「陸の海ごみ」鑑賞

20191124 top
【ギャラリー前の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

鑑賞したのに、記事にするのをすっかり忘れていたSNAKEPIPE。
1ヶ月以上も放置していたとは!
最近は活発になっているROCKHURRAHとSNAKEPIPEなので、他のイベントを記事にすることに忙しかったんだよね。
自分で撮影した写真を観ていて思い出した展覧会は「陸の海ごみ」。
竹中工務店のギャラリーであるギャラリーエークワッドで開催されていた。
過去形なのは、すでに展示が終了しているせい。
宣伝にならない記事でごめんなさい!

ギャラリーエークワッドといえば、以前イームズ夫妻の家を鑑賞したことがあったね。
2019年3月に「EAMES HOUSE DESIGN FOR LIVING 鑑賞」としてまとめているので、ご参照ください。
入場無料なのに、素敵なフライヤーがあったり、展示も充実してたんだよね。
さすが竹中工務店、と思ったものよ。(笑)
そのギャラリーでの展覧会なので、期待して出かけたROCKHURRAHとSNAKEPIPE。 
「陸の海ごみ」とは、一体どんな作品なんだろうね? 

10時のオープニング直後に到着。
調べたわけではないけれど、恐らくギャラリーは会社の一角に設置されていて、他のフロアは竹中工務店のオフィスじゃないのかな。
前回もそうだったけど、入り口から入る時にちょっとだけ戸惑うんだよね。
「ここで良いのかな。入って良いのかな」
って感じでね。(笑)
目の前にガードマンが立っているから余計かも。
意を決して会場に足を踏み入れる。(大げさ)
ありゃ?受付の女性以外、誰もいない!
ROCKHURRAH RECORDSの貸し切りとして、ゆっくり鑑賞することができるよ。(笑)

ここでギャラリーエークワッドに載っていた作者である藤元明の経歴を転用させて頂こう。
1975年東京生まれ。
東京藝術大学美術学部大学院デザイン専攻修了。
FABRICA (イタリア)に在籍後、東京藝術大学先端芸術表現科非常勤助手を経てアーティストとして活動。
都市における時間的/空間的余白を活用するプロジェクト「ソノ アイダ」を主催。
人間では制御出来ない社会現象をモチーフとして、様々な表現手法で作品展示やアートプロジェクトを展開。
主なプロジェクトに「TOKYO 2021」「NEW RECYCLE®」、広島-New York で核兵器をテーマに展開する「Zero Project」など。
2016年より開始した「2021」プロジェクトは現在も進化中。
社会現象をモチーフにしていると書いてあるので、今回の企画もその一環なのかな。

会場で最初に目にしたのは、巨大なスクリーンに映し出された万華鏡のような映像だった。
しばらく眺めていると、それが「海のごみ」だと分かる。
漁業の方が使う網とか、ロープの類なのか。
色合いが美しいので、タイトルを知らないと「ごみ」とは思わないだろうね。
「海のごみ」を使った環境アート、といったところか。
万華鏡状態の「ごみ」映像は、他にもたくさん流れていた。

プラスチックのカゴ(?)とコップが配置されている。
これもじっくり観ないと分からないんだよね。(笑)
2015年8月に記事を書いた「ここはだれの場所?」で鑑賞したヨーガン・レールの作品を思い出す。
ヨーガン・レールも石垣島で拾った漂流ゴミを使って、美しい作品を展示していたんだよね。

ここまでくると、サイケデリックー!(笑)
幻惑させられるようで、頭がクラクラしてくるよ。
BGMはジェファーソン・エアプレインか?(笑)
これらの映像が流れる画面が10点程並んでいるのは、壮観!
色合いと形が勝負なので、シンメトリーの構図だけの展開では少し弱いかもしれないとも感じた。

プラスチックのごみが海洋を漂っている様子をシミュレーションした映像もあった。 
これは海洋研究開発機構で開発された海洋循環モデルを使用しているとのことなので、藤元明の作品ではない。
日本も相当プラスチックごみが漂流していることが分かる。
いつの間にか生活していく上で、なくてはならない素材になっていたプラスチック。
2069年までの予想映像だったけれど、これから海はどうなっていくんだろう?と不安になってしまうね。

