ポーラ・シェア:Serious Play 鑑賞

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【gggの入り口を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

以前は仕事場だったため、昼休みにはギャラリー巡りをしていた銀座だったけれど、特に用事がなければほとんど行くことがなくなってしまった。
かつてのギャラリー巡りのおかげで、銀座に関しては◯丁目と言われれば、方向音痴のSNAKEPIPEでも、なんとなくの方向が分かるんだよね。(笑)
かつて歩いていた頃にあったはずの建物がなくなり、いつの間にか聞いたこともない建物があったりするので、あまり信用できないけど!

今回久しぶりに銀座を訪れたのは、ギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催されている「ポーラ・シェア:Serious Play」を鑑賞するため。
ギンザ・グラフィック・ギャラリー、通称gggは、公益財団法人DNP文化振興財団が企画・運営し、グラフィック・デザインを対象とした企画展を開催しているギャラリー。
以前鑑賞したのは、2012年3月に開催された「ロトチェンコ-彗星のごとく、ロシア・アヴァンギャルドの寵児-」だったので、今から7年前になるんだね。
とてもきれいなギャラリーで、展示数も多かったのに、入場無料に驚いた感想をまとめた記事を書いているよ。
本当にこのギャラリーの資金繰りは謎だなあ。(笑)
そして「なんとなくの方向が分かる」と豪語していたSNAKEPIPEだったけれど、今回も結局はROCKHURRAHがGoogle Mapで現在位置を確認しながらギャラリーに辿り着いたこと報告しておこう。(とほほ)

グラフィック・デザイナーであるポーラ・シェア(Paula Scher)について、少し調べてみよう。
1948年 アメリカ、ワシントンD.C.出身。
ペンシルベニア州フィラデルフィアのタイラー・スクール・オブ・アートで美術の学士を取得。
ワシントンD.C.のコーコラン・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザインから美術の名誉博士号を受けている。
1970年代にアトランティックレコードとCBSレコードで、レコードジャケットのアートディレクターとしてグラフィックデザインの仕事を始める。
その後雑誌のアート・ディレクションに移行し、タイム社で働く。
1984年より、ニューヨークに共同設立したコッペル&シェアを経営。
1991年にはペンタグラム社にパートナーとして参画。
1998年 アート・ディレクターズ・クラブの殿堂(Hall of Fame)入り。
同年、アメリカン・インスティテュート・オブ・グラフィックアーツのニューヨーク分校の校長にも選出される。
2000年 デザインのイノベーションに対してクライスラー・デザイン・アワード受賞。
2001年 アメリカン・インスティチュート・オブ・グラフィック・アーツよりゴールド・メダル獲得。
ビーコン賞など受賞多数で、国際グラフィック連盟会員。 
作品はMOMAやパリのポンピドゥー・センターなどにコレクションされているという。

こんなに華々しい経歴を持つデザイナーさんだったとは!
お恥ずかしながら、ROCKHURRAH RECORDSは初見でございまして。(汗)
グラフィック業界の有名人だったのね!
展覧会が観られて嬉しい限りだよ。
そして今回の展覧会に合わせてポーラ御本人が来日し、講演会も行っていたんだね。
その時の映像がgggの2Fで視聴できたので、SNAKEPIPEとROCKHURRAHは少しだけ観てきたんだよね。
年代によってテーマが決まっていて、年を経るごとにミニマムになる話が興味深かった。
それでは気になる作品を紹介していこうかな。
gggでは撮影オッケーだったので、バシバシ撮影してきたよ!(笑) 

ギャラリーの入り口を入ってすぐに展示されていたのは、ポーラの代表作の一つであるMAPシリーズ。 
このシリーズは実物を観ないと面白さが伝わりにくいかもしれない。
画像ではガラスに光が反射してしまい、余計に分かりづらいかも。
載せているのは東京の地図なんだけど、手書きなんだよね。(笑)
非常に細かく文字が書かれているので、近づいてじっくり鑑賞してみたよ。
これがアップにした部分。 
「TOKYO BAY」の文字が見えるかな?
東京湾にあたる部分には何やらたくさんの文字が描きこまれているよ。
いろんな方角に文字が飛んでいるので、全部を読むのは難しいかもしれない。
MAPシリーズは世界全体から、アメリカ合衆国、ヨーロッパ、アフリカ、インドなど、地域ごとに作られていてどれも素晴らしいの!

