好き好きアーツ!#08 鳥飼否宇–痙攣的–


【現在でも充分斬新的!なCAN。一番右がダモ鈴木。クリックで音が鳴ります。】

SNAKEPIPE WROTE:

以前にも「お気に入りの作家」として記事にしたことがある鳥飼否宇
すべてを読破したわけではないけれど、中でも一番のお気に入りの作品「痙攣的 モンド氏の逆説」を読み返し改めてその面白さを実感した次第である。
「痙攣的」は全部で5章から成る小説で、それぞれが独立した短編でありながらも最後には種明かしがある連作短編である。
ただ「痙攣的」は殺人事件を扱うミステリー小説であるにも関わらず、あまり一般的ではない音楽や芸術を主題に置いた日本唯一(?)の作品なのである。
今回はその「痙攣的」の中で使われているパロディについて書いてみたいと思う。

と言ってはみたものの、どうやら鳥飼否宇が詳しい音楽の分野はジャーマン・プログレッシブ・ロック。
クラウト(酢漬けのキャベツ)ロックとも言われているそうで。
このジャンルに関するパロディを多様しているため、この手の音楽について知らない人にとっては全然分からない話になってしまう。
かくゆうSNAKEPIPEもはっきりと自分で分かったのは1名のみ!(笑)
パロディなんだな、と分からなくても充分楽しめる小説である。
が、パロディだということが分かると更に面白さ倍増。
一粒で二度おいしい、になると思う。
ミステリーファンよりもジャーマンロックファンの人にお薦めの小説といえるのかもしれないね。
SNAKEPIPE一人ではとても追いつかないので、ROCKHURRAHにも協力してもらい解読(?)してみた。
「多分こうなんじゃないか」と予測して書いているので、これが正解なのかどうかは分からないけどね!(笑)

第1章 廃墟と青空(ファウスト
音楽に関連したミステリー。
これから先に何度も漢字を変えて出演する相田彰(あいだあきら)。
これはもうそのもの、間章(音楽評論家)の「もじり」だろう。

ロック雑誌を主宰していた宇部譲(うべゆずる)。
これはロックマガジンの編集長だった 阿木譲とドイツのバンド、ファウストの仕掛け人ウーヴェ・ネテルベックを足した感じか?
ウーヴェを宇部にしちゃうのってすごい!(笑)

宇部譲がメンバー募集して作ったロックバンドの名前が「鉄拳」。
これは前述したドイツのバンド、ファウストからのものか?
ドイツ語で「ファウスト」とは「げんこつ」を意味するとのこと。
なるほどね!(笑)

宇部譲に見出されてメジャーデヴューした「ファンク・ポテト」のメンバーの名前が京都ヨシミ(みやこよしみ)。
これは「じゃがたら」の江戸アケミのパロディか?

「鉄拳」のメンバー入村徹(いりむらとおる)。
これはファウストのメンバー、ハンス・ヨアヒム・イルムラーから来てるのか?

実在する伝説となったバンドについての解説などがさらっと書いてあり、それも面白い。
ミステリーとしても「ほほう」と感心する成り行きになっていて、音楽とミステリーの融合がいい感じだ。

第2章 闇の舞踏会(CAN
現代アートに関連したミステリー。
またもや間章(音楽評論家)をもじった会田昶(あいだあきら)が登場。

キュレーターとして登場する檐木貫(ひさしぎかん)。
もう名前が「かん」なので、すでにCANをもじってる!

舞踏で登場するのは掘賀舟海(ほるがしゅうかい)。
これはCANのメンバーだったホルガー・シューカイからの引用だね。
まんまだし!(笑)

「ミサ」と呼ばれるパフォーマンスを行うのはウム鈴木(うむすずき)。
こちらもCANのメンバーであったダモ鈴木をもじったようで。
これもかなり大笑いのパロディだ。(笑)

「十牛図」を使ったパフォーマンスをするのが現代アート界のドン、伴鰤人(ばんぶりと)。
これはアメリカのミュージシャン、ドン・ヴァン・ヴリートことキャプテン・ビーフハートか!
だから牛だし、ドンなのね。(笑)

土方巽から始まる暗黒舞踏の歴史や現代アートにおける「盗用と盗作」の違いについて書いてあり、これらもなかなか興味深い。
パフォーマンスもデジタルアートも本当にありそうな作品だった。
一番笑わせてくれたのは「レディメイド」かな。傑作!
SNAKEPIPE個人的には「痙攣的」の中で一番好きな短編がこれ。

第3章 神の鞭(アモン・デュールII
イリュージョンアートに関連したミステリー。
気象学者として登場する英田暁(あいだあきら)。
この漢字で「あいだ」って読むのかな?