漂流物で作成されたオブジェ。
なんとなくまとめて、なんとなく形にしたような安易さを感じる。
同じような素材を扱い、素晴らしい作品を世に送り出した人もいるわけだから。
写真家・東松照明が海岸に漂着したプラスチックを撮影したのが、1988年から89年のこと。
「プラスチックス」として発表されることになるけど、この完成度の高さったら!
構成と色が素晴らしい作品に魅せられたSNAKEPIPEにとっては、藤元明の立体作品は物足りなかった。

その気持ちが、ブログにアップするのを躊躇させた理由かもしれない。
えっ、単なる物忘れ?(笑)
ギャラリーエークワッドは、とても良いギャラリーなので、また別の企画を楽しみにしたいと思う。

「造形遺産054-067」,「HAZY HUE」未鑑賞

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【10月だというのに汗ばむほどの陽気だったよ】

SNAKEPIPE WROTE:

約2ヶ月ぶりに長年来の友人Mと待ち合わせした。
特にこれといった展覧会を思いつかなかったSNAKEPIPEは、ランチでも食べながら近況報告しようと考えていた。
ところが、友人Mからは「末広町に行かない?」という提案があった。
末広町って秋葉原と上野の中間辺りだよね?

どうやら末広町に「3331 Arts Chiyoda」というアートの複合施設があるとのこと。 
そしてこの施設、元は練成中学校という学校をリノベーションして造られているというから、興味深い!
さすがは情報収集能力に長けた友人Mだよね。
とは言っても、オープンは2010年とのことなので、SNAKEPIPEが疎いのかな。(笑)

末広町で降りて、ほんの数分で「3331Arts Chiyoda」に到着する。
まるで自分の足で歩いたように書いているけど、方向感覚に優れた友人Mのおかげで、すんなり着いたんだよね。(笑)
友人Mと一緒の時には、付いていくだけのSNAKEPIPE。
一度歩いた場所を記憶したり、地図が読める能力は、本当に羨ましい限りだよ。

元校舎に行くまでの敷地は、公園になっていて大きな木々が影を作っている。
そこまで大きな公園ではないけれど、やっぱり緑があるのは良いね!
入り口はガラスの自動ドアになっていて、カフェやミュージアムショップがあった。
この空間だけ見ると、元学校という印象はない。

2Fのギャラリーに向かおうとした時、見つけたのがこれ。
手洗い場なんだよね!
SNAKEPIPEや友人Mが小学生や中学生だった頃も、こんな感じの手洗い場だった記憶が蘇る。
蛇口の首部分にネットに入った石鹸があったっけ?
確かあれはレモン石鹸と呼ばれていたような。
調べてみると、まだ売ってるんだね!
昭和の懐かしい思い出と思ったのに、現役でいらっしゃるとは。(笑)

友人Mが「3331 Arts Chiyoda」に来たかったのは、好きな作家の展覧会があったからだという。
大原舞は1986年東京生まれのアーティスト。
2010年に武蔵野美術大学造形学部油絵科を卒業しているという。
友人Mは大原舞の作品である人形を観たことがあり、本気で購入を検討していたらしい。
この展覧会が目的だったのに、結果はこの画像の通り「CLOSED」!
出かけた月曜日は、どうやら「Gallery OUT of PLACE」の定休日だったようで。
ギャラリー前に貼ってあるDMに近付いてみると、月・火・水が定休日だって!
週3日連続休廊とは、驚き桃の木山椒の木だよね。(意味不明)

次に目指したのはKYOTO Design Lab 東京ギャラリーで開催されている「造形遺産」というタイトルの展覧会。
この企画は京都工芸繊維大学が主催しているとのこと。
国立大学だという京都工芸繊維大学、とても気になるよね。
建築やデザイン以外に、生物学や情報工学などの学部があり、大学院では繊維学について学ぶことができるらしい。
「実在する使うことも捨てることもできなくなった道路やダム、高架線などの構造物を造形遺産と呼び、それらを再生する道を提案します」
会場前まで行ってみると、ここも休み…。
一体どんなアイデアが提示されていたのか。
友人Mとがっかりしてしまう。

その隣のGallery KIDO Pressで開催されているのはJohn Currin(ジョン・カリン)の版画展だった。
ジョン・カリンは1962年生まれのニューヨークを拠点に活動している画家だという。
美術手帖の解説によると「古典的な絵画特有の技法を用いて、現代社会で論争を招くような性的タブーなイメージを取り入れた肖像画を描き、美しさとグロテクスの完璧な均衡を探求するアメリカを代表する画家のひとり」であるという。
これは楽しみ!
と思ったのも束の間、やっぱり休廊だったんだよね。
ここも月・火はやってないんだ。
月曜日に来たのが間違いだったね、と言いながら廊下を進む。

