CULT映画ア・ラ・カルト!【07】ピンキー・バイオレンス編

【女番長シリーズに出演のスケバン達】

SNAKEPIPE WROTE:

7月12日の月曜日はこの数年の中で最もツイてない日だったように思う。
1.風の強さのために朝一番で傘が壊れる。
2.日頃使っているロッカーの鍵が開かなくなる。
3.そして極めつけはなんとパソコンが壊れてしまったのである。
いきなり「バツッ」と変な音がしたかと思うと、急に電源が落ちてしまった。
何事かと思って電源を入れても「キューン」とすぐに落ちる。
恐らく電源系統の不調のせいだと思うけれど、中身を探って修理するなんて技は持ち合わせてないしね。
4年前に買ったパソコンなので買い替えてもいいか、とあっさり決断。
バックアップは外付けHDDに保存しているので、データがどうのという問題もなし。
日進月歩の世界だから当たり前だけど、前回の機種よりハイスペックなパソコンを手に入れることができた。
これでついにSNAKEPIPEもWindows7になっちゃったね。(笑)

前フリは全く内容とは関係なくて、今回は70年代に流行した東映ピンキー・バイオレンスについて書いてみようと思う。
とはいっても70年代初頭の映画がほとんどなので、今では手にすることができないものが多いんだよね。
いろんなシリーズ物になっていて面白そうなのに残念!
今日はその中から、観ることができた3本についてまとめてみようかな。

「女番長ゲリラ」(1972年)
杉本美樹が主役のスケバン映画。
新宿赤ヘル団という4人のバイクチーム。
映画が始まってすぐに男4人に絡まれると、いきなり片乳を出し刺青を見せる杉本美樹。
全く必然性のないヌードは70年代にはよくあるパターンだよね。(笑)
東京の赤ヘル団vs京都のスケバングループの対決で、東京の勝ち。
杉本美樹が京都で番を張る(死語)ことになる。
そこに暴力団や杉本美樹の恋愛話などが絡んできて、スケバンの愛と友情、そして悲しみなどが綴られているのだ。(変な説明か)。

この映画の中にはいろんなゲストが出演している。
岡八郎鳳啓助京唄子といった当時人気があった芸人がほとんど映画の内容とは関係がなく、ただ笑いを取るためだけに登場する。
あがた森魚も「赤色ブルース」を劇中で歌い、役名も「あがた森男」とほとんどそのまんま。
遠目で見ると「ずうとるび」の新井か野村よっちゃんか、という風貌だね。(笑)

それにしても主役の杉本美樹は普通なら主役になれるような女優じゃなかったように思うけど、他に誰もいなかったのかしら?
途中から池玲子と杉本美樹が並ぶと「女王と小間使い」くらいの差が出てしまっていたように思う。
赤ヘル団の中に杉本美樹より絵になりそうな女性がいたけど、彼女じゃダメだったのかしらね。
池玲子の後ということで堂々主役の座を勝ち得たみたいだけど、どうも腑に落ちないSNAKEPIPE。
どんなシーンでも撮影OKというガッツが認められたのかな?

調べてみると、どうやら「東映のドル箱ポルノ女優」だった池玲子が歌手に転向する、というので女優を一度辞めたらしい。
その時に撮影されたのが杉本美樹を主演にした女番長シリーズだったみたいね。
池玲子がまた映画に復活して、杉本美樹と共演になった様子。
なるほど納得ね!(笑)

「恐怖女子高校 暴行リンチ教室」(1973年)
まずはタイトルからしてすごいよね。(笑)
恐怖、暴行、リンチ、と三拍子揃ってるし。
主演は杉本美樹。助演に池玲子。
全国の女番長が集められる「希望学園」という女子高が舞台。
風紀委員を務める女子高生チームが学校側とグルになって、総括の名の元に気に入らない女子高生をリンチをする。
リンチの場所は化学実験室。
いろんな器具がありそうだもんね。(笑)
そのリンチの方法がすさまじい。
初めに出てくるリンチは「血を抜く」というもの。
しばりつけ、注射器を使って大量の献血状態。
「人はね、血が1/3なくなったら死ぬんだよ」
なんて笑いながら言う風紀委員長。
スプラッター系が苦手なSNAKEPIPEは、このシーンでちょっとめまいが…。

