好き好きアーツ!#08 鳥飼否宇 part2 –太陽と戦慄/爆発的–

【「爆発的」にちなんで作ってみました】

SNAKEPIPE WROTE:

前回の「好き好きアーツ!#08 鳥飼否宇–痙攣的–」は鳥飼先生の著作「痙攣的」の感想をまとめ、登場人物の名前の謎解き(?)に挑戦した記事である。
今回はまた別の著作を特集した第2弾を書いてみたいと思う。
ネタバレの部分があるかもしれないので未読の方は注意してください。

4冊でもご本」を書いた2007年6月からずっと探していた「太陽と戦慄」。
それ以来本屋に行っては必ず「タ行」を探していたけれど見つからない。
一読してすっかりファンになってしまった「痙攣的」より前の著作のため、どうしても読みたかったのである。
そして去年ついにネット通販にて購入。
いやあ、最近はほんとに便利になりましたなあ。(笑)
2年越しで待ちわびた「太陽と戦慄」をわくわくしながら読み進めたのである。

読み始めてほんの数ページで「やっぱり面白い!」と思う。
「粛清せよ」という曲の詩はSNAKEPIPEが大好きなザ・スターリンのよう。
導師、泉水和彦が歴代バンドメンバーの命日を覚えているとはすごい!(笑)
それにしてもこの導師の経歴が興味深い。
お金持ちの息子→戦場カメラマン→ヴェトナムで天啓を受け→導師になったとのこと。
なんだか本当にありそうな話だよね?(笑)
そして「太陽と戦慄」の中で一番SNAKEPIPEが関心を持ったのは、この導師の思想である。
もしかしたら「危険思想」になるのかな。
蜘蛛の糸」のカンダタよりもその後から「我も我も」と付いてくるその他大勢に嫌悪感を持つSNAKEPIPEは、「まさにその通り!」と導師の言葉に大きくうなずいてしまった。
いや、テロ礼賛ということではないので勘違いしないでね!(笑)

バンドの話として読んでも、もちろんミステリーとして読んでもとても面白かった。
導師の書いた詩がヒントになっているとはね!
そして最後まで犯人が判らなかったSNAKEPIPE。
えっ、鈍過ぎ?(笑)

続いて鳥飼先生2008年の著作「爆発的」について。
これは「痙攣的」の続編にあたる作品とのこと。
パラパラとページをめくっただけで「日暮百人(ひぐらしもんど)」と「藍田彪(あいだあきら)」という「痙攣的」に登場していた名前を発見!(笑)
非常に楽しみである。

「爆発的」は副題に「7つの箱の死」とあるように7つの章から成り立つ小説である。
1章ごとに色が入った曲名をタイトルに付けている。
そして章ごとに一人の現代アーティストが登場するのだが、これがまた!
「痙攣的」と同じように「もう1つの謎解き」になっているのである。
登場人物の名前が実在するミュージシャン(ノイズやアヴァンギャルド、プログレなど)からの名前のパロディであることが鳥飼先生の作品の特徴なのである。
小説内で発生する事件は小説の中で解決して犯人が誰、というのは判る。
でもこの「もう1つのミステリー」のほうには「これが正解だよ」という解答はないので、勝手に「多分こうじゃないか」と想像するほかない。(笑)
ROCKHURRAHの協力の下、夜な夜な謎解きに明け暮れたSNAKEPIPEである。
その推理を含めて感想を書いてみよう。

1.黒くぬれ!あるいは、ピクチャーズ・アバウト・ファッキング
タイトルは「Paint It Black」、ローリング・ストーンズの曲である。
わざわざ説明するほどでもないか?(笑)
画家として登場するのが須手部有美(すてべあるみ)という女性。
すてべ、すてべ。変わった苗字だ。
で、思いついたのがビッグブラックレイプマンのスティーブ・アルビニ。
須手部を「すてーぶ」、有美を「あるび」でどうだ?(笑)

ホストとして登場する相生十二男(あいおいとにお)。
これはブラックサバスのトニー・アイオミだね!
ナンバーワン・ホストの王子凡雄(おうじつねお)。
音読みすると「おうじぼんお」。
おぅじぼんぉ、おずぃぼんぉ、おずぼぉん、あっ!おずぼーん!(笑)
ということでブラックサバスのオジーオズボーンでどうだろう?
ホストクラブの名前も「サバト」だしね!
店長の虎場はブラック・ウィドウのキップ・トレバーとか?違うかな?(笑)