今回やっと展覧会を鑑賞できることになったのが「AKIBA TAMABI21」で開催されていた「できるだけ感情のないように(あるけど)」だった。
「アキバタマビ」の意味も分からず鑑賞したけれど、帰宅後調べることにした。
このギャラリーは多摩美術大学が運営する、若い芸術家たちのための作品発表の場だという。
原則40歳未満の多摩美術大学卒業生が企画代表者となり、作家による自己プロデュースを基本としたグループ展を年間8回開催するギャラリーとのこと。
秋葉原が近いから名前に付けたんだろうね。
作品を発表するのは多摩美関係者ではなくても良いみたい。
若手アーティスト支援が目的だという。

中学校の机と椅子をそのまま利用した展示がされていた。
懐かしかったので、友人Mと一緒に椅子に座ってみる。
とても座り心地が良い。(笑)
子供の頃は、こんな机で授業受けてたんだね。
かつて教室だった壁や、机の上に作品が展示されている。
それぞれのアーティストについて調べてみようか。

落花生をモチーフに版画作品を展示しているのは、安齋歩見。
1986年、福島県いわき市生まれだって。
落花生だけに、てっきり千葉県出身だと思ったのにね?(笑)
2009年、女子美術大学芸術学部絵画学科洋画専攻版画コースを卒業し、2014年、武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻版画コースも修了しているとは!
2つも美大に通っているんだね。
今回展示されていた「ピーナッツ戦争」というシリーズは、シルクスクリーン写真製版で制作されているという。
浮世絵のように、複数枚を組み合わせて一つの作品が完成しているものもあったよ。
黒が強い作品は観ていて、とても落ち着いたよ!

大坂秩加は1984年東京生まれのアーティスト。
2009年、東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻を卒業し、2011年には東京藝術大学大学院美術研究科も修了しているというから、アート界のエリートってことだね。
版画、油彩、水彩など技法にこだわらずに描いているらしい。
今回の展覧会では、紙のままの作品が椅子の上に無造作に置かれていたため、湾曲していて見づらかったのが残念!
HPで他の作品を観ると、非常に面白いんだよね。
ブラックユーモアを含んだ独特の視点と、世界観を持っているアーティストみたい。
他の作品も観てみたいと思った。

結局観られたのは「AKIBA TAMABI21」の展覧会だけになってしまった。
せっかく来たのに、がっかりだね、と言いながら1Fのミュージアムショップに向かう。
3331 CUBE shop&galleryを物色していると、ふと目に留まったのは映像作品だった。
冠木佐和子というアニメーターの作品は、不思議な魅力を持っていて、その場から動けなくなるほど。
友人Mも「面白い!」と大絶賛している。
アニメ大国の日本の中でも、冠木佐和子の世界は珍しい部類に入るんじゃないかな。
載せて良いのか迷いながらも、YouTubeにアップされている菅原信介「MASTER BLASTER」のミュージックビデオを紹介させて頂こう。
アニメーションを担当しているのが冠木佐和子なんだよね。

好き嫌いが分かれるタイプの作品かもしれないね?
冠木佐和子の経歴を調べてみると、多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業後、アダルトビデオ制作会社に就職をしているんだよね。
そこを退職してから、再び多摩美術大学大学院に通い、修了しているという。
どうしてアダルトビデオの世界に入ったのか、不思議!
彼女自身の受け答えも変わっているので、インタビュー記事もお勧めだよ。(笑) 
こういう日本人が増えると面白い国になりそうだけどね?