イリュージョニストとして栗須賀零流(くりすかれいる)という名前がある。
これはアモン・デュールIIのメンバー、クリス・カレールでは?
クリス、と区切らないで「くりすか」を苗字にしたところが秀逸!(笑)

アースワークやランドアートといった壮大なスケール感を持つ現代アートについても簡単に説明されている。
実際に目にすることがなく航空写真での作品群が多いため、抽選で1名だけご招待というこの小説の企画は本当にありそうな話だと思った。
SNAKEPIPEは怖いから、あまりこのイリュージョンアートは見たくないなあ。(笑)

第4章 電子美学(ノイ!
この章でいきなり話はイカになる。
イカを研究する研究所が舞台のミステリー。
綾鹿イカ学研究所の副所長としてまたもや愛田亮(あいだあきら)。
ここまでこの名前にこだわるのってすごい!
それにしても4回も漢字を変えながらも登場してくるので、余程気に入ってるんだろうね。

綾鹿イカ学研究所員に老田美香(ろうたみか)。
これはクラフトワーク、ノイ!のメンバーだったミヒャエル・ローターか。
ローターが老田。(笑)

老田美香と同じく研究員の砂井田(すないだ)。
これもクラフトワークのフローリアン・シュナイダーから来てるのか。
シュナイダーを「すないだ」ね。

研究所所長の名前がクラウス殿下。
クラフトワーク、ノイ!のメンバー、クラウス・ディンガーからの命名ね。
これ、やっぱり最高!(大笑い)

研究所で使われているシステムの名前が「ハローガロ」。
これはノイ!の曲名のようね。

突然話が「イカ」になってしまい、あまりの展開の唐突さに付いて行かれない読者が続出じゃないかと思う。
ただし、上にも書いたように同じ名前が出てくるため「ああ、やっぱり続いてるんだ」と確認ができるけど。
ここからの章はミステリーの本質に迫ってしまうので、あまり詳しく語るのはやめる。
SNAKEPIPEはイカ皮スーツは着たくないな。
そんな「いかがわしい」もの!(プッ)

第5章 人間解体(クラフトワーク
この章は第4章からの続きなので、イカの話である。
イカの知能指数の高さを示すお話が綴られていて、確かにイカってちょっと不思議な生物だよね。
先日も巨大なダイオウホウズキイカが発見された、なんてニュースもあったし。
謎が多い生物としてみるとミステリーにはもってこい、かな?(笑)

こんな感じで「痙攣的」はミステリーの領域だけにとどまらず、音楽やアートに興味がある鳥飼否宇の好きなモノ満載の小説でとっても面白いのである。
この作品以外にも横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞した「中空」や「非在」などに登場する鳶さんとカメラマンの猫田のシリーズも面白い。
鳶さんのキャラクターは鳥飼否宇の分身かな、と勝手に想像するSNAKEPIPE。
ひょうきんでちょっととぼけたインテリで、いい味出してるんだよね。(笑)
今回特集した「痙攣的」のような「~的」シリーズも好き。
「爆発的」と「官能的」は未読なので、早く手に入れないと!(笑)

鳥飼否宇は九州大学理学部生物学科卒業、というインテリ!
ジャーマンロックのような難解な音楽を好むかと思えば、「昆虫探偵」のような作品を書く生物好きでもあるとても不思議な人だ。
現在は奄美大島在住で奄美野鳥の会の会長やってるらしい。
アドレスに「シナプス」が入ってるところが「らしい」よね。(笑)
なんと「奄美大島ツアーで夜の森の特別ガイド」もやってるみたいだから、奄美大島に行って是非とも鳥飼ガイドの説明を聞いてみたいね!

