SNAKEPIPE MUSEUM #61 Elizabeth McGrath

20210905 06
【拳銃持って自分の作品との記念撮影しているエリザベス】

SNAKEPIPE WROTE:

今週は久しぶりにSNAKEPIPE MUSEUMをお送りしよう。
自分でも驚きの約5ヶ月ぶりのカテゴリー更新なんだよね!

今回紹介するのはElizabeth McGrath、読み方はエリザベス・マクグラスで良いのかな。
彫刻とアニメーション、そしてバンドのヴォーカルとしてマルチな活躍をしている女性アーティストなんだよね。
そして画像でもお分かりの通り、美貌まで兼ね備えているんだもの。

彼女の略歴を調べてみようか。

1971年 カリフォルニア州ロサンゼルス生まれ
1984年 ヴィクトリー・クリスチャン・アカデミーに入学
1988年 パサデナ・シティ・カレッジ卒業
1991年 イーストLA・シティ・カレッジ卒業
1995年 ハードコア・パンク・バンドTONGUEのシングル・レコード発売
1998年 ロサンゼルスにてグループ展に参加
2000年 ミス・デリンジャーのヴォーカルを務める(2011年まで)

現在50歳のエリザベス。
バンドとしての活動が2011年までとなっているので、載せている本人の画像は10年以上前の物かもしれないね?
そして出身校しか記載されていないので、大学でアートを学んでいたのかは不明だよ。
レコード・デビューの方が先みたいだけど、アート作品でのグループ展もほぼ同時期から始まっているみたい。
エリザベスのドキュメンタリー動画があったので載せてみようね。

作品制作と音楽活動の様子が分かる動画だったね。
途中で出てきたライアン・ゴズリングは、かつてのご近所さんで友人なんだって。
有名人が知り合いっていうのは強いよね!
それでは作品を見ていこうか。

エリザベスの作品の特徴は、グロテスクとカワイイが同居した、いわゆる「キモカワ」。
画像は矢で射られ、血の涙を流しているシカちゃんだね。
キラキラしたシカの彫刻といえば、2021年1月に表参道GYREギャラリーで鑑賞した「名和晃平 Oracle」を思い出す。
光り輝くシカは、犠牲となった後、聖なる存在に変化したのではないか、という考察をしたSNAKEPIPE。
今回紹介したエリザベスの作品は、まさに考察を具現化しているように見えてくるよね?

こちらもシカをモチーフにした作品「DeerHeart BlackStag」だよ。
しっかりした角があるので、大人のシカだね。
角の上に、まるで難破した海賊船の帆のようなボロボロの布がみえる。
そして画像では分かり辛いけれど、胸にはシカの心臓が剥き出しになっている。
シチュエーションは分からなくても、黒いシカ、角、布のバランスが素敵で、いつか部屋の壁に飾りたい作品だよね。
もちろん、この作品が似合うのはゴシック様式の家!
まずはその家を用意しないとね。(笑)

この作品のタイトルは「White Beaver」で2016年制作とのこと。 
フワフワの毛並みで、まるでぬいぐるみのような可愛らしさ!
なのに、何故?
ポッカリとお腹に穴が開いているよ。
中にはアフタヌーン・ティー・セットのようなケーキ類が見える。
この作品を見た時に、「家畜人ヤプー」を思い出してしまったよ。
人間を改造してバッグや便器にしてしまうエピソードに近い感じがしたからね。
エリザベスの意図は不明だけど、 グロテスクとカワイイの融合は良く分かるよ!

これも不気味な作品だね。
ネズミのように見える白い動物が大事そうに抱えているのは、人面蛇?
顔の部分が、まるでヒンズー教の神様みたいなんだよね。
キバがあるところが、エリザベス流だけど。(笑)
この人面蛇の顔を、金色の舌で舐めている白い動物。
愛おしいためなのか、食べるためなのか?
鑑賞者が思い思いに物語を作ることができるね。
この作品も非常に気に入ったよ!