今回は「鑑賞できなかった展覧会」を特集する、という今までにはなかったスタイルで書いてみたよ。
鑑賞はできなかったけれど、アーティストについて調べて、作品を検索することで新しい知識が増えたことは嬉しいね!
今後の教訓としては、展覧会の開廊(もしくは閉廊)日時を調べてから出かける、ということかな。(笑)

塩田千春展:魂がふるえる 鑑賞

20190915 top
【どんよりした空模様がよく分かる一枚】

SNAKEPIPE WROTE:

森美術館で開催されている「塩田千春展:魂がふるえる」については、長年来の友人Mから「とても良かったので行ったほうが良いよ」とお勧めされていた展覧会である。
行ってみよう、と計画していた日には、令和元年台風15号(アジア名:Faxai/ファクサイ) が関東に上陸したのである。
過去最強クラスの強い勢力を持った台風の影響で、現在でも千葉県内では復旧作業が行われているほど。
ROCKHURRAH RECORDSは、幸いにして明け方の強風を感じる程度だったため、六本木行きを決行!(大げさ)
電車も少し遅れながらではあったものの、支障をきたすことなく六本木に到着したのである。
今回のトップ画像は、あえて空が映っているものにしてみたよ。
まだちょっと怪しい雲が見えるよね。

台風の影響で、展覧会場はガラガラに空いているだろうと予想していたけれど、通常より少し少ないくらい。
例えば観光客は近くに宿泊しているだろうから、あまり天候に左右されることがないのかもね?

最初に森美術館作成のPR動画を載せておこうかな。

塩田千春という名前を今まで聞いたことがないSNAKEPIPE。
経歴について調べてみたよ。

1972年 大阪府岸和田市生まれ
?年 大阪府立港南造形高等学校卒業
?年 京都精華大学洋画科卒業
1993年 オーストラリア国立大学(ANU)キャンベラスクールオブアートに交換留学生として留学
1996年 ハンブルク美術大学(HfbK)に入学
1997年から1999年 ブラウンシュバイク美術大学(HBK)にてマリーナ・アブラモヴィッチに師事
1999年から2003年 ベルリン芸術大学(UDK)にてレベッカ・ホーンに師事
2008年 平成19年度 芸術選奨新人賞、平成19年度 咲くやこの花賞 美術部門受賞
2015年 第56回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展で日本代表に選出される
2010年度~ 京都精華大学客員教授

現在はベルリンを拠点に活動しているという。
それにしても一体いくつ大学に通ったんだろうね?
数えてみると5つだよ!
30歳近くまで大学生だったことになるのかな。
その間の生活費などはどうしていたのか、小さいことだけど気になってしまうよ。(笑)
それにしても、以前は確か「レベッカ・ホルン」と表記されていたように記憶してるけどね?
読み書きは変化することがあるから、まあいいか。

今回の展覧会についての説明文を森美術館のHPから載せてみよう。(一部抜粋)

ベルリンを拠点にグローバルな活躍をする塩田千春は、記憶、不安、夢、沈黙など、かたちの無いものを表現したパフォーマンスやインスタレーションで知られています。
副題の「魂がふるえる」には、言葉にならない感情によって震えている心の動きを伝えたいという作家の思いが込められています。
「不在のなかの存在」を一貫して追究してきた塩田の集大成となる本展を通して、生きることの意味や人生の旅路、魂の機微を実感していただけることでしょう。

「不在のなかの存在」なんて哲学的だわ!
一体どんな作品なんだろう?
森美術館では一部の作品を除いて、ほとんど撮影が可能なんだよね。
クレジット表記のルールを守れば、ネットへのアップもOKとのこと。
良い美術館だよね!(笑)
それでは気になった作品の感想をまとめていこう。
通常は展覧会の順路通りに作品を載せることが多いけれど、今回はなるべく作品の制作年順にしてみようかな。
理由は後ほど明らかになるであろう。

オーストラリアで留学中だった1994年の作品である。
「絵になる夢を見た」という塩田が、アクリル絵の具をかぶり、初めて身体表現に挑んだという。
そもそも自分自身が絵になるという発想が変わってるよね。(笑)
そして選んだ絵の具の色が赤というのも、血みどろのスプラッター状態にしか見えないし。
奇をてらう、というよりも死にたい気持ちを表しているように感じるんだよね。
この時塩田は22歳。
病んでいるようにみえるなあ。

1997年、ハンブルク美術大学時代の作品である。
アクリル絵の具をかぶった次には、泥水に浸かるパフォーマンス!
塩田千春、体張ってるよねえ。
泥の中で、塩田千春は何を思ったんだろう。
そしてまたこの行為も「死」を連想させるよ。
死人になりきることで、次のステップに進んだんだろうなあ。

1997年、ブラウンシュバイク美術大学在学中のパフォーマンス。
4日間断食した後、行ったのが全裸で斜面に掘った洞窟によじ登り、転げ落ちてはまた登ることを繰り返す行為だったという。
カミュの「シーシュポスの神話」を思い出すなあ。