殴る蹴る、は当たり前。
体に電流を通したり、大量の水を飲ませてトイレに行かないようにする、なんていうのもあった。
ひや~、本当にこんなことを女子高生が考えるかと思うと恐ろしいね!
といっても風紀委員側もその他のズベ公(笑)も全然女子高生には見えないんだけどね。

悪い大人が牛耳る高校とその手先となっている風紀委員を杉本美樹らのグループが一網打尽、めでたしめでたしのラストになるんだけどね。
それにしてもこの番長シリーズって人気があったのかかなりの数、制作されてるみたいなんだよね。

「女番長ブルース 牝蜂の挑戦」(1972年)
我らが池玲子主演の女番長シリーズ。
実はこれがシリーズ2作目で、1作目の「女番長ブルース 牝蜂の逆襲」(1971年)は残念ながら未見なんだよね。
機会があったら是非観たい作品!

この映画は池玲子がリーダーの京都のパール団と大阪の黒百合団の抗争、そこに絡んでくる暴力団との話である。
上述した3本共に共通するんだけど、女番長が「サシで勝負」する前に必ず仁義を切るのが特徴なんだよね。
あの、「おひかえなすって」のポーズ、右手を差し出し腰を落として
「ワタクシ、生まれは○○、育ちは××、~の、XX、です」
とヤクザ映画さながらの挨拶。
しかも書いたように句読点の付け方が変わってるの。
あれが正式な仁義の切り方なのかな?

結局、最後はスケバン(女)と暴力団(男)との戦いになり、女が勝つ。
悪だくみする暴力団がいて、最初は必ず痛い目に遭うスケバンが復讐するというもの。
スケバンシリーズは全体に同じパターンが多いね。
ストーリーだけを追ってしまうと単純なんだけど、70年代映画は今よりもタブーが少なかったようで窮屈さがないところが好きだな!

ファッションの歴史は巡るといわれるけど、この映画の中の黒百合団の服装はとてもカッコいい。
革ジャンにスリムのジーンズをロールアップ、そしてブーツという70年代にアメリカで流行したガールズ・バイカー物をアレンジしたかのような服装。
今でも十分通用しそうだね。

以前書いたブログ「CULT映画ア・ラ・カルト!<05> 恨み・女任侠編」にも書いたけれど、SNAKEPIPEとROCKHURRAHはすっかり池玲子ファン。(笑)
スケバン、というとやっぱり有名なのは梶芽衣子の「野良猫ロック」シリーズだけれど、どうもこちらは何本か観てもピンとこなかった。
梶芽衣子の良さが上手く伝わっていないように感じたからね。
まだまだ池玲子の出演の作品があるので、観られる時を楽しみにしたい。

実物観たよ!80年代ライブ特集

【全盛期に行ってみたかったバンド】

SNAKEPIPE WROTE:

毎日暑い日が続いてますな!
皆様ご機嫌いかがでしょうか。
こんな気候じゃ夏に弱いSNAKEPIPEとROCKHURRAHは、お出かけするのもままならない状態。
今年に入ってからライブにも全然行ってないしね。
行ってるのはミリタリーショップだけか。(笑)

今日は「今までどんなライブに行ったか」をまとめてみたいと思う。
ただねー、これ書いちゃうとかなり古い話が多くなるから年齢バレそうなのが怖いんだけど!(笑)

まだSNAKEPIPEが実家にいた頃の話。
当時は外タレ(死語)のライブってチケットが高額だったし、チケットを予約するのも一苦労だったんだよね。
新聞の下にほうに小さく載ってる「○○来日!×月×日発売開始!」という記事やラジオが情報源だったな。
そして発売開始と共に電話予約。
ずっとお話中でつながらないから、何回も何回もかけ続ける努力が必要だった。
しかもSNAKEPIPEの実家はこだわりがあって、ずっと長いことダイヤル式の黒電話を使ってたんだよね。
だからリダイヤルという機能はないし、かけ直すためには「ジーコ、ジーコ」と指が痛くなるほど何度もダイヤルしたわけよ。
そんな苦労をしてやっと手にするチケット。
今みたいにネット予約とかコンビニで簡単にチケットが手に入る時代じゃなかったからね。
苦労した分、思い入れも強く深く記憶しているとも言えるけど。
時代などを無視して行ったことがあるライブ、書いてみようか。