大人社会科見学—上野動物園—

【巣作りをしていた愛らしいプレーリードック達】

SNAKEPIPE WROTE:

10月10日、久しぶりに社会科見学と称して上野動物園に行ってきた。
大人社会科見学は産業科学館に行って以来のことなので約1年ぶりだ。
そして前回動物園に行ったのがいつのことなのか思い出せないほど昔のため、ROCKHURRAHもSNAKEPIPEも子供みたいにワクワクしていた。
ROCKHURRAHは「お洒落なチンピラ」といった風情、SNAKEPIPEは「ウエスタンショップの店員」のような服装でとても動物園向きではない。(笑)
ライブに行くのと同じくらい気合を入れて、上野へ。

当日は午前中が曇り、少し雨もパラついていた。
せっかくお弁当まで持って行ったのに、ちょっと残念・・・と思っていたら午後にはすっきり晴れて社会科見学日和になっていた。
やっぱり日頃の行いが良いせいか?(笑)

上野にはたまに行くけれど、大抵向かうのはアメ横方面。
公園側を歩くのは本当に久しぶり。
動物園までの道のりを地図で確認してしまった。
傍から見たらすっかり「おのぼりさん」みたい。(笑)
ゆるゆる歩いていると無事に動物園へ到着。
えっ、入場料大人600円!二人で1200円!
すごいリーズナブルだなあ!
さすが歴史のある動物園だね、などと言いながら園内マップを確認。
特にどの動物と目的がある社会化見学ではないので、一通り歩くことにする。

まずはフクロウがお出迎え。
真っ白いフクロウってかわいい!(笑)
ワシやタカの壮観なこと!
あんなに狭い場所じゃ羽を充分に広げることもできないだろうなあ。
などと感想を言い合いながら歩いていくと
前はここにパンダがいた場所、に出た。
そうか、今は上野にパンダがいないんだね。
代わりに、という感じでレッサーパンダがスター扱いされているようだったけれど、なぜか姿を確認することができなかった。
ライオンもメスしかいなかったようで、オスは見当たらない。
動物園って「つがい」でいるわけじゃないんだ?
一匹だけじゃちょっとかわいそうな気がするな。

結構な距離を歩き、まずは前半戦とでも言うべき東園を歩き終える。
ゾウやゴリラ、トラといった「いかにも動物園に来た」と思える動物は、その大きさに圧倒され怖かった。
子供の頃は「わあ、すごい」だった感想が「怖い」に変化している。
いつの間にかいろんな想像してるんだろうね。
「こっちに緑モヒカンの鳥がいる!」
「こっちはグラムロックか越地吹雪みたい!」
などと言い合い、自然の造形や色彩に目を奪われる。
東園の中で一番SNAKEPIPEが反応した動物が上の写真「プレーリードック」だ。
テレビで見たことはあるけれど、実際に見るとそのなんとも愛くるしい姿に思わずにっこりしてしまうほど!(笑)
とってもかわいかった。

さてそろそろお腹も空いてきたしお弁当の時間にするか、という時に上野動物園はもってこいだ。
そこかしこにベンチや水飲み場、手を洗う場所、トイレなどが完備されている。
場所を探してウロウロする、という時間のロスが全くない。
テーブルと椅子がある休憩所も多く、見渡すとほとんど皆さんお弁当持参。
飲み物だけ買ってのんびりしている様子。
これまた非常にリーズナブル。(笑)
撮影禁止や持込禁止、など「禁止事項」が多い公共施設が多い中、上野動物園の「ゆるさ」は今時珍しいほど素晴らしい!
とても気持ちが良かった。