カミュはここで、人は皆いずれは死んで全ては水泡に帰す事を承知しているにも拘わらず、それでも生き続ける人間の姿を、そして人類全体の運命を描き出した(Wikipediaより)

またもや体を張って頑張る塩田千春。
内面の苦しみを体で表現した感じなのかな。
観ているほうまで苦しくなってしまうよ。

1999年のパフォーマンス。
自宅のバスルームで泥をかぶり、拭いきれない皮膚からの記憶を表現しているという。
ドイツに住み始めて3年が経過していたらしい。
皮膚からの記憶ってなんだろう。
日本人である存在を意味しているのか。
今まで生きてきた自分自身ということなのか。
はっきりは分からないけれど、今の自分をあまり好きではない状態だったように見えるよ。

泥と皮膚というのがテーマだったようで、上の作品と同年に制作されたインスタレーション。
体の不在を表すドレスは泥にまみれ、上部に設置されたシャワーでも皮膚の記憶を洗い流すことはできない、ということらしい。
ドレスは7mもあるとのこと。
目の前に泥まみれのドレスが出現したら、かなり迫力あるだろうな。
先日鑑賞したボルタンスキーにも、日を追うごとに電球が消えていくインスタレーションがあったように、時間経過を含んだ作品なんだろうね。 

黒や赤の糸を空間全体に張り巡らせたダイナミックなインスタレーションが、塩田千春の代名詞とのこと。
その片鱗が見えたのが1996年の「意識へ戻る」なのかもしれない。
使用されている材料は黒い毛糸、ガラス管、血。
血って一体何の血よ?
毛糸に血液入のガラス管を括り付けてるのかな。
心のモヤモヤした状態を表しているように見えるよ。
毛糸はこれからずっと使用していく材料になるんだね。

2010年のパフォーマンス。
ここでも塩田千春は、血を使ってるね。
血が連想させる家族や民族、国家、宗教などの境界を壁に喩え「その壁を超えることのできない人間の存在」を表現したという。
塩田千春の言葉をそのまま書いていると、「〜できない」という表現が多いことに気付く。
ここらへんがネガティブ思考というのか。
だからこそ表現できるとも言えるのかもしれないけど?
この作品の時、塩田38歳。
まだまだ全裸で頑張ってるよ!

この作品は、フィリップ・モリス.K.K.アート・アワード2002大賞受賞作とのこと。
糸がまるで繭のように人間を包み、人が眠っている姿は莊子の「胡蝶の夢」のように、夢と現実の間にいる世界を表しているという。
分かるような分からないような文章ですな!(笑)
ドイツで3年の間に9回引っ越しをし、自分の居場所を探していたという塩田。
安寧の場所は繭の中、と夢想したんだろうか。
そしてそんな状況になっても、日本に帰ろうとは思わなかったのか。
どうしてもドイツに留まる必要があったのかな。
作品から安心感は全く得られず、SNAKEPIPEは蜘蛛の糸を連想してしまった。
絡め取られて生贄になるイメージね。(笑)

燃えるような赤色の世界。
かなり大きなインスタレーションで、枠組みだけの船がいくつあっただろう。
この船は棺か、それとも魂の容れ物か。
そこから湧き出て上へ、上へと昇っていくのは、魂ではないのだろうか。
もしくは血管なのかも?
そんな想像をしながら会場を歩く。
どこを見ても赤が目に入る。
一体どれだけの毛糸が使用されているんだろう。
ここまで糸を張り巡らせるのは大変だったろうなあ。
言葉がなくても、見た瞬間「うわっ、すごい」と感じることができる。
これこそ現代アートだなあ!

次は黒の世界ね。
燃やされた(?)椅子やピアノに黒い糸が張り巡らされている。
これはイタリアのテキスタイルメーカーであるアルカンターラ社製の糸で、見た目がゴムっぽい感じだった。
赤が生なら、黒は死なのか。
かつてこの世の生を受けていた人たちの、想念が揺らめいているようだったよ。
なんとも言えない異様な雰囲気に圧倒される。
この作業に携わったスタッフの方は、悪夢にうなされたりしなかっただろうか?