ジャパン
実はこれは自分から予約したライブじゃなくて、たまたま人から譲ってもらったチケットで行った。
「これが最後らしいよ」と言われ、観ないと損!などと思って行ったネタ用のライブだったな。(笑)
割と前の方の良い席で全員の顔がバッチリ見える位置。
ヴォーカルのデヴィッド・シルビアンを押しのけて一番目立っていたのはベースのミック・カーン!
真っ赤なスーツで笑いながらのカニ歩き!
とにかく目がすごくて強い印象だった。
今でもしっかり覚えてるほど。
確かにそれがジャパンのジャパン・ラスト・ツアーだった。
もしかしたら自慢できる貴重な体験をしたのかもしれないね。
アート・オブ・ノイズ
アート・オブ・ノイズのジャケットでも使用されている笑ってる二つの仮面が暗闇に浮かんでいる舞台セットだったような。
記憶が曖昧なんだけど、薄暗い中でのライブだったように記憶している。
ほとんどがインストゥルメンタルなので、実はあまり覚えていない。(笑)
ただ「行ったよ!」とこれまたネタにはなったけどね!
ニナ・ハーゲン
このライブについては以前「個性派女流アーティスト大集合!」にも書いたことあったね。
ブラックライトに反応する蛍光色の化粧を施し、レオタードみたいな衣装の「お股」部分にハートを付けたニナ・ハーゲン。
ほとんど暗いままのライブで唇だけがパクパク動いてるのが見えたな。
かなり前のほうで観てたはずだけど、印象に残ってるのはその唇とお股のハートだけ!
イギー・ポップ
この時は会場への道に迷い、少し遅れて到着してしまった!
方向音痴のSNAKEPIPEだから仕方ないか。(笑)
確かこの時は2階席から鑑賞。
なんだか豆粒みたいな上半身裸のイギー・ポップを観たな。
このライブまでほとんどイギー・ポップを知らなかったので、それまでの間イギー・ポップばかり聴いて勉強して行った覚えがある。(笑)
だからライブはまるで復習みたいな感じだったっけ。
ポーグス
あー、このライブも遅刻して行ったなあ。
間に合わないって会場までタクシー飛ばして、やっぱりこれも2階席だった。
もうライブ始まってたから「済みません」と言いながら席に着いた記憶が。
呂律が回らないヴォーカル・シェーンを上から観たっけな。
ラモーンズ
記憶が定かじゃないけど、今は無き有明あたりのライブ会場で観たような。
あの時はまだ全員存命で、当然ながらオリジナルメンバーで来日してた。
ジョーイが「炎」と漢字で書いてあるTシャツ着てたのを見て笑ってしまった。
椅子のないスタンディングの会場だったので、かなり盛り上がった。
曲間のない、パワフルなステージだった。
ラモーンズはROCKHURRAHも観たらしく、これだけが二人共行ったことがあるライブである。
ドクター・アンド・ザ・メディクス
これも以前「さて、今週のリクエストは」に書いてるけど、本当によくも一発屋のライブに行ったもんだよ。(笑)
その時に出ていたアルバム一枚はちゃんと聴いて行ったけど、ヒット曲はあれだけだからね。
とりあえず写真や映像で観ていたドクターやメディクスは期待を裏切らず「そのまんま」だったね。
そう言えば関係ないけど、同じ時代にジグ・ジグ・スパトニックのチケット予約もしてたんだよね。
前から2列目か3列目かのすごい良い席!
ものすごく楽しみにしてたのに、残念ながら来日中止・・・。
どんなライブだったんだろうね?
P.I.L
ほんの数曲しか知らなかったのに無謀にも行ったライブ。
だってどうしてもジョニー・ロットンが観たかったんだもん!
前から数列目のかなり良い席で観られたのが嬉しかった。
曲がどうの、よりもやっぱり実物観た!が一番かな。
この時はライブ後のほうが面白い話(ネタ)があるんだよね。
ライブ後「お腹空いたね」と入ったスパゲティ屋さん。
なんとそこにギターを横に立てかけ食事中の遠藤ミチロウを発見!(笑)
場所としても時間的にみても、恐らく同じP.I.Lのライブ後だと思われる。
ジョニー・ロットンと遠藤ミチロウを同じ日に観るとは最高!
ちなみに遠藤ミチロウは「イカと明太子のスパゲティ」だったよ。(笑)