ドレスに身を包み、小さなステージに立っているのは、2匹の蚊?
昆虫を着飾らせる作品なんて、今まで見たことないよ。
自称蚊アレルギーのROCKHURRAHは、見たくない作品かも。
エリザベスの特異さを示すために選んでみたんだけどね。
こうした小さなステージを作り、中に不気味なモチーフを登場させる作品も多いみたい。
映画「イレイザーヘッド」に出てくる、ラジエーター内部のステージを思い出してしまうのは、SNAKEPIPEだけかしら?(笑)

エリザベスの作品は販売もされているようで、現在は売れてしまったネコちゃんを紹介してみよう。
痩せたボソボソの毛をした黒猫、とてもカワイイんだけど、、、顔が不気味! 
「キモカワ」の代名詞といった雰囲気の作品だよね。
名前が「Juniper」、ジュニパーというのかな。
販売されていた時のお値段は$450、日本円で約5万円ほど。
ジュニパーも欲しくなってしまったSNAKEPIPEだよ!

エリザベスが2011年まで活動していた、ミス・デリンジャーのMVを載せてみようか。
サイコビリーとゴスロリをミックスしたような服装だけど、音は60年代風のポップスといった雰囲気。
何曲もビデオが残っているので、人気があったバンドだったんだろうね。

音楽とアートの世界で活動をしていたエリザベス・マクグラス、とても面白かったよ!
ハード・コア・パンク・バンドのスタートから、好きなものが一貫している姿に共感が持てたし。
現在はどんな活動をしているんだろう?
パンク精神を忘れずに作品制作を続けて欲しいよね!(笑)

SNAKEPIPE MUSEUM #60 Nicolas Bruno

20210425 11
【この作品を観て寺山修司の映画を連想してしまったSNAKEPIPE】

SNAKEPIPE WROTE:

今回のSNAKEPIPE MUSEUMはNicolas Brunoを紹介しよう。
読み方はニコラス・ブルーノで良いはずだよ。
一枚の写真を観た瞬間から「好き!」と感じたんだよね。(笑)
ニコラス・ブルーノの経歴を調べてみよう。

1993 ニューヨーク州ノースポートに生まれる
2011〜 Instagramに写真の投稿を始める
2015 ニューヨーク州立大学パーチェス校において写真のBFAを取得

1993年生まれということは、現在28歳という若い写真家だね。
現在は広告写真家として雑誌で活躍しているという。
本人のサイトにも、ほとんど情報がないので、分かったのはこれくらいなんだよね。
作品の成り立ちについての情報はインタビュー記事などで確認できたので、作品と共に紹介していこう。

ニコラス・ブルーノの作品の特徴を一言で表すと「恐怖」だろうか。
安眠していたはずのベッドが、何者かに引きずられ川に沈んでいくシーン。
パニックになりながら、少しでも地上に向かい這い上がろうとする男。
襲われている男こそ、ニコラス・ブルーノ本人なんだよね。
15歳の頃から連日のように金縛りを経験し、不眠症になったというブルーノ。
そのうち「うつ病」になってしまったという。 
浅い眠りの間に見た夢をノートに記録し、それを写真にした作品なんだって。

作品作りが自らの治療になったと語るブルーノだけど、こんな夢を毎日見てたら怖いよね?
感じている恐怖を視覚化して認識し、相手にも伝えることで、恐怖に打ち勝つことができたということなのかな。
ブルーノにとっての悪夢が、作品になると魅力的に映るのは皮肉だけどね。
男女が椅子にくくりつけられ、下から伸びる白い腕がロープを掴み引っ張っている。
上の作品と同じように謎の誰かによって、水に沈んでいく恐怖だよね。
それにしても、この水たまりから腕だけ出す撮影はどうやったんだろうね?

縛られて的にされているブルーノ。
周りには、「かかし」が矢で射られ、転がっている。
自分も「かかし」と同じような目に遭うんだろうか。
頭から布をかぶせらているので、相手がどこを狙っているのか見えない。
矢を構え、弓の弦がきしむ音が聞こえてくる。
自分の鼓動も大きく聞こえてくるだろうね。
とても怖い夢で、目覚めた時には「生きている」と安堵しそう。

逃げる夢も恐怖だよね。
何者かに捉えられ、椅子に縛り付けられた状態。
またもや頭には布がかぶせられている。
追ってくる男2人に拉致されて、隙を見て逃走したというところか。
前が見えず、両腕が自由にならない状態が、金縛りを表しているよね。
ブルーノの作品は、モデルや小道具の使い方はもちろんのこと、構図の見事さや色合いなどがパーフェクト!
風変わりなセルフ・ポートレートだよね。

孤独の恐怖もあるよね。
気付いたら自分1人だけになっていた、という悪夢。
周りにあるのは骸骨?
近い将来、自分も同じ状態になるんだと見せつけられたら、 その時を待つしかない。
あがいても別の選択肢はない、と諦念する。
ブルーノは、子供時代に何かあったのかなと想像してしまうね。
小道具を多く使っていないのに、効果的な作品だよね。

男が指示を出す。
3人のうちの誰かが、この縄にかからなければならない。
どんな方法でも良いから、1人決めるように。
こうしたシチュエーションでは、「何故」や「どうして」といった疑問は省かれるのが常だ。
ブルーノは3人のうちの1人になっているのか、単なる傍観者か。
この作品も4人のモデルと縄以外は、見事に朽ちた壁以外ないのにもかかわらず、物語が完成しているところが素晴らしいよ!