お腹も満足して、続いては「いそっぷ橋」を渡り西園に向かう。
西園の半分は不忍池が占領しているためやや「こじんまり」している。
こちらの目玉は恐らく珍獣のオカピやコビトカバ、キリンなんだろうな。
「両生は虫類館」にはワニやヘビ、イグアナ、カエルなどの人によっては身の毛もよだつほど大嫌い!というような動物がいっぱいなのにもかかわらず、意外なほど大人気!
押せ押せの人だかりにびっくりしてしまう。
世界最大にして凶暴なイリエワニがいる水槽が一番人気で、なんとワニの顔(というか頭)が水槽にぴったり貼り付いている!
寝ていたのかもしれないが、70~80cmの巨大なワニ頭をどアップで目にする機会はあまりないと思う。
あまりの大きさと迫力に腰を抜かす人が続出!(大げさ)

ROCKHURRAHとSNAKEPIPEが反応したのは「小獣館」という小さい動物を展示している場所。
ネズミやリスのいろんな種類が見られる場所で、とってもかわいい動物がいっぱいだった。
いい年した大人が「かわいい~!」と「うっとり」しちゃう光景はやや不気味だけれど、本当にかわいいんだから仕方ない。(笑)
西園では「小獣館」がお薦め!

特別なスター動物不在だったせいか、もしかしたら入場者数も少なかったのかもしれないが、人混みをなるべく避けたいと思っているROCKHURRAHとSNAKEPIPには都合が良かった。
そしてパンダがいなくても充分楽しかった。
あちこち見ていると、結構な距離を歩いていたと思う。
ちっ、万歩計でも買って試してみれば良かったな。(笑)
童心に返ることもできて、健康にもなる一石二鳥!
また大人社会科見学したいと思う。

時に忘れられた人々【05】エレポップ

【テコの原理を応用してSNAKEPIPEが作成したテクノ画像(ウソ)】

ROCKHURRAH WROTE:

今どきじゃない人々に毎回焦点を当てる不定期連載「時に忘れられた人々」シリーズも五回目を迎える事となった。好評なのか不評なのか全然わからないけど、ROCKHURRAH RECORDSの基本ポリシーがそこにあるので、これからも続けてゆきたい。
ちなみに前にポジパン特集書いた後はウチのポジパン在庫がゴソッと売れてウハウハ状態(死語?)だったものよ。
さて、今回取り上げる旬じゃない者どもはテクノポップ、あるいはエレポップと呼ばれた音楽を操るバンド達だ。1970年代後半に始まったニュー・ウェイブの中の1ジャンルとして発生した音楽なんだが、要するにこの時代にはまだ目新しかったシンセサイザーを音作りの中心に据えたバンドがウヨウヨ出てきたのが70年代後半というわけだ。それまでにもプログレッシブ・ロックやユーロ・ロックと一般的に呼ばれてるジャンル、特にジャーマン・ロックなどはいち早く電子的な音楽をロックの世界に取り入れたんだが、誰でも知る親しみやすい音楽とは言い難かった。それをポピュラーの世界に持ち込んだのがエレポップというわけ。テクノポップもエレポップも括りとしては大体同じようなものだが、微妙なニュアンスの違いもあるにはあるので、その辺は言葉と言うより感覚でわかってもらうしかない。

まあポジパンの時にも書いたが発生や歴史といった部分まで書くと長くなり過ぎるから自分の知ってる範囲で順不同、敬称略でテキトウに書いてゆこう。

<註:リンク文字は全て音が鳴ります>

Kraftwerk

誰でも知ってる元祖といえばドイツの巨匠、このクラフトワークだろうか。1970年から活動していて最初は電子楽器によるインプロビゼーション的な割と実験的作風だったが70年代半ばから非人間的ヴォイスと極端に無機的な音作りを会得してから、この手の音楽としては奇跡的とも言えるヒットを放った。真っ赤なシャツにネクタイ、そして耳の横の鬢をスパッと切り落としたテクノ刈りなど音楽以外にもさまざまな分野に影響を与えたところが他のジャーマン・ロックよりも目新しかった部分かな。江口寿史の漫画でもパロディ化されたりしたなあ。