他にもまだ行ったことあるライブもあったかもしれないけど、とりあえずはここで打ち止めにしようか。
それにしても「苦労して手に入れたチケット」と言ってた割には「記憶が定かじゃない」と書いてることが多いね。
ただ単に年とって忘れたってことかね?(笑)

最近は再結成ブームでいろんなバンドが来日している。
去年はレジロスエクスプロイテッドのライブに行き、まだまだ若いもんには負けない現役のステージに感激したものだ。
だけどやっぱり「全盛期のパワー全開の時に観たかったな」と思うバンドもいっぱいあるよね。
全盛期に来日してたのに、こちらの都合で行かれなかった場合もあるし。
一番上の写真は「最も良い時期に行きたかったバンド」を集めてみたよ!
来日したことはあるかもしれないけど、オリジナルメンバーじゃなかったり「まだやってたんだ?」というような旬が過ぎてしまったバンドもあるからね。
ROCKHURRAHにも今回みたいな「行ったことあるライブ特集」を書いてもらいたいな!

SNAKEPIPE MUSEUM #04 Cindy Sherman

【どんな役でも成り切っちゃう!デ・ニーロ顔負けのシンディ・シャーマン】

SNAKEPIPE WROTE:

ジム・ジャームッシュ
監督の「ストレンジャー・ザン・パラダイス」(原題:Stranger Than Paradise)という80年代に大ヒットした映画がある。
当時には珍しくモノクローム映像、お洒落系としてもてはやされた。
SNAKEPIPEも当時観たはずだけれど、特別な事件が起こるわけでもなく淡々とした時間の流れに退屈してしまった。

当時仲良くしていた映画好きの年長の女性は
「ストレンジャー・ザン・パラダイスは写真集を観る感覚でずっと部屋に流しておきたいくらい素敵」
と評価しているのを聞きびっくりした。
なんであんなに退屈な映画を?と思ったからだ。
それからかなり後になって父親(写真家)から似た話を聞くことがあった。
「ストレンジャー・ザン・パラダイスはロバート・フランクなんだよ」
この時には既に写真を始めていたSNAKEPIPEなので、父親が言わんとすることが解った。
ロバート・フランクは「アメリカ人」という写真集が有名な、後の写真家に多大な影響を与えた大御所の写真家!
納得したSNAKEPIPEはもう一度あの映画を鑑賞してみた。
そしてやっと当時の年長の女性の言葉と父親のロバート・フランク発言を理解することができたのである。

ストレンジャー・ザン・パラダイスは、全てのシーンが一枚写真として完成している、言うなれば連続スチール写真映画だったんだ!
写真集を観ている感覚という言葉が大正解、と気付かされたのである。
一枚でバッチリ決まる写真を連続させて映画を作るという大胆な試みを成功させたジャームッシュ。
そしてこれから紹介するのはジャームッシュを逆転させた手法を使った写真家なのである。

シンディ・シャーマンの写真を初めて目にしたのはいつだったろうか。
やっぱり「ストレンジャー・ザン・パラダイス」の時期と同じくらいだったのかもしれない。
映画の中のワンシーンをシンディが自作自演で撮影するシリーズは衝撃的だった。
映画の中のひとコマを作る写真、ということでジャームッシュとは逆なのである。
例えば上の写真は怯えた表情と暗闇の表現から恐らく恐怖映画をイメージしてるんだろうな、と想像する。
何者かの気配を感じ取り、これからどうしたらいいのか様子を伺っている感じ。
そして学生服のように見えるので、少女を設定しているようである。
他の写真でも様々な人物に成り切り、いろんな映画のワンシーンを演じるシンディ。
全部の写真が同一人物とは思えないほどの変貌ぶりに驚かされる。

変身願望や自己愛が強いのか。
当時はあまり使われなかったと思うけど、いわゆる「コスプレ」好きとも言えるよね。(笑)
映画のあの人の役をやってみたい、というような。
SNAKEPIPEはあまり深く意味を考えなかったけど、写真そのものがとても好きだった。
元々スチール写真が好きだから余計にね。
調べてみるとどうやらかなり思想を持った写真だったようで、写真家というよりは現代アートとして分類されるのかもしれない。
非常に詳しい説明はこちらの評論家の方には負けちゃうのでSNAKEPIPEが今更どうこう言うまでもないね。(笑)