須手部有美が発表する、人種問題をテーマにしたアクションペインティングって本当にありそう。
それにしても性同一障害から性転換した登場人物が登場するとは驚き!
実際SNAKEPIPEにもかつて同じことを真剣に考えている友人がいたので、そんなに珍しいことじゃないのかもしれないね。

2.青い影 ないしは、ノーサイドインサイド
タイトルはプロコル・ハルムの「A Whiter Shade Of Pale(青い影)」。
前衛演劇の俳優として出口日多尊(でぐちひだたか)が登場する。
実はこの名前、ROCKHURRAHと二人で長い間考え続けた難問!
顔を合わせる度に「でぐちひだたか」「うーむ」とうなっていたのである。
ブルーと付くバンドをかたっぱしから調べようとするも、SNAKEPIPEが思いつくのは「青い三角定規」や「ジャッキー吉川とブルー・コメッツ」だったり。(笑)
日多尊を「ぴーたーそん」と読むのはどうだろうということで考えついたのが、ブルー・チアーのディッキー・ピーターソン!
無理矢理過ぎ?(笑)
ただしこのブルー・チアーにはランディ・ホールデンとレイ・ステファンズというメンバーがいるようでこれはもしかしたら堀手蘭(ほりでらん)と堀手玲(ほりでれい)なのでは?(笑)

甲本ヒロコ(こうもとひろこ)と増間正敏(ましままさとし)はブルーハーツの甲本ヒロトと真島昌利というのすぐに分かったけどね!
鳥飼先生の作品にブルーハーツというのがちょっとびっくり。

出口日多尊は能楽の融合や凝った舞台装置などを合わせた演劇という、確かに海外ウケしそうなスタイルを構築。
<ノーサイドインサイド>に出てくる機械の蜘蛛は、ラ・マシンのラ・プリンセスみたいな感じなのかな。
うーん、こんな舞台が本当にあったら観てみたいな!(笑)

3.グレイとピンクの地 もしくは、ウィッシュ・ウィー・ワー・ヒア
タイトルはキャラバンのIn the Land of Grey and Pinkとピンク・フロイドのwish you were hereのもじりね!
彫刻家として登場する是水大(これみずだい)と是水海(これみずかい)の双子ユニット、是水トゥインズ。
是水大はトゥインド、是水海はトゥインクと名乗っている、というのがヒントになった。
ピンク・フェアリーズにトゥインクと、そのまんまの名前を発見!(笑)
美術商として登場する黒眼帯の砂野半太(すなのはんた)も同じくピンク・フェアリーズのラッセル・ハンターとダンカン・サンダーソンのミックスかな?
砂だからサンド、で。
苦しい?(笑)

彫刻家として登場する久米一村(くめいっそん)。
これはピンク・フロイドのニック・メイソンね。
ニッを飛ばしてク・メ/イソンと本当に日本名にありそうな仕上がり!
このセンス、さすが!
大笑いしちゃったよ。(笑)
そして同じく彫刻家の志度場礼人(しどばれいと)は、ピンク・フロイドのシド・バレットに間違いなし!
この名前ってちょっと苦しくない?(笑)

千体もの人形というと一番初めに思いつくのはYMOの「増殖」だけど(古い?)、それが全裸のアンドロギュノスとなるとかなり迫力があるだろうね。
何年か前、秋葉原でものすごく精巧にできている美少女人形を見たことあるけれど、あんな感じじゃないかと想像する。
あれがいっぱいだったらすごいだろうなあ。
その道のマニアじゃなくても欲しくなる逸品だろうな。(笑)
これも観てみたいアートだね。

4.白日夢 さもなくば、エレクトロニック・ストーム
タイトルはホワイト・ノイズのAn Electric Stormかな?
続いては音響アートの辺根戸美留(べねとよしとめ)。
これはホワイト・ハウスのウィリアム・ベネットね!
美留を「びる」と読むと丁度いいんだよね。
ウィリアムの愛称はビルみたいだし。(笑)
辺根戸美留と共に活動していた織地創生(おりじきずお)。
この名前もかなり悩んだけれど、ある日ROCKHURRAHが
「おりじ、おーりっじ、おりっじ・・・あっ!スロッビング・グリッスル!」
と叫び、ジェネシス・P・オリッジじゃないかと言い出す。
「おりっじ」は良しとして「創生」は?
「ジェネシスは創世って意味じゃなかったっけ?」
とのこと。(笑)
なるほどね!
名前はそれでなんとかクリア(?)したとしても、バンド名にその章のカラーがついてる、という点はクリアできるのだろうか。
スロッビング・グリッスルに色はないよね?
と、またジェネシス・P・オリッジについて調べていると、ホワイト・ステインズというバンドと活動を共にしていたみたいで。
全然違うかもしれないけど、推理していくのは楽しかったな。(笑)