古い木枠を並べたインスタレーション。
旧ベルリンで廃棄された木枠を使用したみたいね?
一つ一つに、それぞれの家の歴史があるんだよね。
塩田千春のインスタレーションは、コツコツと小さな作業を積み重ねていった結果、巨大な作品が完成しているパターンが多いみたい。
「個」が「群」になると、存在感が増して迫力が違うんだよね。
木枠の内側に入ってみると、閉塞感で息が詰まりそうだった。
多様な記憶の洪水に飲み込まれそうになったのかもしれないね。

最後の作品も「群」物ね。
これはROCKHURRAHが動画で撮影してくれたよ!

作家名/作品名:塩田千春《集積-目的地を求めて》この写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 – 非営利 – 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています
旅行かばんが赤い糸で吊るされている。
低い位置から徐々に高い位置へと連なっている。
バッグが揺れるんだよね。
まるで中に何か入っているみたい。
それは持ち主の記憶や念なのかもしれない。
まるであの世へ旅立つような印象を受けたよ。

塩田千春展はとても見応えがあった。
自分の存在とは何か、生きる目的を知るために苦しみ続けていた様子が表現されているように感じた。
作り続けながら、頭の中ではきっと様々な想いが巡っていただろうな。
かなり根気のいる作業を続けていて、努力家だなあとも思った。
こうした作品は、とても女性的に映るし、実際女性のアーティストが多いんじゃないかな。

2019年5月に鑑賞した東京都現代美術館の「百年の編み手たち〜ただいま/はじめまして」で鑑賞した、手塚愛子を思い出す。
手塚愛子もドイツ在住のようで、そんなところまで似ているとはね?
ドイツは住みやすいのかなあ。
移住を考えるか?(笑)

Sculptural Type 鑑賞

20190901 top
【毎度お馴染みの構図。ggg前を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

現在銀座グラフィックギャラリー(通称ggg)で開催されているのは、デンマークのデザイン会社であるKontrapunkt(コントラプンクト)による「Sculptural Type」展である。
タイポグラフィが大好物のROCKHURRAHは目ざとく展覧会を発見。
gggには2019年2月に「ポーラ・シェア:Serious Play」の鑑賞で訪れているので、約半年ぶりになるんだね。
ポーラ・シェアの展覧会も大満足だったことを思い出す。
今回展示されているコントラプンクトってどんな会社なんだろうね?

北欧デザイン、というフレーズはいつの頃から耳に馴染むようになったんだろう。
そしてそれは「色合いが美しく、センスの良い洗練されたデザイン」と同義語になっているんじゃないかな。
一言で言えば「オシャレ!」なデザインね。(笑)
インテリアや陶磁器、ファッションに至るまで、たくさんのメーカーが日本に進出している。
様々な場所で、北欧デザインを目にする機会が増えているよね!

コントラプンクトは英語だとcounterpoint、意味は「対位法」だという。
Wikipediaで調べると、音楽理論のひとつであり、複数の旋律を、それぞれの独立性を保ちつつ互いによく調和して重ね合わせる技法である、とのこと。 
多様な個性が一つのハーモニーを形作り、世界的に有名なデザイン会社になったということなんだろうね。
1985年の設立以来、政府機関、インフラ、NGO、文化団体から大企業に至るまで、多数のブランディングを手がけ、世界中のデザイン賞も多数受賞しているコントラプンクト。

私たちにとって、タイプ(書体)デザインは彫刻のように物語る一つの形であり、しかもそのストーリーはここで終わるのではありません

今回の展覧会の主旨を、コントラプンクトのデザインディレクターで代表取締役社長のボー・リネマン氏が一言でまとめている。
彫刻のような書体って、どんなことなんだろうね?

まだ暑い東京の夏、湿度も高く蒸した銀座をgggに向かうROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
実はこの日、映画を鑑賞した後でggg訪問、という順番になったんだよね。
鑑賞した映画については、次週感想をまとめる予定なので、お楽しみに!(笑)
前回のポーラ・シェアの時には道に迷ったSNAKEPIPEだったけれど、今回はすんなりと到着。
このギャラリーは過去にも撮影許可を確認したことがあるけれど、念の為、受付の女性に尋ねてみる。
オッケーとの返答だったので、バシバシ撮影させて頂こう!