2007年の作品「The Dark World」ね。
色味を抑え、 領土を示すような線が描かれていないところがポイントかな?
世界人口として6,400,000,000と書かれているので、 国というよりは世界全体について描かれている様子がよくわかる。
地図を描いた作品というと、世界平和を訴えたり、逆に分裂や紛争などをテーマにすることが多く、世界情勢に疎いSNAKEPIPEには難しい時があるんだよね。
ポーラの作品には政治的な問題意識を提示したり、共有を迫る姿勢が感じられなかったところに好感を持ったよ。

バウハウス的な色合いの「Best Of Jazz」は1979年のポスターね。
ロシア構成主義にも通じる文字を縦や横にしてバランス良く一枚に仕上げるセンスは見事!
この作品をgggのHPで観て、展覧会に行きたいと思ったんだよね。(笑)
数種類のフォントの使い分け方、勉強になるなあ!
ポーラが手がけたのはジャズ系のアーティストのポスターやジャケットが多かったようで、ROCKHURRAH RECORDSがあまり得意ではない分野になるよ。
そのため名前と曲が一致しない場合が多いけれど、観た時にグッとくる作品だね!

ポーラが1984年から経営していたコッペル&シェアが手がけたブック・デザインに見慣れた名前を発見!
フランツ・カフカの「変身」のカバー・デザインなんだよね!
これもロシア構成主義の影響を感じるデザインで、もしこのカバーの「変身」があったら、英語でも頑張って読むかもしれないな。(笑)
2019年2月に書いた「ROCKHURRAH紋章学 ブック・デザイン編」に加えたくなるデザインだよね!

「これはレコード持ってたバンドのだ」とROCKHURRAHが言う。
Fabulous Poodlesは1975年から1980年まで活動していたイギリスのバンド。
テディ・ボーイ達に大人気という触れ込みだったので聴いてみたけれど、ROCKHURRAHの琴線にはちっとも触れなかったらしい。
どうしてテッズに人気と言われていたのか、未だに謎で考え始めると眠れなくなるほどだという。(うそ)
ポーラの作品の中に知ってる名前があった、ということで取り上げてみたプードルちゃんだよ!

ポーラ・シェアの作品の特徴の一つに「遊び心」がある。
ちょっと捻って「くすっ」と笑いを取るような、上品なダジャレというのか。
「BLAH BLAH BLAH」と題された作品には、たくさんの「BLAH」が描きこまれているんだよね。
日本語にすると「とかなんとか」だったり「その他諸々」になっちゃうんだけど、「彼女があーだこーだ文句を言った」 のような時に使われるのを映画などで耳にすることがあるよ。
そのためどちらかというと「小うるさい」印象がある言葉なんだよね。
その雰囲気がこの作品にはよく出てるんじゃないかな?(笑)

これは演劇か何かのポスターで、2003年の作品ね。
「FUCKING A」って意味が分からないけれど、アメリカでは放送禁止用語じゃないのかな?
その単語をまるでパンクのレコード・ジャケットのように見える方法でポスターを作るポーラ、この時54歳かな。
演劇の内容に沿った印象で仕上げているのかもしれないね。
グラフィック・デザインというのが、インパクトを与え、一枚のポスターから観る人にイメージさせ、劇場に足を運ばせるための手段なる広告として機能していることがよく分かるよ。
SNAKEPIPEは一枚のポスターから、何か行動を起こしたことはあったかなあ。
例えば駅のポスターに目を奪われる経験は、非常に少ないと思うよ。
もし街や駅でポーラのポスターを目にしたら、人生が変わっていたかもしれないよね。(おおげさ)

現在70歳のポーラはまだまだ現役で、3次元までデザインの幅を広げ、プロダクトデザインも始めていると講演会の中で話していたよ。
新しいことに挑戦しようとするカッコ良さに憧れるね!
タイポグラフィやアスキーアートを効果的に使用したグラフィック・デザインの秀逸作品を鑑賞できて良かった。
またgggに足を運びたいと思う。