Bill Nelson

日本ではあまり一般的ではないが、元々は74年にデビューしたビー・バップ・デラックスを率いていた人。デビュー当時はグラム・ロック寄りのハード・ロックといった路線だったが40〜50年代の人が考えたB級SF的近未来、という個人的趣味を大々的に取り入れたコンセプトの音楽を発表し続けた功績は大きい。ビー・バップ・デラックス解散後にソロとなってYMOのツアーにもギタリストとして参加したり驚異の一発屋フロック・オブ・シーガルズを見出したり日本人の奥さんを娶ったり多方面で活躍したが、最も好きだったのは79年のビル・ネルソンズ・レッド・ノイズ時期のエレクトリック・パンクな頃だ。映像はオフィシャルなものではないがビル・ネルソンという人が目指したものが一目瞭然でわかる構成となっていてヘタな文章よりは説得力があるもの。

Yellow Magic Orchestra

テクノと言えば真っ先に誰もが思い浮かべるのが外国のどのバンドよりもこのYMOだろう。クラフトワークの持つコンセプトを東洋に置き換えてさらにわかりやすく大ヒットさせたという功績は大きい。欧米と違いヒットチャートも音楽番組も歌謡曲中心、ロック出身者にとっては不利だった当時の日本でほとんど歌なしの「テクノポリス」や「ライディーン」がヒットした現象もたぶん前代未聞。

Ultravox

パンク以前から活動していたバンドでビル・ネルソンなどと同様、英国ニュー・ウェイブの元祖的存在がウルトラヴォックスだろう。テクノポップとかエレポップという分野で語るのは少しお門違いかも知れないくらいにエレクトロニクスは多用してないんだが、ちょっとだけ使うのがいいのよん。いかに効果的かは聴いてみるとよくわかる。ジョン・フォックス在籍時の初期は荒々しく性急な音楽性とヨーロッパ的耽美世界がクロスオーバーした音楽で(何じゃこの陳腐な表現は?)まさにこれこそ先駆的、とマニア受けするバンドだったがエラが張ったオバチャン顔のジョン・フォックス(♂)の風貌のせいか一般的な人気にはならなかった。その後のミッジ・ユーロの時期に大ヒットして日本でもサントリーCMなどであまねく知られる存在となった。当然、個人的にはジョン・フォックス時代が好き。このウルトラヴォックスの手法(荒々しい歌と演奏+ちょっとだけキーボード)をうまく進化させたのが少し後に登場したXTCやこの次に挙げる人だと言える。

Tubeway Army

このバンド名で書くよりもゲイリー・ニューマンと言った方がピンとくるか。ニュー・ウェイブ初期にウルトラヴォックスの音楽性を換骨奪胎した幻想アンドロイドが彼だ。タカラの変身サイボーグやSF映画のアンドロイドを思わせる風貌とウルトラヴォックスよりはエレクトロニクスをやや駆使した音楽が受けて数曲大ヒットしたがその後は失速。ROCKHURRAHブログでも前に登場していて(「軟弱ロックにも栄光あれ」)同じような事書いてるな。

Plastics

YMOを元祖とする日本のテクノポップは当時のニュー・ウェイブ・カルチャーの中で浸透してゆき、日本独自の発展をした。音楽一筋の生き方をしてたわけではないカタカナ職業(またしても死語か?)の人たちが集まって遊びのように始めたこのプラスティックスも「こんなのありなんだ」という世界で非常に面白かった。ヴィジュアルも音楽も30年後の今でも通用するクオリティだね。というか音楽もファッションも個性も三流だと思える現代日本のポップス界と比べるのも意味のない行為か。

ヒカシュー

21世紀の今でも彼らの代表作「20世紀の終わりに」を聴いてノリノリのROCKHURRAH一家だ。ヒカシューの場合はテクノポップという分野に演劇、そして奇妙で気色悪いものを取り入れたのが新しいと思える。石井輝男監督の大傑作「江戸川乱歩の恐怖奇形人間」の主役と似た巻上公一のインパクトある顔立ち、そして「ぴろぴろ」に「プヨプヨ」だもんな。一般人にゃとても真似出来ません。

