SNAKEPIPE MUSEUM #21 Melvin Edwards

【メルヴィン・エドワーズの作品。重厚でカッコ良いね!】

SNAKEPIPE WROTE:

今年の3月にフランシス・ベーコン展を鑑賞して以来、またとんと美術館にはご無沙汰のSNAKEPIPE。
今月が終われば今年も半分終わってるってことだよね。
なんとも月日の経つのは速いねえ。
そのうちに美術館は夏休み用の企画を立てるに違いないから、また子供向けのあまり好みじゃない展覧会のオンパレードになるんだろうなあ。
そんなことならいっそのこと、またいつものように自分が好きなタイプのアートを個人的に楽しむ時間を持ったほうが良さそうだね。

ROCKHURRAH RECOREDSのプロフィールにも書いているように、シルバー色でピカピカ光るインダストリアル系はSNAKEPIPEの大好物!(笑)
上の作品を目にした瞬間、
「ひーーー!カッコ良い!」
と叫んでしまったのである。
なんとも重厚で、意味不明の物体。
一体これは何?

調べてみると、これはメルヴィン・エドワーズというアメリカの彫刻家の作品だということが判明。
日本には「アモーレの鐘」で有名な美ヶ原高原美術館に作品が展示されているようだけど、アーティスト本人に関する詳しい情報はほとんど見当たらない。
そこでまたもやSNAKEPIPEが翻訳して、紹介してみようと思う。
毎度のことながら誤訳があったらごめんなさい。(笑)

メルヴィン・エドワーズは1937年アメリカのテキサス州生まれの今年76歳。
ニューヨークに住み、一年のうち数ヶ月はセネガルで過ごし、そこで彫刻家として活動しているらしい。
メルヴィン・エドワーズはアフリカ系アメリカ人なので、インスピレーションを祖先が住んでいたアフリカに求めているんだって。
南カリフォルニア大学を卒業した後、更にLos Angeles City Collegeとthe Los Angeles County Art Instituteでも勉学に励む。
1964年にはSan Bernardino Valley Collegeで、その後the Chouinard Art Instituteやthe Orange County Community College in New York、the University of Connecticutで教鞭を執っていたとのこと。
専門が何だったのかは書かれていないけれど、大学教授だったとはすごいね!
1965年、カリフォルニアのサンタバーバラ博物館で初めての個展を開催。
1972年から2002年まで、Rutgers Universityにおいて、彫刻や第三世界の芸術家についての授業を行う。
1975年にグッゲンハイム助成金を与えられる。
これはジョン・サイモン・グッゲンハイム・メモリアル財団が毎年主催する助成金制度で、アメリカ国民と永住者、ラテンアメリカとカリビアン諸島の人が申し込むことができるとのこと。
助成期間は1年間で2008年には約4万3000ドルの奨学金の支援をしてくれた、と書いてあったよ。
現在のレートで約420万円の資金援助は、かなり助かるだろうね!(笑)

それ以降も数々の個展の開催や、メトロポリタン美術館やニューヨーク近代美術館など多くの美術館に永久保存作品としてコレクションされているとのこと。
メル・エドワーズはアメリカの主要な同時代の彫刻家のうちの1人です、と書かれている通りにかなり有名な、しかもインテリジェンスなアーティストなんだね!

メルヴィン・エドワーズは立像型の彫刻と壁掛け型彫刻やリトグラフ、アクリル絵の具などを使った絵画も手がけている。
その中でSNAKPEIPEが一番興味を持ったのは壁掛け型の彫刻で、「Lynch Fragments」というシリーズである。


上の写真は、2012年の11月から12月にかけてニューヨークのAlexander Gray Associatesというギャラリーでの個展の模様である。
手前に有刺鉄線が下がっていて、左にはチェーンみたいなのも見えるよね。
更に奥の壁には、「Lynch Fragments」が展示されている。
いいねー!
この雰囲気、「SNAKEPIPE MUSEUM #19 Kendell Geers」で特集した、南アフリカのアーティスト、ケンデル・ギアーズに近いよね?
結局SNAKEPIPEの好みが、アブナイ側寄りってことなんだろうな。(笑)
それにしても「Lynch Fragments」シリーズは、どういう意図で制作されているんだろうね?
スペルが同じだから、デヴィッド・リンチに捧げる作品とか?(んなバカな)

「Lynch Fragments」は公民権運動からインスパイアされてできた作品で、1963年から現在まですでに200を超える作品が制作されているらしい。
公民権運動ってことは人種差別を撤廃せよ、とアフリカ系アメリカ人が立ち上がった運動のことだよね。
やはりメルヴィン・エドワーズも社会的な思想の元、制作をしていたんだね。
作品は金槌やハサミ、岩やチェーンなどの様々な素材を使用し、視覚的にも構造上にもバッチリな構成の元に接合されている。
恐らくそれぞれの素材にも公民権運動や、アフリカからアメリカに連れられた歴史などに関する意味があるんだろうな。
チェーンは完全に理解できるよね。


鋼の見事なシェイプにうっとりしちゃうね!
破壊的で、サイバーパンクっぽい雰囲気。
フランク・ステラの彫刻にも似た感じだね。
ううっ、たまらない!
200個の内の5個くらいをチョイスして、是非自宅に飾ってみたいよね!
もしくはこのモチーフでブローチがあったらとても素敵だと思うんだけど?
重過ぎて洋服には使えないのかしら?(笑)

メルヴィン・エドワーズの個展、やらないかなあ。
レプリカで良いから「Lynch Fragments」を手に入れたいな!