先にも書いたように久しぶりの銀座だったので、GINZA SIXなる商業施設に足を踏み入れるのは当然のように初めてのこと。
gggから近いのでせっかくだから、と行ってみたのである。
目的はアールグロリュー ギャラリー オブ トーキョーで開催されている「草間彌生と現代アート展」。
行ってみて分かったことだけれど、ここは展示販売のギャラリーだったんだよね!
売る気満々の店員が待ち構えているとは知らずに、鑑賞目的で入ってしまったよ。(笑)
一通り観て回り、販売価格をチェックしてみた。
草間彌生の代表作である「南瓜シリーズ」のシルクスクリーンは、300万から1000万(超える作品もあり)くらい。
肉筆画の一点物だったら、また違う価格設定がされるんだろうね。
販売価格を知ったのは初めてだったので、貴重な経験になったかな。(笑)

日本を変えた千の技術博 鑑賞

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【千の技術博の看板を撮影。バックにうっすらと積もる雪が見えるね】

SNAKEPIPE WROTE:

昨年の10月から国立科学博物館で開催されている「明治150年記念 日本を変えた千の技術博」を、今頃になって鑑賞した。
上野公園では、他に東京都美術館で「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」の展示もあり、どちらにしようか迷った結果「技術博」に決めたROCKHURRAH RECORDS。
2016年10月に鑑賞した「驚きの明治工藝」や「ビザール・マッチ選手権!33回戦」、「ビザール・ポストカード選手権!34回戦」で、日本の洗練されたデザインや卓越した技術力を知り、もっと明治・大正時代について知りたいと思っていたからね!
現在放映されているNHKの大河ドラマ「いだてん」の中で、天狗倶楽部というスポーツ大好き集団が登場する。
天狗倶楽部は明治42年頃から活動を始め、昭和初期には自然消滅したらしい団体だ。
ROCKHURRAH RECORDSは、天狗倶楽部のユニフォームに着けられているワッペンに注目したのである。
やや丸みを帯びたフォントを使用し、天狗をTNGと短縮した素晴らしいデザインなんだよね。
想像しているよりもずっと進んでいた明治時代以降の日本の文化に益々興味が湧いてくる。

3連休を利用して展覧会を鑑賞しようと計画したROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
鑑賞日を連休初日に設定してみたけれど、その日の東京は雪の予報!
雪の日に出かけたといえば、2018年3月に「レアンドロ・エルリッヒ展:見ることのリアル」 を鑑賞した日も大雪だったっけ。
あの時は、雪だから空いてるかもしれない、という予想が大きく外れてチケット買うのに30分以上並んだんだよね。
まさか今回も雪の日だから余計に人が多いってことはないだろうか、と不安に感じながら小雪がちらつく上野公園を歩いたのである。

予想最高気温は1℃か2℃だったはずなのに、完全防備していたせいもあり、そこまでの寒さを感じない。
更に全く大雪にもならず、長い傘をさす必要もないほどの小雪。
「備えあれば憂いなし、だから」
と言い聞かせながら歩くSNAKEPIPEだけれど、膝までの長靴は大げさだったなあ。(笑)

国立科学博物館前まで来ると、数人の人だかりがある。
やっぱり混んでいるのかも、と思ったのも束の間、チケット売り場にはすんなり到着。
会場内には「そこそこ」の人は入っていたけれど、展示物の前が黒山の人だかりで全く見えないということもなく、少し待ったり順番を変えて歩いていれば、必ず鑑賞できるくらいの余裕はあった。
撮影もオッケーだったので、バシバシ撮ってきたよ!
ただし、会場内は少し暗かったんだよね。
スポットライトを当てているせいで、しっかりと影ができてしまい、写真撮影には向かない状態だったことを最初にお断りしておこうかな。
決してSNAKEPIPEの腕が悪かったせいじゃないからね。(笑)
それでは気になった展示物を紹介していこう!

