DAVID LYNCH—CHAOS THEORY OF VIOLENCE AND SILENCE」で記事にしているように、リンチの個展をラフォーレ・ミュージアムで鑑賞した時に「雪だるま」をモチーフにした写真群があったっけ!


敬愛する映画監督であるデヴィッド・リンチは自称19歳!(笑)
実際の年齢は68歳なんだけど、雪を楽しむ気持ちを忘れていないんだもの、やっぱり子供心を持ち続けているってことだよね。
これは2007年にパリのカルティエ現代美術財団で行った個展「The Air is on Fire」で個展用のカタログと同時に出版された「Snowmen」という写真集から抜粋した写真である。
「雪だるま」と「カルティエ」なんて、普通なら同時に並ぶはずのない単語だよね。(笑)
大変申し訳ないんだけど、前述したラフォーレ・ミュージアムで鑑賞した時には、「Snowmen」の意味が解らなかったSNAKEPIPE。
「なんで雪だるま?」
としか感想を持っていなかったんだけどね。
ちゃーんとあるんだよね意味がっ!(笑)

I like the nowhere part of America…
They’re little truthful places,
but they’re not obvious.

リンチの言葉である。
確実にどこかに存在している、アメリカのなんでもないような場所が好き、とはいかにもリンチらしいね!(笑)
そんなどこにでもあるような田舎町を舞台に映画を制作するのが、リンチの得意としているスタイルだもんね!
田舎町や郊外が決して「のどか」で平穏な場所ではないんだよ、と教えてくれた(?)のが「ブルーベルベット」や「ツイン・ピークス」だったからね。

「Snowmen」に関しては

– old neighborhood
– gray days
* – quiet

「昔馴染みの近所、どんよりした日、静か」のキーワードで撮影に臨んだとのこと。
「quiet」の左にあるアスタリスクは原文のまま、なのでタイプミスじゃないことをお断りしておくよ!
撮影したのは子供時代を過ごしたことがあるというアイダホ州のボイシらしい。
リンチ自身が雪だるまを作ったわけじゃなくて、誰かが作った完成品を撮ったんだって。
この点がちょっと残念?(笑)

1枚ずつ鑑賞していると意味が解りにくいんだけど、写真集で一連の流れを追うと解ってくることがある。
そう、これは九相詩絵巻なんだよね。
形あったものが溶けて、地面と一体になっていく様。
九相詩絵巻と同じように考えると「無常」ということになるんだろうね。
リンチが「無常」を雪だるまで表現し、それを理解したカルティエ現代美術財団が「C’est si bon!」って言ったんだろうね! (笑)

There’s the relationship of shapes, one to another, that are pleasing,
and just this word ‘pleasing’ gets into something maybe about love.

カルティエ現代美術財団の個展カタログでリンチが語った言葉である。
やっぱり仏教的な雰囲気を感じるよね。
こうして調べていくと「Snowmen」を壁に飾りたくなってきたよ!
「Snowmen」鑑賞し続けていたら、SNAKEPIPEも「ドグラ・マグラ」の呉一郎みたいに精神に異常をきたしてしまうかもしれないけど?(笑)