現代美術館で開催されたシンディ・シャーマン展を観に行ったのが1996年とは。
もうすでに14年も前だったのね。(とほほ)
上述のスチール写真のシリーズの次には死体を演じ、その次にはもう自分自身ではなく人形を使った写真へと移っていた。
そしてその人形も更に解体されて行き、物(ぶつ)化していく。
どんどん壊れていってるなあ、と感じた。
ここまでくると「性」の問題ではなくて「生」とか「死」になってくるのかもしれないね。

2003年の木村伊兵衛賞を受賞した澤田知子もシンディ・シャーマンと同じ手法を使っていたなあ。
本人がいろんな役に成り切るってことでね。
シンディがシリアス写真だとすると澤田知子はさすが関西出身、「お笑い系」だったけどね。(笑)
20年以上経ってもまだまだ影響力大のシンディなんだね。

その後のシンディ・シャーマンの活動については不明だけれど、作品がかなり人気で高額らしいのできっと今頃はお金持ちなんだろうな。(笑)
物となった肉体の次の世界をどう表現していくのか。
こうなったらもう輪廻転生しかないかも?!
スペルは違うけど、名前からしてシャーマン(祈祷師)だしね!

闘うバンドのユニフォーム

【ミリタリー系が最も似合わない人達を徴兵してみました】

ROCKHURRAH WROTE:

SNAKEPIPEやROCKHURRAHの書くこのブログ、最近の記事でも明らかな通り、以前から大好きだったミリタリー・スタイルにますます傾倒している。
ちょっと前はミリタリーも取り入れたパンクの服装だったのがだんだんエスカレートしてゆき、今ではどちらかというとミリタリーの方が主になってしまったようだ。本格派の人からすれば「何を今更」と笑われてしまうし特にポリシーもないんだが、機能的で動きやすく快適な服を求め、その究極はやはりミリタリーかアウトドアという事になってしまう。この世界は新素材と新技術の宝庫で昔から「NASAとデュポン社が共同で開発した素材」などという言葉に弱いROCKHURRAHはどうしても試したくなってしまう。が、色々あってROCKHURRAHはどうしてもアウトドア・ブランドの服は似合わないという情けない結果となってしまった。山に逃げて来た盗賊にしか見えないからね。しかもちょっとした服でも高すぎだよ。だったらやはり好きなミリタリー、という感じでもう流行り廃りなんか全然関係なく、これからもこの道を独自に昇華した服装をしてゆきましょうか。

さて、そんな個人的な嗜好を踏まえて今回はミリタリーを感じさせる服装が似合っていたバンド達の特集としよう。このブログでは恒例だが相変わらず70〜80年代のパンクやニュー・ウェイブをメインでね。


まず最初は70年代後半から80年代前半まで活躍したインダストリアル・ミュージックの元祖的存在、スロッビング・グリッスルから。彼らの音楽や変態的な世界がどうのこうの、とかは今回の趣旨とは関係ないから省略するが、写真を見る限り確かに彼らはミリタリーな服装を好んで着ていたようだ。ただし本格的ミリタリーの人やタクティカル方面の人(何じゃそりゃ)から見ればけしからんようなコーディネイトなのは確かかも。一体どこ製?この写真で見る限り何軍なのかわからないが東ヨーロッパを思わせるような服装で迷彩も独自のパターン、ジェネシス・P・オリッジ(左から二人目)の腿にはイナズマのような彼らのトレードマークが入っているところが手作りっぽいね。昔からかなりオバチャン顔してると思っていたが後に本当に手術してオバチャン化してしまったようで、倒錯を貫いた偉大なアーティストだと言えよう。