Der Plan

最初の方でも書いたがドイツは80年代には日本と並ぶテクノ先進国だった。本家クラフトワークや脱退組によるノイ!、ラ・デュッセルドルフなどという先例もあったが70年代後半から俗に言うノイエ・ドイッチェ・ヴェレ(ドイツのニュー・ウェイブ)のバンド達が次々と意欲的に活動していたからだ。ただし伝統と言うべきか電子楽器を使ってもどちらかと言うと実験的なバンドが多かった分野なわけだが、その中にあってこのデア・プランは日本のテクノにも通じるわかりやすいエレクトロニクスで人気があった。代表作「グミツイスト」などは歌詞もすばらしくチープなテクノ・クラシックスの名曲。今回は誰でも知ってるようなバンド達が多かったから敢えてここに書いてみた。

Depeche Mode
テクノという自信ありげな響きと違いエレポップというのはいかにも頼りなげで取って付けたかのようなネーミングの軟弱感がある。その辺の微妙な色彩を体現した代表選手と言えばこのデペッシュ・モード(初期)が真打ちだろう。あどけない顔立ちにチェックシャツ、そして吹けば飛ぶようなチープなエレクトロニクスの単音、何と親しみやすいメロディだろうか。特別な才能を持ったアーティストというよりは隣の弟分が作ったハンドメイドの音楽という感じが初期デペッシュ・モードの良さだった。しかしその後には随分と力をつけて独自の路線を見出したようで、逆に素人臭さが抜けた彼らにあまり興味を持てなくなった。あのチェックシャツはどこに行ったんでしょうか?

???

長くなったし書いてる今は午前3時。最後はこの人で締め括ろう。この一曲のみなんだがちゃんとリッパに「テクノ」と明言しているからこれでいいのだ。作曲は「東京ワッショイ」で有名な遠藤賢司、バックを東京おとぼけキャッツが務めているのもマニアックだな。「テクノポップやエレポップでももっと有名なバンドあるじゃないか」などという意見もあるかも知れないが思いついた順なので、時間切れになってしまい申し訳ない。まとめの言葉も何もないけど、ではみなさんおやすみなさい。

MAGMA’09 ~PUNKS NOT DEAD!

【MAGMA’09のポスター】

SNAKEPIPE WROTE:

ある日の帰宅途中、突然「EXPLOITEDが来日、なんてことになったら楽しいのにな」と思った。
帰ってからネットでEXPLOITEDのサイトを検索。
なんと1ページ目に「前回からかなりの年月が経っているけれど、今年は日本ツアーやります。詳しくはこちら」なんて記事がっ!
震える手でクリックしてみると9月の項目に「JAPAN」の文字を発見!!!
うそー!たまたま頭に浮かんだだけなのに、本当に来日予定があったとは!
ということで早速チケットを購入。
今回はMAGMAというロックフェスティバルの企画でEXPLOITED以外にも、信じられないことにDischargeGBHも同じステージに立つ、という80年代ハードコア御三家大集合、夢のような豪華版!
チケット6300円って、こんなにすごいメンツなのに安いよ!
この夏は全然ライブに行ってなかったし、音楽系の雑誌なども手にしていなかったので、全く知らなかった情報!
「SNAKEPIPEのゴーストがささやいた」としか思えない勘の世界。(まだ攻殻機動隊入ってる)
いやあ、チケット買えて良かったなあ!
以前「電気のことなら…」というブログの中で
「DISCHARGEとGBHが来日し成田空港で目撃する、という夢を見てしまったSNAKEPIPE。EXPLOITEDもまだライブを世界中でやってるのも以前に確認。うーん。間近に見てみたいものだ。」
などと書いているではないか!
約2年半前の記事だけど、本当に実現するとはね!(笑)
ライブに一緒に行く仲間にも声をかけ、当日は横浜で待ち合わせることに。

今回のMAGMAは横浜ベイホールでの開催とのことなので、今まで一度も行ったことがないライブハウスのため地図まで用意して出かける。
一番近い駅が「みなとみらい線」の元町・中華街駅。
そこから歩いて12分と書いてあるけど、目の前は海という山下埠頭近くの場所である。
きっと周りは倉庫街、殺風景で食べ物屋さんなんかないだろうな。(笑)
14時開場、14時半開演で出演バンド数は9つ。
お腹空きそう…。