今回の展示は、足元にあるフット・スイッチを踏むことにより、壁をスクリーンにしてフォントが現れる仕掛けがされていた。
フット・スイッチは5種類用意されていてフォントそのものを見せたり、使用例を映し出している。
コントラプンクトは、世界中からオファーを受けているようで、日本の企業のフォントも多数取り扱っているんだよね。

スポーツ・シューズで有名なアシックスタイガーのロゴも、コントラプンクトがデザインしていたとは!
丸みを帯びながらも、少しだけ縦長で、アルファベット同士が近く見えるフォント。
何気なく目にしていたので、じっくり見ていなかったことに気付く。
ロゴだけではなく、恐らくフォント全体をアシックス用に制作したんだろうね。
アシックスのHPをみると、商品名にも同じフォントが使用されているように見えたから。
それにしてもアシックスという社名が「Anima Sana in Corpore Sano(健全なる精神は健全なる身体にこそ宿るべし)」というラテン語から採用されていたという話を初めて知ったよ!

デンマークのレストラン「noma」のためにデザインされたタイプフェイス。 
これは英国の飲食業界誌が選ぶ『世界のベストレストラン50』で4年連続1位に輝いたレストランだという。
このフォントを制作するのに、かかった時間はたったの1週間だったというから驚いちゃうね。
短い時間でも有意義で価値のある仕事をした、とコントラプンクトのボー・リネマン氏が語っている記事を読んだよ。
手書きで有機的な形を作り、わざと不均等にして素朴さを出しているとのこと。
クライアントの個性やアピールポイントを、いかにフォントに表現するのか。
ものすごく重要な部分だろうね。

日本の化粧品ブランド資生堂が、2019年4月横浜みなとみらいに「資生堂グローバルイノベーションセンター」、通称S/PARKという美の複合体験施設をオープンさせたらしい。
「らしい」と書いたのは、SNAKEPIPEは全く知らなかったから!(笑)
2019年って今年のことじゃないの。
ものすごく最近の仕事ってことだったのね。
ここで使用されているフォントのデザインを請負ました、という紹介がされていたよ。
アルファベットを使用している国のデザイン会社は、漢字をどう処理するのか興味があったんだよね。
他の文字も見てみたいので、SNAKEPIPEも美の複合施設に行ったほうが良いかも。(笑)
コントラプンクトと関わるよりずっと前から使用されていた資生堂の「SHISEIDO」というロゴ・デザインの素晴らしさに、今更ながら気づいたよ。
「S」の文字が音符のように流れて斜めになったフォントは、大正時代に作成され、使用されているという。
ROCKHURRAH RECORDS憧れの1920年代はやっぱり良いね!(笑)
資生堂は、広告の世界でも中心的な存在になっている。
「美」を追求するメーカーは、やっぱりイメージ戦略ありき、なんだね。

「Danish」と名付けられたフォントが実にカッコ良かったんだよね!
アルファベットによって、次に続くフォントと「ひとつながり」に見えるような箇所もある。
右下に配置されている円形のデザイン、円形と直線のバランスが素晴らしいよね。
日本語だった場合には、直線部分を縦書きにしても面白いかもしれない。
デンマークのデザイン賞を受賞しているというのも納得!
こんなフォントを日常的に目にしているなんて羨ましい限り。(笑)
恐らく「デザイン・アワード受賞」の様子を表しているシーンだと思うんだけど、特別な説明がなかったので想像だよ。
立体的な「D」が金ピカに輝き、中央でぐるぐると回転する動画だったんだけど、静止画で失礼します。(笑)
バックには印象的な斜めに走った文字が並んでいるよね。
この斜めの雰囲気、ロシア構成主義っぽくてお気に入りだよ!

コントラプンクトは、文字を動かすという遊びも見せてくれた。
これは動画じゃないと伝わらないな。

東大阪市役所がコントラプンクトに依頼して作られたフォントの紹介ビデオなんだよね。 
今回の展覧会でも「HIGASHIOSAKA」として展示されていたよ。
隣の文字につながっていくタイプフェイスを、近畿大学と共同で開発したという。
動くことで、より一層面白さが増すよね!

展覧会でSNAKEPIPEが撮影した動画も載せておこうか。
まるで心臓の鼓動に合わせて、文字が胎動しているように見える。
文字が生きているっ!(笑)

フット・スイッチを踏むことで動きがでる、という展示方法もユニークだったし、TYPE(書体)の可能性について考えさせられる展覧会だった。
改めて周りにあるフォントを「まじまじ」と見てみたいと思っている。
日本にも「オシャレ!」で独創的なフォントがあるかもしれないよね!(笑)