元はアメリカの「学校・家庭用掛図」で外国人が描いた図を、日本人が模写したもの。
「小學用博物圖」と旧字体で書かれているように、これは小学生用の植物図鑑だったんだろうね。
明治9年(1876年)に輸入されたネタを元に日本語訳版を作ったのが、これ!
日本人が外国文化を積極的に取り入れ、自分のものにしようとしていたことがよく分かるよね。
右上に「大阪師範学校 天野 皎 譚」と書かれているので、天野さんが描いたのかもしれないね?
8枚同じような掛図があるようなので、並べて見てみたいよ。 
学術用に制作されているはずなのに、アート作品に見えるところが面白いね!

こちらも教育用に制作されている展示品だよ!
明治28年(1895年)に島津製作所が製作販売していたという人体模型図なんだよね。
内臓がパーツごとに下部に並べられているところに、笑いと残酷さという相反する感情を持つことになって複雑な気分。(笑)
笑いがあるホラー映画、みたいな感じね。
明治時代にこんな模型が売られていたことに驚いたよ。
2010年1月に「医学と芸術展 MEDICINE AND ART」を鑑賞した時にも、17、18世紀にドイツで製作された象牙のミニチュア人体模型図を鑑賞したことを思い出す。
あの時も学術目的で製作された物品なのに、アート作品よりもアートだった感想を持ったんだよね。
この人体模型図も「おままごと」のように遊んでみたい衝動に駆られた逸品だよ!

何故病院に旗が必要なのか不思議だよ。
「奥羽追討陸軍病院(平潟口)の病院旗」とのこと。
明治元年(1868年)の物だという。
赤の生地に黒の菊の御紋は目立つよね。
明治時代のこのセンス、カッコ良いと思うよ。

これは一体なんだろう?
「世進電話雙録(よはすすむでんわすごろく」だって。
明治26年(1893年)に電話の使い方を主題にして作られた双六だという。
明治になって26年が経過しても、描かれた人物の服装は着物が主流だったことが分かるよね。
「文明開化」で「鹿鳴館」でドレスを着て踊る女性ばかりではなかったんだね。
電話の歴史としては、1878年に日本製の電話機が完成した、とWikipediaに書いてある。 
電話がだんだんと一般庶民に普及してきた頃に作られた双六ということになるんだね。
それにしても、この双六、遊んで楽しいのかな?(笑)

明治時代には薬の研究も進んでいたようで、薬の広告も展示されていたよ。
三共株式会社(現在の第一三共株式会社)が明治32年(1899年)に消化酵素剤「タカヂアスターゼ」、明治35年(1902年)に副腎髄質ホルモン剤「アドリナリン」を商品化して、販売していたことを初めて知ったSNAKEPIPE。
 「The Adrenalin Family」と書かれている広告は明治38年(1905年)の物。
フォントの使い方、素敵だよね!
それにしても明治から大正時代にかけて様々な研究を成功させていた医学博士である高峰譲吉、もっと知りたいと思ったよ。

このポスターに関しては、何のキャプションも提示されていなかったんだよね。
別の場所で似たようなポスターに付けられていたのは、大正9年(1919年)「生活改善ポスター」 だったので、恐らく同じタイプだと思われる。
「家庭の改良は先づ 臺所設備から」と書かれていて、右上に昔ながらの土間の様子が描かれ、中央には改良版としての台所の様子が描かれている。
大正時代にはもう現代とそれほどの違いがないキッチンが存在していたことになるよね。
L字型のシンクや食器棚、3口のコンロ(下部はオーブン?)に換気扇まで描かれている。
服装は和装のままではあるけれど、一般庶民にも椅子の生活が始まっていることにも驚いたよ!