ニコラス・ブルーノの最新作は「ソムニアタロット」というシリーズ。
タロットカード78枚の実写版を作成する、というもの。
小道具などの準備も大変そうだけど、面白い企画だよね。
1年間で完成させたというから、頑張ったね!
画像は「吊るされた男」だね。
ブルーノ自身が逆さ吊りになったらしいよ!
めまいが起きないか心配だった、なんてインタビューに答えてる。
根性あるなあ、ブルーノ!(笑)

こちらは「死神」。
軍旗を掲げ、白い馬にまたがる死神は、疫病をもたらす存在としてカードに描かれているらしい。
ブルーノの作品では、邪悪というよりは静寂を感じるね。
一回の撮影で3枚を目標にして完成を目指していた、と記事にあったよ。
小道具や衣装などを作り、天候に左右されながらの作品作りというと、まるで映画の撮影みたいだよね。
そう考えると、布の使い方がターセム・シン監督作品に近い雰囲気に見えてきたよ!

こんな作品が78枚展示されていたら、圧巻だよね!
どこかの美術館で企画して欲しいよ。
ニコラス・ブルーノはタロットの次に、どんなシリーズを展開するのか。
これからも注目の写真家だね! 

SNAKEPIPE MUSEUM #59 Eva Redamonti

20210221 13
【マス目に区切られた美しい色合いの「wander」】

SNAKEPIPE WROTE:

今回のSNAKEPIPE MUSEUMはEva Redamontiというイラストレーターを紹介しよう。
読み方はエヴァ・レダモンティで良いのかな?
どんな人物なのか、まずは経歴を調べてみよう。 

1995年 コネチカット州生まれ
2015年〜 グループ展に参加
2017年 バークリー音楽大学作曲学士
2021年 ニューヨークのEquity Galleryにて初個展

1995年生まれということは、現在26歳くらいなのか?
バークリー音楽大学は超難関大学らしいので、その大学を卒業したというだけでも輝かしい経歴だよね。
渡辺貞夫やゴタイゴのミッキー吉野も卒業しているみたいだよ。(笑)
エヴァ・レダモンティが作曲の勉強をしていたところに注目してしまう。
絵画は独学なのかもしれないね?
絵画と音楽の二刀流、という器用なアーティスト。
まるで敬愛するデヴィッド・リンチ監督みたいだわ。(笑)
早速作品を紹介していこう。

「Like My Father」は2019年の作品。
「私の父のよう」ってどういうことなんだろうね?
NHKの番組「英雄たちの選択」に出てくる、「心の内に分け入ってみよう」みたいな感じで、脳内の様子が描かれているんだけど。
特に何もないんだよね。(笑)
浮かない表情で、頭の中は空っぽ。
中央辺りに倒れ込むような人物が、助けを求めているように声を上げている様子が描かれている。
色調も控えめなので、精神状態が心配になっちゃうよ。
お父さん共々エヴァも暗かったのかなあ。
インクだけで描かれているモノクロタイプは$1,000、日本円で約105,000円で販売されているけど、この絵をずっと眺めていたら気分が滅入るかも。

上の作品と対になる「Like My Mother」(私の母のよう) も同じく2019年の作品なんだね。
中央にいる人物の目線が上向きなので、こちらの絵には希望の光が感じられるよ。
えっ、単純過ぎ?(笑)
様々な要素が描かれていて、一つ一つに意味が込められているんだろうけど、勝手に想像するしかないんだよね。
この作品は$900、日本円で約95,000円だって。
14 x 11インチということは、横幅約35cmの小さめな作品なんだね。

「If You Don’t See Me Ahead」は直訳にすると「あなたが私を先に見ないのなら」になるのかなあ。
意訳なら「私を一番最初に見つめて」ということになるのか。
骸骨が上から迫ってくる構図といえば歌川国芳の「相馬の古内裏」を思い出すけれど、どことなく雰囲気が似てるよね?
そしてタイトルを作品の中に書いてるところはリンチを思わせる。(笑)
タイトルとモチーフの関連は分からないね。
自分でストーリーを考えるのも面白いかも。
SNAKEPIPEが考えたのは、親子の愛情についてかな。
子供時代に愛情に飢えた経験から、悪夢や幻をみるようになってしまったという物語。
陳腐か?(笑)
この作品も14 x 17インチと小さめ。 
お値段は$450、日本円で約47,000円とはお手頃だよね!