いつの間にかシルバーウィークなんて名前が付いてた9月19日から始まった5連休。
その丁度中日にあたる21日(月)、気温低めでレザー日和!
ハードコアのライブの正装といえる鋲ジャン、ゲッタグリップ着用、化粧も80年代パンクを意識してミチロウ風のかなり派手目にする。
いやー、あんな化粧のSNAKEPIPEとよくも一緒に歩いてくれたね、ROCKHURRAH!(笑)
「普通に道歩いてれば、相手がどくよ」
「15歳若く見える」
などと誉められながら(?)いざ横浜へ。

横浜は開港150周年のイベントもやっていたし、普通の時でさえ人が多いであろう中華街近くで待ち合わせをしたこと自体が失敗だったのかも。
車で到着した友人T君夫妻は駐車場が見つからずに四苦八苦。
結局漫画家T氏を含む5人で車に同乗し、駐車場と食べ物屋さんを探すことに。
どこも渋滞、お店があっても行列。
えっ、バーミヤンとか餃子の王将ですら行列してる!
きっと中華街で食べたかったけど、行列してるから仕方なくこっちに来たって感じね。
SNAKEPIPEご一行様も「横浜だから中華がいいよね」なんて言ってたのに、結局落ち着いた場所はお寿司屋さんだったし。(笑)
そこで少しのんびりし過ぎ、更にひどくなっていた渋滞を予想していなかったため「まさかあんなこと」になろうとは!

ま、簡単に言っちゃうと遅刻しちゃったんですな!
約1時間近く遅れて会場入り。
ライブハウスで初めてだけど、入り口でボディチェックされた。
前を行くROCKHURRAHはよく外国映画なんかで観るような手をあげさせられ、上から下まで「なでられ」、お尻から腿にかけても「さすられ」てる!
おお、武器持ってないかとチェックされてるんだ!
え、まさかSNAKEPIPEもあんなことされるの?とビクビクしてたら女性はバッグの中を見せるだけだった。
良かった、ホッ。(笑)

中に入るとどうやら丁度どのバンドかが終わったところだったらしく、通路や物販、ドリンクコーナーなどに人があふれている。
一体どのバンドが演奏終了したんだろう???
分からないまま次のバンドを待つことに。

少し時間があるのでここで恒例の観客チェック!(笑)
いやーさすがにハードコアの祭典、モヒカン率高いな!
色も様々、レインボー、ショッキングピンクなどカラフルで見事。
革ジャン率も同時に高く、みなさん気合充分。
きっと連休だったから全国からハードコア好きが集まったのかも?

そしてライブがスタート。
出てきたのはEXTINCT GOVERNMENTだった。
実はこのバンド、前から友人T君より「80年代ハードコアの音でいい!」と評判を聞いていたので、とても楽しみにしていた。
間にあって良かった。(笑)
がっ、なんだか音響がヘン?
ほとんど迫力が感じられず、ヴォーカルもよく聞こえない。
今回の演奏では「とてもいい!」とは言えず、残念。
また違う機会に観てみたいな。

それにしても観客を見張るためのセキュリティとしてステージの左右に「阿吽像」のように構えているのがオー!ブラザー!(笑)
さすが横浜?
それともセキュリティもバンド側で指定していたとか?
真相は分からないけど、ボディチェックに引き続きかなりセキュリティの厳しさを感じる。

続いてはCOBRA。
COBRAは活動暦長いし、かつてオムニバスアルバム「ハードコア不法集会」や宝島のカセットブック「THE PUNX」で聴いていたようだけど、あまり覚えていない。
今回ライブを観るのも初めて。
ボーカルはまだYOSU-KOなのかな?と思いながら鑑賞。
元気いっぱいでノセ上手。
さすがだね!
COBRAからはすっかり音響は戻っていたので、やっぱりバンドの違いかな?