重工業の分野でも大きな発展があった明治時代以降の日本。
詳しいことはよく分からないので、説明できないのが苦しいところ。(笑)
ただSNAKEPIPEは鉄やステンレスを使用している部品や鋼材に興味があるんだよね。
インダストリアル・デザインが大好きなROCKHURRAH RECORDSは、実際に可動して何の目的で使われていたか、というよりもそのカッコ良さに目を奪われる。
無理矢理名付けるならば、インダストリアル美、略してインダス美?インダ美?イン美か? 
短くすればするほど、本来言いたいこととは違ってくるのでやめようか。(笑)
この画像は「スターリングエンジン」だって。
かなり大型だったけど、何に使われていたんだろう。
チャコールグレーの塗料が印象的で、光の加減によっては鈍色に見え、更に重厚感が増す。
上部にある車輪状のフォルムまで含めて、インダストリアル好きにはたまらない逸品だったよ!

この車に大反応していたのはROCKHURRAHだった。
マツダのコスモスポーツは、1967年に世界で初めて販売されたロータリーエンジン搭載車だという。
ROCKHURRAHは子供の頃に、ウルトラマン・シリーズや石坂浩二の「平四郎危機一髪」などのドラマで使用されていた、この車が大好きだったらしい。
プラモデルでも作っていたそうで、それが大反応の理由のようだね。
確かに車に疎いSNAKEPIPEが見ても、昔の車には確かな個性と造形美があると思ったよ!
イタリア車だと言われても納得してしまう流線型は、まるでサメをモデルにしたように見える。
こんな車が一般道を走っていたかと思うと驚いてしまうね。

最後は「二式一一五〇馬力発動機」ね。
数字にすると「2式1150馬力発動機」なんだけど、やっぱり漢数字で書いたほうが「ザ・日本製」で良いみたいだね。(笑)
「隼」や「零戦」といった日本の戦闘機に搭載された航空機用のエンジンだという。
またこのフォルムが素晴らしいんだよね!
イン美の世界を堪能できる逸品だよ。(笑)
展覧会を鑑賞しているお客さんの大半は、ROCKHURRAHとSNAKEPIPEのような鑑賞法ではなくて、飛行機や電車好きのマニアだったようで、この発動機の前から動かない人がいっぱい!
「デザインがカッコ良い」
という感想を持つSNAKEPIPEも負けず劣らず写真撮影していたので、戦闘機好きだと思われたかもしれないね?
そしてこの発動機はお土産コーナーで、Tシャツとして売られていたのを発見。
版画のような1色刷りでのプリントでは、一体何なのか不明な物体にしか見えないのでは?
せっかく作るなら、もっと出来栄えを考えて企画して欲しいと思う。

大抵の展覧会でのミュージアム・ショップには不満があるけれど、今回もひどかった。
誰が「蚕」のぬいぐるみ(体長約70cm)を買うんだろう?
クリアファイルにクッキーや缶バッジは、いつでも販売されている企画品だけど、実際売れる物なんだろうか。
明治時代以降の展覧会ということもあり、ショップの半分は昭和を感じさせる駄菓子屋のような雰囲気になっていて、これもまた興醒めの一因だったよ。
展覧会でのお土産、購買意欲をそそる逸品の開発をして欲しいなあ。

日本の明治・大正時代については、これからも調べていきたいね。
この時代の展覧会があったら、また鑑賞したいと思うよ!

バッドアート美術館展鑑賞

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【ギャラリーアーモ前の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

2018年は展覧会に行く機会が少なかったなあ。
最後に行ったのが、なんと6月!
約半年前のことになってしまうとは、近年稀にみる回数の少なさだよ。
特に引越し作業に追われている間は、とても展覧会情報を確認することもできなかったしね。

越してから約2ヶ月になろうとしているこの頃になって、ようやく時間的にも気分的にも余裕が出てきた。
何か面白そうな企画があれば良いのにね、とROCKHURRAHに話しかける。
「こんなのやってるよ」
と提案してくれたのが、東京ドームシティにあるギャラリーアーモで開催されている「バッドアート美術館展」だった。

バッドアート美術館といえば、2017年8月に「好き好きアーツ!#46 世界アート(仮)探訪」で紹介したことがある美術館のことじゃないの!
一生懸命描いたけど、方向性が違っていたり、技術的に問題がある作品ばかりを集めているボストンにある美術館(Museum of Bad Art)、通称MOBA。
「とほほ」な作品を一度鑑賞したいと思っていたんだよね!
ROCKHURRAHとSNAKEPIPEは、クリスマス前の寒い日に、後楽園へ向かったのである。