まるでコロナ下の現在を表しているような作品。
タイトルは「Desire」(欲望)とのことだけど、トゲトゲした物体がまるでウイルスのように見えるんだよね。
目から口から鼻から悪い物が入ってくるようで。
どちらにしても「邪悪な存在」として題材にされているんだろうな。
それにしても耳の数、多いよね?(笑)
ここでもまたリンチを思い出すSNAKEPIPE。(笑)
縦が25cmというから、これも小さめの作品だね。
プリントはエヴァのサイトで$40(約4,200円)で入手可能だよ!

縦長の作品は目を引くね。
色合いもキレイだし、エヴァが女性のヌードを描くのも珍しい。
「Hard Pill to Swallow」(飲みにくい薬)も、タイトルとモチーフの関連が不明だね。
女性とか魚が泳いでいる、このカプセル自体がピルなのかも?
一体、誰がこれを飲むんだろうか。
またお話を作ってみようかな。(笑)
エヴァの作品には、ヒモ状のモチーフが描かれることが多いのが気になるんだよね。
へその緒だったり、人との「つながり」や「しがらみ」を表しているのかなと想像する。
SNAKEPIPEの連想なんて、こんな程度さ!

初個展のためにアニメーション作品も制作したようで、YouTubeにアップされている動画を載せてみよう。

アニメーションの音も担当しているようだよ。
「What Happens at Night」(夜に何が起こるの?)というのが個展のタイトルとのこと。
シンプルな線で表現されているせいか、 おどろおどろしい雰囲気ではない。
メッセージ性は感じるけれど、言葉にするのは難しいよ。
これも個人がそれぞれ感じることができれば良いのかな。

平凡で面白みのない田舎町で、一人の時間を過ごすことが多かったというエヴァ。
インタビューによれば、どうやら家庭環境が不健康だったらしく、エヴァ自身も学校ではなく家で勉強していたようで。
その時間が長かったせいで、創造性が身に付いたみたいだよ。
現在はニューヨークのブルックリンに生活と仕事の場を置いているというので、刺激的で面白い光景を毎日楽しんでいるんじゃないかな?
これからの活躍に期待だね!

SNAKEPIPE MUSEUM #58 Fritz Kahn

20210110 12 pg
【フリッツ・カーン「腺の洞窟に入る」1924年】

SNAKEPIPE WROTE:

今回のSNAKEPIPE MUSEUMはフリッツ・カーンを特集してみよう。
たまたまROCKHURRAHが作品を目にして、これはすごい、と教えてもらったのがきっかけである。
初めて知る名前だよ!
少し調べてみようか。 

1888年 ドイツのハレに生まれる
誕生直後、一家はアメリカに移住
その後再びドイツに戻る
1907年 ベルリン大学で医学を学び、州の試験に合格して医学博士号を取得
1914-22年 産科助手として働く
「Die Milchstraße」(天の川)を出版
1922年 図解された5巻シリーズ「Das Leben des Menschen」(人間の生活)を出版し、ベストセラー作家となる
1930年 パレスチナと北極圏への地質探検に出かける
1932年 砂漠を研究するためにサハラ砂漠に旅行
1933年 家族と一緒にパレスチナに移住
1937年 最初の妻と離婚後、2度目の結婚をしてパリに移る
1940年 敵国人としてフランスで抑留されるも、夫婦はスペインとポルトガルに逃げる
1941年 アインシュタインの助けを借りて、米国に移住
1948-50年 ヨーロッパでの生活後、ニューヨークに定住
1960年 スイスに住み、出版を続ける
1968年 スイスのロカルノで死去。