次はHARLEY’S WAR
実はほとんど知らないアメリカのバンド。
説明書きによると「NEW YORKハードコアの中心人物Harley Flanaganのソロプロジェクト」とのこと。
最初にセントバーナード犬のかぶりもので登場したので、コミックバンドかと勘違いしてしまったSNAKEPIPE。(笑)
観客の中に熱狂的な外国人のファンがいて、ものすごい盛り上がってた。

そしてラフィン・ノーズ
始まる前のセッティングの段階でシルエットで見えたのがサイコ刈りの人だったため、てっきりBattle Of Ninjamanzの登場かと思っていたら、その人がベレーだった…。
いつの間にあんな髪型になっていたんだろう?
どうやら去年の9月に観たのが最後のようなので、約1年ぶり!
そりゃ見かけも変わってるか。
と思いきや、ギタープレイに関してはほとんど変わってない!
大事なところでチョンボだし。ひどいね!

ついに登場、GBH!
うおーーー!本物だーーー!(笑)
例えば全盛期のGBHの映像を観てから現在の姿と比較してしまうと、当然ながら年をとったなと思うけれど、声はおんなじ!あの声だ!(笑)
演奏の迫力も素晴らしい!
さすがに世界で活躍してる外タレ(死語)は違うね。
生「SICK BOY」が聴けて大感激!(笑)

続いてはDischarge。
初めに出てきたのが「次はDischargeの登場です。皆様拍手を!」などという、コミカルな司会者なのかと思ってたら、なんとそれがヴォーカルだった。(笑)
全然調べずに来ちゃったけど、ヴォーカル変わってたんだね。
初めの印象とは打って変わって、歌い出したら(叫び出したら)すごい迫力!
あれだけの体格があると、声の出方が全然違う。
力強いパフォーマンスに圧倒される。
生「NEVER AGAIN」が聴けて大感激!(笑)

Discharge演奏中に赤い髪の人がステージ裏や横を歩き回ってるのが見える。
あれってもしやEXPLOITEDのヴォーカルでは?
何故かデジタル一眼を構え、ライブ写真を撮るカメラマンさながらにDischargeを撮影しまくり!
SNAKEPIPEは「日本滞在中にカメラを購入して、試し撮りかな」と思ったけど?
EXPLOITEDがDischargeを撮影っておかし過ぎだよ!
その撮影してる姿にばかり目がいってしまい、Dischargeに集中できなくなってしまった。(笑)

そしてついにラスト、EXPLOITEDの登場だ。
それまではMAGMAだった垂れ幕(というのか?)がEXPLOITEDにチェンジ。
そしてこの時点で遅刻した1時間の間にHAT TRICKERSとBATTLE OF NINJAMANZが演奏してたんだな、と気付く。
どっちも観たかったのに、残念!
ヴォーカル、Wattie登場!
トレードマークともいえる、赤いモヒカンに戻ってる!
EXPLOITEDはこのWattieを残して、オリジナルのメンバーは残っていないのかな?
とは言ってもWattieさえいればいいのかも。(笑)
10代の頃から聴いてたEXPLOITED。
横向きモヒカンでマイクを手に叫んでるあの有名なジャケットの、あのWattieが目の前にいるよ!
実物を観られただけでも大感激!
もちろん演奏のすごさも、ヴォーカルの重たい迫力も脳に、目に焼き付いている。
生「DEAD CITIES」が聴けて更に大感激!(笑)

アンコールに応えて「SEX AND VIOLENCE」を演奏する前に、ドラムの方が
「誰かSEX AND VIOLENCE歌える人、ステージに上がってよ!」
と客席に呼びかけてたけれど、ここは日本だよ!
英語でいきなり言われてもほとんどの人が理解できないからね。
それでも一人上がってマイク持たされてたけど。(笑)
Wattieも、観客が「Wattie~!」と声援を送る度に「What?」と聞き返してたな。
名前呼んでるだけなんだけどね。(笑)
そしてラストは「PUNKS NOT DEAD」。

さすがに現役で世界ツアー敢行してるバンドはすごいね!
今回のUKハードコア3バンド共に、年齢を感じさせずに素晴らしい!
日本のバンドなど全く比較にならない、音の厚み、ヴォーカルの迫力。
以前より聴いてたレコードやCDより、更に迫力のある生演奏!
これからも35周年、45周年と続けてやってもらいたい!
前より、もっともっとEXPLOITEDファンになったよ!(笑)