80年代初期に活躍したリヴァプールを代表するふたつのバンド、エコー&ザ・バニーメンとティアドロップ・エクスプローズもメンバー全員がミリタリー・スタイルで写ってる写真が多く残されている。元々は同じバンド出身という事もあるしこの時代のリヴァプールのバンド達はほとんどが顔なじみなのは間違いないところ。だから誰かが着だしたというようなところから広がって、ミリタリー・ルックが蔓延しててもおかしくはない環境にあったのかもね。
ティアドロップ・エクスプローズのジュリアン・コープは一時期R.A.F.(Royal Air Force=英国空軍)のアーヴィン・ジャケットにムートンのジョッパーズ・パンツというスタイルを好んで着ていた。米軍のムートン・ジャケットB-3に似ているが襟がちょっとダブルのライダースっぽくなってるのがカッコいい。しかしこのバンドのキーボードはまるで水兵、ドラムはG.I.風、ギターはアフガンかサウジアラビアか?というスタイルでてんでバラバラ。まあ全員が揃って同じ時代の軍服着てたら何かの主義者みたいだから逆にこれでいいのかもね。
対するバニーズ(懐かしい呼び方)はさすがヒット連発の一流バンドらしく、ソツなく金持ちミリタリーな感じ。特にギタリストは迷彩のM-65ジャケットが大好きらしく、愛用している写真をよく見かける。


全員揃っての制服姿と言えばビル・ネルソンズ・レッド・ノイズの面々が思い出される。テクノポップ、あるいはエレポップと呼ばれるような音楽の元祖的存在だったビー・バップ・デラックスのビル・ネルソンがビーバップ解散後、ソロになるまでのごく短い期間やっていたバンドなので、彼らの写真も映像もほとんど残ってない。なので本当にこんなステージ衣装でやってたのかは不明だ。これはミリタリーとかには関係ないのかも知れないがSF好きのビル・ネルソンが作った架空の地球防衛軍みたいな機関の制服というようなコンセプトだったのじゃなかろうか?想像は出来るが実際のところどうなのかも不明。うーん、どちらかと言うと限りなく詰め襟学生服に見えてしまうシロモノ。同時代にエルビス・コステロとかトム・ロビンソンも学生服着てたなあ。


今度はドイツの誇るパンク・バンドだったデアKFCの2ndアルバム・裏ジャケットより。後に重厚なデジタル・パンクを展開して今でもマニアが多いトミ・シュタンフのルーツとなったバンドだ(写真中央)。ドイツ語の難しいタイトルが付けられているので無学のROCKHURRAHにはさっぱりわからんが確か「ソビエト連邦共産党中央委員会の酔っ払い」というような雰囲気のタイトルだったような。最初は握手とかして談笑していた会談だったけどそのうち酔っぱらってグデングデンになり、最後は制服の下パンツ一丁になってしまった、というような経緯を現わす写真がコミカルなのに音の方は割と暗めで硬質。しかしシュタンフの顔つきは不敵そのものでこういう服装や帽子が非常に似合っているな。使ってる服も下っ端兵士ではなく偉い人のもの。というわけで高官度No.1がこれで決まり。


同じ系列としてはユーゴスラヴィアのインダストリアル音楽政治集団、レイバッハ(他の呼び方もあるが80年代風にこう呼びたい)もまた軍服がおそろしく似合う本気系の人々。子供の頃、九州のどこかの温泉地で特攻隊の服を着たパフォーミング歌謡集団を見て衝撃を受けたROCKHURRAHだが、このレイバッハはそんな子供だましとは比べ物にならない迫力。何を言ってるかはさっぱりわからないがインパクトは強烈で、本来の意味でのミリタリー度では今回のNo.1だろう。


さて、最後はやはりパンクでしめようか。クラッシュのヒット曲「Rock The Casbah」のビデオより。クラッシュがミリタリーな服装をしてたのはこの時期だけのようだが、さすがスタイリッシュなパンク者達だけに似合いっぷりはすさまじい。ポール・シムノン決まりすぎ、ミック・ジョーンズ顔隠しすぎ。このスタイルを真似た人もさぞ多かったことだろう。
あとはエクスプロイテッドや初期ハードコアの連中のようにカーゴパンツをブーツインしてスタッズベルト、上はライダース・ジャケットというような折衷スタイルは今でもパンク系のライブではよく見かける。

ミリタリーを取り入れた服装には「何かと闘う」という意味もあるし逆に「反戦」という意味もある。しかし最も多いのは「ポリシーは特になし」というものでROCKHURRAHも最初にそう書いているな。服装ごときで主義主張を全て体現するつもりはないから見た目だけの人になるのはやめよう、という程度でいいと思う。

本当はまだまだ本格派のミリタリー・スタイルのバンドは数多く存在していただろうが、イザとなると思い出せないもんだから、相変わらず企画倒れの記事となってしまったのは否めない。Mission Failed.
反省して次に活かします。