後楽園球場と後楽園ゆうえんちがある水道橋近辺、と書こうとしたら!
今は東京ドームと東京ドームシティアトラクションズって名前に変わっているんだよね。(情報古過ぎ!)
遊園地系も野球にも縁がないので、全然知らなかったよ。(笑)
今回の会場であるギャラリーアーモも、当然のように初めての訪問!
ドーム内に設置されている地図などを頼りに、そこまで迷わず会場に到着。
ドームシティの中にあることはわかっているので、迷うほうがおかしいか?(笑)

ギャラリーまでの道には、休日だったためかアトラクションに並んでいるお客さんの行列に驚いたけれど、バッドアート美術館展会場は、そこまで混雑していなかった。
フラッシュを使わなければ、全ての作品の撮影が可能であり、撮影した写真はSNSなどに投稿してください、とのこと。
最近は撮影オッケーな展覧会が増えて良かったよ!
琴線に触れる作品をバシバシ撮っていこうじゃないの。(笑)

会場入ってすぐに、バッドアート美術館についての説明がされていた。
今回は展示されていなかったけれど、最初にコレクションされたのが、「ルーシー・イン・ザ・フィールド・ウィズ・フラワーズ(花咲く野原のルーシー)」だという。
ゴミ箱に捨てられていた作品は、額縁目当てで救い出される。
そして後にバッドアート美術館を設立することになる人物により、作品も日の目を見ることになるのである。
作品に価値を見出す人物との邂逅が、MOBA設立のきっかけになるとは奇跡的だよね!
A4くらいの大きさにプリントされていた「ルーシー」だったけれど、十分なインパクトを感じることができたよ!
花咲く野原を散歩している途中で、めくれ上がったスカート。
可憐な少女を思い浮かべてしまうけれど、風貌はまるで「おっさん」!(笑)
よく見ると足の位置もおかしいように感じてしまう。
コレクション第1号を名乗るのにふさわしい作品だよね!

カナダのA・シュミットの作品「マナリザ」。
レオナルド・ダ・ヴィンチの有名な作品「モナ・リザ」のパロディで、女装したバージョンだという。
髪型とポーズがなんとなく似てるから「モナ・リザ」を参考に描いていることはわかるんだけどね。
顔の崩れ方と稜線のぞんざいさは「とほほ」全開!(笑)
捨てられていたり、蚤の市で仕入れた場合、美術館側では作者を探すために手を打つらしい。著作権の問題があるもんね?
作者名が明記されているということは、本人がMOBAに売り込みに行ったのかな?

「沼ピクニック」と題された作品。
素人レベルではないほどの腕前じゃないかな?
木々や水の表現は素晴らしいよね。
目を引くのは、微笑み合っているカップル。
なんでこんな服着てるの?(笑)
作者であるテッド・ケイト・ジュニアに直接聞いたのか、想像なのかは不明だけど、この絵は近未来で、環境汚染により防護服を着ているとのこと。
現代のデート風景だったら、MOBAに展示されることはなかったはずなので、大成功かもしれないね? 

これは完全に「とほほ」だね!
シープドッグのチャーリーとシマリスのシーバを描いた作品だという。
チャーリーが鳴きやまないので、シーバが絆創膏で口をふさいだらしい。
右側、本当にシマリス???
謎の生き物にしか見えないんだよね。(笑)
この絵には人を惹き付ける力があるようで、SNAKEPIPEはなかなか絵の前から立ち去ることができなかったよ!
駄作なのに魅力があるというMOBAの信念がよく解る作品だね。

これもまた犬なんだけど。
人面犬といっても良いような顔立ちだよね。
恐らくプードルだと思うんだけど、かわいらしさの欠片もない!(笑)
観た瞬間に笑ってしまうほどだよ。
「青いタンゴ」と題された作品だけど、作者は不詳。
リサイクルショップに売られていたところを第三者が購入し、MOBAに寄贈したという。
作者本人が売り込みに来る場合には、 MOBAに受け入れてもらわなかったら「そんなに下手じゃなかったんだ」と自信を持ち、買い取られた場合には「展示してもらえるかもしれない」と期待するということでどちらに転んでも良い結果となるらしい。
このエピソードはとても興味深いよ。
どっちもオッケーなんてなかなかないからね?