どうしても分からなかったのが坊屋昌巳(ぼうやまさみ)。
これは全く何も出てこなかったのがちょっと悔しい。(笑)

辺根戸美留の<エレクトロニック・ストームI>はアイソレーションタンクに入って音楽を聴く、という作品。
貴志祐介の「十三番目の人格 ISOLA」にも出てきた、閉所恐怖症の人は入ることができない子宮をイメージした装置だったはず。
立花隆が前世を知るための実験(だったと思う)で入っているのをテレビで見たことあるけど、とても怖そうだった。
ゆったりした気分にはなれそうにないけど、ちょっと経験してみたい気もするね!

5.赤い露光 でなければ、ソルジャー・ウォーク
タイトルはクロームのRed Exposure(赤い露光)とレッド・クレイオラのSoldier-Talk のもじりかな。。
政治的パフォーマンス・アートの東風村麻世(こちむらまよ)。
これはレッド・クレイオラのメイヨ・トンプソンか。
東風村を「とんぷそん」と読むとあーら不思議!
ぴったりの名前が出来上がったよ!(笑)
この名前も秀逸だね!

政治家、能見(のうみ)の秘書、木出(きで)はRed Hot Chili Peppersのアンソニー・キーディスか?
団子屋の古詩庵(ふるしあん)も同じくRed Hot Chili Peppersのジョン・フルシアンテじゃなかろうか?
ぷぷぷ、フルシアンテが古詩庵!(笑)
そう考えるとコンパニオンの茶奴(ちゃやっこ)もRed Hot Chili Peppersのチャド・スミスかもしれないね!
能見は頑張って探したけど、残念ながら分からなかった。

この手の政治色の強いパフォーマンスというのがSNAKEPIPEにとっては難しい。
結局世界情勢とか政治に疎いのが原因だと思う。
そして今回の東風村麻世のパフォーマンスも解り辛かった。
もっと勉強が必要ね。(笑)

6.紫の煙 または、マシン・ヘッズ
タイトルはジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスのPurple Hazeとディープ・パープルのアルバムMachine Head だね。
登場するのは映像作家の城間英一(しろまえいいち)。
これは日本のバンド、のメンバー、城間正男と宮永英一を混ぜた名前か?
そう考えるととてもすっきりまとまるんだけどね。
なんとROCKHURRAHも紫持ってたよ、だって。(笑)

城間英一の作品<マシン・ヘッズ>は映像とボディ・アートの融合になるのかな。
観に行こうと思っている森美術館の「医学と芸術展」が近いように思う。
今まで誰も観たことがない究極の映像か。
観たいような観たくないような。(笑)

7.紅王の宮殿 またの名を、デス・イン・セブン・ボクシーズ
タイトルはキング・クリムゾンのIn The Court Of The Crimson King(クリムゾン・キングの宮殿)の漢字バージョンかな。

「紅の処刑室」にあった分断された豚の標本は、ダミアン・ハーストの牛みたいで想像し易いね。
それにしても豚の血がこびりついたために出来上がった赤い部屋って・・・。
SNAEKPIEPは怖くて入れないだろうなあ。

事件は探偵、星野万太郎の推理で解決なのだろうか。
「こういう可能性もある」という示唆だから、これが絶対じゃないんだよね。(笑)
そしてもし星野万太郎の推理が正しいとしても、犯人の動機が謎なんだな。
快楽殺人の一種と言われればそうかもしれないけど。
SNAKEPIPEなりに推理してみるかな!

事件そのものの面白さに加えて、いろんなジャンルの現代アートの話、そして登場人物の名前の謎解き、と話題がいっぱいの「爆発的」はとても刺激的だった。(笑)
鳥飼先生の新作は1月22日発売予定の「このどしゃぶりに日向小町は」のよう。
「入村徹に届いた、ルビーからの謎めいた手紙」
なんて書いてあるよ!
これって「痙攣的」に登場のバンド、鉄拳のメンバーだよ!(笑)
また楽しみが増えて嬉しいな!