フリッツ・カーンの情報はそれほど多くなかったので、苦労してしまった。
経歴を調べていると、あまりに様々な国名が出てきて驚いちゃうよ。
フリッツ・カーンがユダヤ系ドイツ人だったため、迫害を受け亡命する必要があったことも理由なんだよね。
ここに書いていない国名もまだあるんだけど、主要な部分だけにとどめたよ。(笑)
そしてフリッツ・カーンを一躍有名にしたのが、1922年の図解された科学書「Das Leben des Menschen」(人間の生活)や、1926年に制作された等身大のポスター「Der Mensch als Industriepalast」(工業宮殿の男)だという。
全ての作品の邦題が分からないので、SNAKEPIPEが勝手に訳して使用するのでよろしくね。(笑)
画像がフリッツ・カーンのトレード・マークになったポスターね!
人間の体内を工場に見立てて、どんな働きをしているのか可視化したもの。
非常にユニークで、勉強にもなる一石二鳥の作品だよね。
このポスターを更に発展させ、アニメーションにしたのがHenning Lederer。
2009年の作品だというから、 80年以上の時を経てもフリッツ・カーンの影響力が強いことが分かるね。

とても面白い!
きっとフリッツ・カーンが観たら喜んだだろうね。

「70年で、人間は自分の体重の1,400倍を食べる」。 
上の「工業宮殿の男」と同じ1926年の作品だという。
これだけの量を食しているということをわかりやすく描いているんだけど、かなりシュールな絵だよね。(笑)
この年代といえばドイツではバウハウス真っ盛りじゃないの!
バウハウスの名付け親であるヴァルター・グロピウスやバウハウスの教官だったヘルベルト・バイヤーなどがフリッツ・カーン信奉者だったということを知り、ゾクゾクしちゃうよ。
新しいことを始めようとする人々の交流は当然だったのかもしれないね。
ROCKHURRAH RECORDSが憧れている時代を生きていた先進的な人たちは、どんな会話を楽しんだんだろうなんて想像するだけで嬉しくなっちゃう!(笑)

少し時代が遡って、1924年の作品「Support Structures」。
フリッツ・カーンの作品、と書いているけれど、どうやらフリッツ・カーン自身が描いたものではないらしいんだよね。
アイディアを提供し、フリッツ・カーンの指示に従って、出版社のデザイン部門で作成されたとのこと。
より複雑な画像の場合は、フリーランスの画家、建築家、グラフィックデザイナーに依頼し、独自のスタイルでアイデアを実装したという。
きっと頭の中には絵が完成していたんだろうね。
それを形にしてもらうためには助けが必要だったということだろうから、やっぱりフリッツ・カーンの作品と断言しちゃって良いんだろうね。
人体をテーマにしているだけではなく、シュールレアリズムの作品としての鑑賞も可能!
左右の隅にアルファベットが描かれているところに注目してしまったよ。
教材として活用していたのかな? 

「人間の生活」の第5巻は1931年に出版された。
第1巻が1922年だというから約9年かけてシリーズが完結したことになるね。
これは5巻にある作品で、視覚に関する説明をしているという。
美女として誉れ高い第18王朝エジプト王妃、ネフェルティティの写真を観ているシーン。 
網膜について勉強するための資料のようで、 桿体と錐体の働きを図解しているとのこと。
人体についてほとんど知識がないSNAKEPIPEだけど、「人間の生活」を教科書にして勉強したら知識が身につきそうじゃない?(笑)

「Die Entfaltung der Insektenflügel (The unfolding of insect wings)」(昆虫の翅の展開)は1952年の作品だという。
パラシュートの広がり方と、脱皮後のトンボの羽を比較して見せているんだね。
昆虫についての説明に、落下傘部隊が登場するとは思わなかったよ。(笑)
教材としてだけではなく、ポスターにして飾りたくなる美しい作品だよね!

グロテスクになりがちな体内組織の図だけど、フリッツ・カーンのグラフィックではアート作品になっているよね。
まるでサイケデリック・アートみたいだもん。
2010年1月に記事を書いた「医学と芸術展 MEDICINE AND ART」 に出品されていなかったのか確認すると、残念ながら展示されていなかったみたい。
フリッツ・カーンの作品を観てまっさきに思い浮かんだのが、まさに医学とアートのミクスチャーだったんだけどね。 
フリッツ・カーンの著作を手に入れて、全ての挿絵を鑑賞したくなってしまう。
手に入れることができるのかな、と調べてみるとお手頃価格で販売されていることが判明!
すぐに購入してしまったよ。
到着が楽しみだ。(笑)