1920年代に刊行されたパルプ・マガジンの挿絵のような作品。
「タイガー愛」と題されているんだけど、全く意味不明だよ。 
この画像の大きさだと分かりづらいけど、右の奥に午前3時を示している時計が描かれているんだよね。
男女の表情とトラのアップ。
そしてトラの目から出ているビーム!(笑)
強烈な印象を残すよね。

宗教を絵画の題材に取り入れることって多いよね。 
ROCKHURRAH RECOREDSにはあまり馴染みがないジャンルなので、今まであまりじっくりと鑑賞したことがないタイプの絵画だと思う。
ところが今回MOBAのコレクションの中に、目を奪われてしまった作品があったんだよね。
それがこちら「聖母子像」である。
マリアがキリストを抱いているシーンだと思うんだけど、赤ん坊の顔!
観た瞬間から目が釘付け!
作者は不詳とのことだけど、描いたのはキリスト教徒だよね? 
これで良いのか?(笑) 

どうしてこの題材を選んでしまったんだろうね。
タイトルは「ヨガ教室」で自撮りした写真を元に描いたのではないか、と推測されている。
作者が不詳のため本来の意図は不明だけど、本来は間違ってシャッター押しちゃった時の画像だよ、これ。(笑)
ミスショットをあえて選んで描こうとしたその心意気。
「なんで?」「どうして?」と謎を持つことができる絵画。
これこそがMOBAの真髄だよね!

2018年の最後は大笑いできる展覧会鑑賞で締めくくることができて大満足だった。
行ってみたいと思ってブログで特集した美術館の作品を実際に目にすることができるなんて最高だもんね。
終わりよければすべてよし!
笑う門には福来る!(笑)
来年はどんな展覧会に行かれるのか、今から楽しみだよ。

ダニエル・アーシャム Architecture Anomalies鑑賞

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【展覧会のタイトルを撮影。ライブハウスみたいだね】

SNAKEPIPE WROTE:

最近展覧会の鑑賞から遠ざかっていたため、アート作品に触れたい病にかかっていたROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
「ちょっと面白そうじゃない?」
とROCKHURRAHが提案してくれたのは、渋谷にあるNANZUKA というギャラリーで6月30日まで開催予定のダニエル・アーシャム展だった。
NANZUKAも初めてだし、ダニエル・アーシャムというアーティストも初耳のSNAKEPIPE。
他に渋谷に用事もあったので、行ってみることにする。

ヒカリエの近くにあるギャラリーということなので、方向音痴のSNAKEPIPEでも分かるはず!
ヒカリエを目指し、裏手のシオノギビルまで来れば、ギャラリーはその隣のビルだからね。
地下にあるというので階段を降りてみる。
地下1階に到着すると「後ろにあるエレベーターで地下2階まで降りてください」と書かれた張り紙を発見!
まるで秘密地下組織のメンバーになるような気分で、エレベーターに乗り込む。
このエレベーターが小さくて古めかしいのよ。(笑)
こんな些細なことでも、ちょっと冒険めいた気分になってワクワクしてしまうんだよね。

エレベーターを降りると、また数段の階段を降りて会場に入る。
バーンと開けた会場なので、好きな順番に観て歩くことが可能だね。
作品数は多くないけれど、無料で開放されていて、更に撮影OKだというのは太っ腹!
もちろんバシバシ撮らせて頂いたよ。

では最初にダニエル・アーシャムについて簡単に説明しようかな。
1980年アメリカ、オハイオ州生まれの38歳。
現在はニューヨークを活動拠点にしているという。
芸術活動が多岐にわたり、立体作品やペインティング、建築やパフォーマンス、映画制作も行っているという。
「Fictional Archeology」(フィクション考古学)や「Future Relic」(未来の遺物)なんてタイトル聞くだけで興味が湧いてくるよね。
今回のタイトルは「Architecture Anomalies」で「科学的常識、原則からは説明できない逸脱、偏差を起こした現象を含む構造」がテーマだという。
解説すると難解な文章になるんだろうけど、作品はちっとも難しくなかったよ。(笑) 