時に忘れられた人々【06】ヴィンテージ漫画篇1

【ROCKHURRAHが少年時代に愛読した漫画の登場人物たち】

ROCKHURRAH WROTE:

何と大晦日から元旦、2日にかけてROCKHURRAHとSNAKEPIPE、二人して風邪をひいてしまい、絵に描いたような寝正月となってしまった。特に今ブログを書いてる本人のROCKHURRAHは通常の風邪も微熱程度で終わるはずなのに39度近い高熱を出して下がっても37度以上というありさま。それくらいは大した事ないよという人も多かろうが、普段あまり高熱を出さない者にとってはビックリのハプニングだ。元旦の風邪など生まれてはじめての経験かも。とりあえず市販の風邪薬や解熱剤が効かなくはないのでインフルエンザではないと思えるけど。

さて、SNAKEPIPEも熱はなくても年末の疲れからちょっぴりダウン気味なので、今回は二人ともブログどころじゃない状況。だけど開設以来一度も休まずに毎週日曜日に更新してるものだから思考力もあまりない朦朧とした頭でROCKHURRAHが書くことにする。何だか新年早々悲壮な決意だな(笑)。
今日の内容はほとんど初めてといってもいい話題だが過去漫画について。

昔は大変に漫画好きの子供だったROCKHURRAHだがある時期よりピタッと読まなくなってしまった。原因は今でも不明なんだが「漫画より小説や映画の方が面白くなった」とかそういう理由ではないのだけは確かで、おそらく好きな漫画が絶版になって手に入らなくなってしまったとかそういう時代的な理由で買うのをやめたんだと思う。

そんなROCKHURRAHが個人的に好きだった作品について軽く思い出話を語ってみようというのが今回の趣旨だ。ちなみにROCKHURRAHには兄が二人いて、その二人のコレクションも読んでるので実年齢よりもさらに古い作品が含まれている。漫画はほとんどがコミックスで読んで漫画雑誌を毎週買ったりもあまりしてなかったしね。
では思いつくまま書いてみよう。熱があるのでリンクなど一切なしで勘弁してね。

「デビルマン/永井豪」
漫画家自体の大ファンでこの人の作品ならばどれでも好き、と言えるほどのめり込んだわけではないが、70年代前半の永井豪の暴走っぷりは確かに誰が見ても素晴らしくとんでもないものだったろう。個人的に好きな作品も多く、この時代の漫画の中では最も過激な表現に衝撃を受けた子供たちも多かったろう。
主人公が雪山で怪物に食い殺されるという衝撃的な発端の「魔王ダンテ」、痛快時代劇から出発して後半は何だか収拾がつかなくなる永井豪版「魔界転生」とも言える「ズバ蛮」、学生運動という特異なテーマを扱ったヴァイオレンス・アクションの傑作「ガクエン退屈男」、この辺はとにかく大好きで何度読み返したかわからない。ちなみに三作とも朝日ソノラマのサン・コミックスから出ていて、ROCKHURRAHはなぜかここの装幀が大好きだったとみえる(落丁が多いのがタマにキズだったが)。
そんな永井豪の代表作とも言えるのが誰でも知ってるこの「デビルマン」だろう。有名だから敢えてストーリーとか感想については書かないけれど、後半の暴走ぶりは凄まじく、当時の漫画ではタブーとされていた(に違いない)表現を少年マガジンというメジャー誌で堂々と行なったところが凄い。後半の魔女狩りという歯止めの利かなくなった民衆のエピソードも衝撃的だったが、個人的には前半のシレーヌ編も捨て難い。デビルマンが敵とするのは血も涙もない悪魔ではなくて愛も感情もある悪魔なのだ、というところがROCKHURRAH少年の琴線に触れたらしい。

「ワースト/小室孝太郎」
上記の「デビルマン」とかと比べるとかなりマイナーな部類に入るのかな?とりあえず天才的漫画家と言われる小室孝太郎の唯一の代表作だ。
世界中で同時に降った雨に濡れた人間はみんな死に絶えて、その後に食人鬼として甦る。彼らは残った人類をどんどん食い殺してゆき、ワーストマンと呼ばれる怪物だらけの世界になるという発端から始まる物語。ホラー映画好きならば誰もが思うだろう。これはジョージ・A・ロメロ監督の代表作「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」「ゾンビ」とほぼ同じシチュエーションなわけである。この漫画は70年くらいであるからまだ「ゾンビ」は誕生してなくて、もし作者が着想を得たとしても「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」からという事になる。さらにロメロ監督の作品が割とローカル限定だったのに対してこの「ワースト」は生き残った人類VSワーストマンという壮大なスケールの物語になっていて、主人公も三世代にわたる。そして最後の決着は氷河期のあとという途方もないSF作品となっている。ゾンビも最終的にはちょっと喋れるようになったり進化はしたがこのワーストどもはたった数十年と思える三世代にして空を飛べるようになったり海を泳いだり、恐ろしく進化の度合いが速い生き物というのがありえなくも怖かった点だ。

「青の6号/小沢さとる」
潜水艦を主役としたSFアドベンチャー大作の第一人者とのことだが、そういう特殊なジャンルを描いた漫画家はその後も滅多には現れず、たぶんずっと第一人者のままだったのではないかと思われる。先に大ヒットした「サブマリン707」も無論好きだったのだが、この「青の6号」の方が単に出てくる潜水艦が好きだったというわけ。主役はヒゲにパイプのダルマおやじとも言える艦長とポンコツ潜水艦青の6号。しかし撃沈された青の1号コーバック号や敵艦ムスカの方がなぜか恰好良かった。上記の2つなどと比べると危ない思想もなく、単純に少年漫画の王道とも言える善悪の図式、この作品に関しては漫画そのものが云々というより、純粋にメカに対する興味(というほどメカに興味持った覚えもないが)だけが思い出に残る。「原子力潜水艦シービュー号」「スティングレイ」などの海外特撮TVドラマもそうだったが「青の6号」シリーズもプラモデルとなって風呂での遊びに活躍したものだ。しかもなぜか同じシリーズなのに全然縮尺合ってなくて青の6号搭載のミニ潜水艇フリッパー号よりも青の1号コーバック号の方がずっと小さかったり、なんだかいいかげんな大らかな時代。

「聖マッスル/ふくしま政美」
一時期Quick Japanなどで再評価されて多くの人がそれをきっかけに復刻版を手にしたはずだが、オリジナルは少年漫画史に残るカルト漫画であり醜悪で奇っ怪な作品として伝説だったものだ。何がすごいってこの主人公(名前はない)物語の大半で究極に鍛えられた筋肉を惜しげもなく披露しっ放し、つまりほとんどの場面で全裸なのである。古代ローマとかその辺をミックスした世界でこの名無しの青年が自慢の肉体を武器に渡り歩いてゆくというただそれだけのストーリーなんだが、とにかく見せ場はど迫力のコマ割りと筋肉のぶつかり合いのみというノーマルな少年少女の読者には理解不能という世界。独特のいやらしいタッチの絵も好き嫌いが分かれる(というか好きと言える人はめったにいなかったはず)ところだった。本来ならばこの当時の少年だった者たちの間でのみひっそり語られるはずの作品が後の世代の人間に見出されるというのは音楽の世界でも数多くあることだけれども「消えた漫画家」とかそういうネタ本じゃなくて、どうか自分の力で見出すようにしてもらいたいものだ。

「ワイルド7/望月三起也」
どちらかと言えばSF的な漫画を好むような作品を挙げてきたがここに書けなかったものも多数、スポ根から少女漫画まで幅広い趣味があったのが自分でも意外だと思える。望月三起也作品も「ケネディ騎士団」「秘密探偵JA」「竜の旗」などなど子供の頃から大好きなジャンルで、特に代表作の長編「ワイルド7」は日本のアクション漫画の中では最も好きな作品だ。少年キングという当時からかなりマイナーな雑誌で連載していたにも関わらず大ヒットしたので知っている人も多かろうこの作品。ごく簡単に書くならば法の力で裁く事が出来ない悪党を「退治」するために集められた札付きの不良どもがワイルド7なる警察の非合法組織となり、悪の組織と戦うという話だ。飛葉、ヘボピー、両国、オヤブン、八百、ユキなどという個性的な面子の性格設定もよくされていて各人が乗るバイクや拳銃も素晴らしく凝っていたのが多くの読者に受けた原因だ。これまでの日本の漫画とは明らかに違うダイナミックな描写とあっと驚くアクション、ストーリー展開も素晴らしい。特にコミックス9巻分にもなる最終章「魔像の十字路」ではいい味を出していたキャラクターが一人一人犬死してゆくというやりきれない展開で最後まで読むのが辛かったという思いを漫画ではじめて経験した作品。

ここまで書いたけどやっぱり一回のブログで書ききれなかったため、とりあえず今日はここまで。レコード屋について書いてたブログ記事も中途半端のままだし、今年一年も何だか宿題の多い年になりそうだな。では今から療養に専念しマッスル。

2010年元旦

【2010年用年賀状】

SNAKEPIPE WROTE:

明けましておめでとうございます!