会場入ってすぐ目に飛び込んできたのがこの作品。
椅子に座っている人にシーツが被せられているようで、観た瞬間にゾッとしたよ。
どんな状態で人がいるのか分からない、というのがこんなに恐怖を感じさせるとはね!
2017年12月に書いた「SNAKEPIPE MUSEUM #45 Sam Wolfe Connelly」の中に、同じようなシーツを被った人物を描いた作品があったことを思い出す。
あの絵も怖いんだよね!
今回の立体作品は、シーツだと思っていたら石膏みたいに固い素材でできていて意外だったよ。
中にマネキンが入っていたりするのかな。
どんな造りになっているのか不思議だったよ。

アーシャムのHPで確認すると、これは2017年のモスクワ・ビエンナーレで発表された作品みたいだね。
壁をギューっと引っ張って、紐状にして、結ぶ。
この作品も壁に張られた布を使用してるわけじゃないんだよね。
やっぱり石膏みたいな固い素材で作成されている。
説明にあったように「常識では説明できない現象」ということになるんだね。(笑)
結び目が和風な感じがして、ちょっとおめでたい雰囲気に見えたよ。

今度は手がニョッキリ壁から突き出てるよ!
右からと左から出てるので、このまま突き出して行って、握手したいように見えるよね。
もしくはこれらのパーツ全てが1人の人間の物なのかも。
その想像はまるでバラバラにされたパーツが壁に塗り込められている、江戸川乱歩を連想してしまうね!(笑)
壁に埋まっている人物は足だけ出てるけど、ちゃんと靴履いてる。
よく見るとアディダスのマークがちゃんと入ってるじゃないの!
どうやらダニエル・アーシャムとアディダスがコラボして「NY PRESENT ARSHAM」 というスニーカーが実際に販売されていたようで。
もしかしたらそのスニーカーが使用されていたのかもね?
アディダスの部分も撮影したんだけど、ピンぼけだったので載せていないよ。(笑)

まるで時計が自らの意思で壁の中に滑り込んでいくように見えてしまう作品。
無機物に意識が芽生えるというのは「2001年宇宙の旅(原題:2001: A Space Odyssey 1968年)」に出てくるHAL以来、特に目新しいテーマではない。
それでもやっぱりこうした作品を目にすると考えさせられるんだよね。
時を刻み続けることへの嫌悪、過去の悔恨と消去願望とか?
えっ?陳腐?(笑)

完全に壁の中に埋まってるよ!
どう見ても好きで埋まったとは思えないんだよね。
財産目当てで始末されて、壁に埋め込まれて上から石灰かけられたけど、実際にはまだ生きていて、壁から出てこようともがいているところ?
もしくは隠れんぼしてシーツの裏にいたけど、発見されないまま年を取ってしまったとか?
ちょっと肥満体に見えるので、新手の吸引式ダイエットを行っているところかも?
かなり強引な想像をしてみたけど、この作品も中に人がいるように見えるシリーズで、同じように石膏みたいに固い素材でできていたよ。
最初のシーツ被っている作品と壁男からは犯罪めいたニオイがしちゃうね。

ダニエル・アーシャム展は六本木にあるペロタン東京というギャラリーと同時開催されているよようだ。
ペロタン東京では別のシリーズ「Color Shadows」が展示されている。
今回はNANZUKAだけを鑑賞したけれど、ダニエル・アーシャムの映像作品も気になるなあ。
過去にNANZUKAで開催されたダニエル・アーシャムの作品は、「SNAKEPIPE MUSEUM #41 Regardt van der Meulen」で紹介した作風に似ているように見える。
人体をパーツとして捉える雰囲気が近いと感じたんだよね。
ダニエル・アーシャム、リガルト・ヴァン・ダー・メーレンどちらの作品も実際に目にしていないので、画像だけの判断での根拠のない発言だよ。(笑)

ダニエル・アーシャム、これからも注目だね!