年末からROCKHURRAHもSNAKEPIPEも、二人揃って風邪っ引きになってしまった。
今年は寝正月になってしまうのだろうか!?
恐らく先週の亀戸ハードコア後から調子が悪くなった感じ。
うつされたのかな?(笑)

ウイルスも不況も、キングギドラちゃんに破壊してもらいましょ!
そんな願いを込めて作った年賀状、いかがでしょう?

どうぞ今年もよろしくお願い致します。

ROBIN VS ZORRO in 亀戸ハードコア

【ロビンとゾロ、と聞いたらパッと思いつくのはやっぱりワンピースだよね!】

SNAKEPIPE WROTE:

前から名前だけは知っていたライブハウス「亀戸ハードコア」。
初めからハードコアと謳ってるんだから、絶対パンク寄りに違いない。
しかし何故、亀戸?と気になっていたのである。
そして今回その亀戸ハードコアでROBINが演るとの情報を得て行ってきた。
前回のブログ「043CALLING!」にも書いたけれど、ROBINのHIROSHIご本人に「行きますね!」と約束してしまったライブである。
今回は「ZORRO 1st ALBUM RELEASE PARTY」という企画で、大阪のZORROというバンドがメインの模様。
下調べしてみたらパンク、サイコビリー系のミクスチャバンドのようで、雰囲気はROBINに近いのかな。
亀戸ハードコアの様子も含めてとても楽しみだ。

亀戸駅を降りるとすぐに「ドン・キホーテ」のビルが見える。
その向かいのビル3Fが亀戸ハードコア。
駅から徒歩5分もかからない素晴らしい立地!
ちょっと着いたのが早かったようで、開場までの時間を待つことに。
ROCKHURRAHとSNAKEPIPEはほとんどのライブに開場時間前に着き待つことが多いのだが、待たせるのが当たり前と言わんばかりの関係者が多いように感じる。
ところが亀戸ハードコアは開場時間を少し過ぎたところで
「お待たせして申し訳ありません」
とスタッフが声をかけてきた。
今まで一度もなかった経験!
時間を過ぎているんだから本来ならば当たり前のことだけど、非常に珍しいので印象的だった。
こういうちょっとしたことで「いいライブハウスだな」と思ったりするのを他のライブハウス関係者も感じて欲しいものだ。

開場時間となり、初亀戸ハードコア入り!(笑)
ドリンクコーナーとライブ会場が完全に分かれていて、飲み物が欲しい時には物販コーナーを抜けての移動が必要となる。
そして興味津々だった会場のほうは、大体10畳くらいの広さ。
噂通り非常に狭い!
100名入ったら満員になっちゃうくらいかな。
逆に言えばそれだけステージと客席が近い、とも言えるんだけどね。(笑)
開演までの時間、観客チェック。
ライブだからキメてきました、という人のほうが少ない。
普段のROBINのライブとはちょっと客層が違うタイプが多いのかな?
サイコビリー系は1名しか確認できなかった。
そしていよいよ開演時間となった。

トップで登場したのはTHE C&C。
このバンド、後で知ったけれどどうやら亀戸ハードコアの従業員で結成されたバンドのよう。
ジャンルは70年代パンク。
どこかで聴いたことがあるフレーズが組み合わさっているような曲がほとんど。
オリジナルパンクを意識しているから仕方ないのかもしれないけれど、もう少しスパイスを効かせて欲しい。
そして演奏は非常に上手かったのに、残念ながらヴォーカルが全然生きてない。
バンドの要となるはずのヴォーカルに個性がないというのは致命的。
バンドのホームページもほとんどリンクが貼られていない状態なので、あんまりやる気ないのかな?

続いての登場はSTOMPIN’ BIRD
観客の中にこのバンドのロゴ入りTシャツを着ている人が多くて、びっくり。
このバンド目当てでライブに来た人が大勢いた模様。
さてどんなバンドなんだろう?
音としてはメロコアになるのかな。
3ピースバンドなのに、キレのある厚い音を出している。
ヴォーカルも声量があり、よく聴こえる。
ベースがMC担当のようで、まるでお笑いの人のように客席を笑わせていた。
演奏上手いし、MCも場慣れしてるし、お客さんも盛り上がってたけれど、SNAKEPIPEはいまいち盛り上がれなかった。
これは好みの問題だからね!
いつもは穏やかなROCKHURRAHが珍しく周りのやんちゃな客に怒っていた。
このバンドのファンの馬鹿騒ぎの仕方は、あらかじめ決められていたような感じ。
いろんな盛り上がり方があって良いとは思うけど、あまりにも幼稚で見ていて不愉快だった。
「みんなでやれば怖くない」的な全員が輪になって踊るようなやり方ってどうなの?
それで俺たちはパンクだ、と名乗るとは腹立たしい限り。
完全に間違ってると思った。

DJがRAMONESを4曲かけた後、3番目にスペシャルゲストバンドとして登場したのがTHE RYDERS
さすがにデビュー20周年、貫禄のステージ!
観ていて安心感があるんだよね。(笑)
天井が低かったので、ヴォーカル、OHNOがジャンプすると頭をぶつけそう。
ギターが変わってからライブを観てなかったけれど、観客も大盛り上がりでとても良かったと思う。

1stアルバム発売記念という企画になっていたので、トリだと思っていたのに4番目に登場したのがZORRO
恐らく地元大阪から来た熱狂的なファンがステージ中央にいっぱいいる。
ファン引き連れて、とはすごいね!
3人がスーツにハット、という伊達男ファッション。
ジャンルとしてはパンクになるのかな。
3ピースバンドとは思えないほど迫力の演奏。
ヴォーカルが太いダミ声でなかなか良い感じ。
がっ。何かが足りない?
もう少し過激さが欲しかったような?
せっかくヴォーカルがいい声なので、サイコビリー要素を強めたほうが良かったのかもしれないね。

そしてトリはお目当てのROBIN。
今年最後の締めとしてROBINが観られて本当に嬉しい!
前回観たのはゴールデンウィーク真っ最中の5月3日「初来日!REZILLOS/ROBIN参戦!」だったので、なんと約半年ぶり!
DJがROBINがもう登場し終わっているのにあとから登場曲をかける、というマヌケぶり。
そうそう。
今回のライブは全体にDJがいまいちだったなあ。
セッティングの時間が長かったので、もう少しDJに頑張って欲しかったね。
「BATTLE GOES TO BLACKOUT」から始まったステージは、後半に向かうにつれ更に加速していき会場はものすごい盛り上がり!
さすがROBIN!いいねーっ!
そしてヴォーカル、HIROSHIが非常にゴキゲンで珍しくよく喋った。(笑)
メンバー紹介までやってたしね。
それにしても「東京、千葉のアニキ、ヴォーカルHIROSHI!」なんてウッドベース、YASUが言ったのがおかしかった。(笑)
アンコールに応えて何年ぶりかで「ROBIN」を演奏。
ラストは「MAGGIE MAGGIE MAGGIE」。
本当に行って良かったライブだ!
やっぱりROBINは元気になりますなあ。(笑)

亀戸ハードコアは音響も良く、狭いだけにステージが近いのでファンにはたまらない好条件を備えていると思う。
そしてレーベルを独自に持っていて所属アーティストも抱えているとは、意欲的だなと感心する。
こういう姿勢も評価しちゃうね。
また良い企画があったら行ってみたいと思った。

今回が今年最後のブログになるんだね。
SNAKEPIPEが選ぶ「ベスト・オブ・2009」のライブ編はシルバーウィーク中に行った「MAGMA’09 ~PUNKS NOT DEAD!」で、EXPLOITED
5月のゴールデンウィークのREZILLOSも良かったね!
また来年もライブで元気を養いたいものである。
そして「ベスト・オブ・2009」の出来事編としてはROCKHURRAHが書いた記事「昔の名前で出ています、か?(其の一)」に作家の鳥飼否宇先生からコメントを頂いたこと!
素晴らしい仰天ハプニングに腰が抜けたよ!(笑)
ブログを続けてるとこんなこともあるんだな、と強い励みになった。
また来年も鳥飼先生の著作から元気をもらっちゃおう!

また来年もROCKHURRAH RECORDSをよろしくお願いします!
いつも読んでくれてありがとう!