SNAKEPIPE MUSEUM #20 Germaine Richier


【Germaine Richier 1946年の作品:La Mante。人?未確認生物?】

SNAKEPIPE WROTE:

先日久しぶりにIKEAに行ってきた。
今まで一度も行ったことがない長年来の友人Mのお付き合いである。
当然ながら前回行った時とはディスプレイが変わっていて、2DKの50m2用といった具合に、見る人が自宅を想像し易い商品紹介をしていたのが面白かった。
相変わらず上手い戦略立ててますな!(笑)
あんなにスッキリ部屋がまとまることはないのに、IKEAに行くと整然として清潔感溢れる、豊かな生活が実現できそうな気分になっちゃうから不思議だ。
リビングはテーブルと椅子、写真集を置くための理想的な本棚があり、ゆっくりお茶を飲みながら鑑賞できる。
そして背面には大きな壁があるから、そこには絵画や写真をドーンと飾れる。
こんな素晴らしい環境だったら、どんなに素敵かしら?
と、妄想を膨らませるSNAKEPIPE。
まんまとIKEA戦法にやられてるね。(笑)

帰宅後妄想の中での部屋のディスプレイを開始!
壁に飾る絵や写真、棚に置く良い彫刻はないかな、と探してみたのである。
ここで発見したのが上の作品。
なんとも不気味で存在感のある奇妙な形!
ものすごくSNAKEPIPEの好みである。(笑)
この作品を制作したのは誰だろう?

調べてみるとこれはGermaine Richierというフランス人の作品だった。
フランス人の名前の読み方はよく分からないんだけど、多分ジャーメイン・リシエで良いと思う。(違ってるかもしれないけど)
そしてなんとジャーメイン・リシエは女性だったんだよね!
ジャーメインといえば、パッと思い付くのがジャクソン・ファミリーのジャーメイン・ジャクソンだったから、勝手に男性だと思ってたよ。(笑)
日本でも男性なのか女性なのか判らない名前はあるもんね。
そしてジャーメイン・リシエは、日本ではほとんど知られていないアーティストのようなので、またもや(!)SNAKEPIPEが翻訳して紹介致しまする。
誤訳があったらごめんなさい。

ジャーメイン・リシエは1902年アルル近くのグランで生まれる。
モンペリエの美術学校において、ロダンの元助手だったルイス=ジャック・グイグエの元で、1929年にグイグエが亡くなるまで勉強をする。
その後パリへ。
この間にアルベルト・ジャコメッティと知り合う。
この時期にセザール・バルダッチーニとも知り合っているらしい。
二人共彫刻界での巨匠だよね!
きっと物凄い高尚な話題で盛り上がってたんだろうな。(笑)
1936年にPrix Blumenthalを獲得する。
これは若いフランス人アーティストを発掘し援助する目的で開催されていた、期間限定のパトロン企画みたいな感じなのかな。
Franco-American Florence Blumenthall財団が2年間で約10000フランの資金提供をしてくれたらしい。
お金よりも、世間的に認められたという実績のほうが大きい感じなのかな?
1951年にはサンパウロ・ビエンナーレにて彫刻賞を受賞。
1959年に死去。
リシエの作品はペギー・グッゲンハイム・コレクション(マックス・エルンストの元妻)やテートなどに所蔵されているらしい。

有名彫刻家の名前はゴロゴロ出てくるわ、所蔵されている美術館も有名所はたくさんあるわ、でお見事だよね!
こんな女流彫刻家なのに、日本語で検索しても出てこないのが不思議。
名前の日本語読みが間違っているのかしら?(笑)

ジャーメイン・リシエは、コウモリ、ヒキガエル、クモや人間と動物のハイブリッドのような創造物を彫刻として作品にする。
SNAKEPIPEが一目惚れした作品も、タイトルでは「La Mante」、英語で「The Mantis」と書いてあるのでカマキリだろうけど、人間との融合に見えないかな?
例えば古代エジプトやギリシャ神話の中に出てくる神にも人間と動物の融合体を見かけるけど、昆虫と人間のハイブリッドは珍しいよね?(笑)

上の作品は「la chauve-souris」(1946年)で、これはどうやらコウモリと人間が混ざっているように見えるよね。
「コウモリ人間」といえば「バットマン」。(笑)
「バットマン」はコミックとして初めて登場したのが1939年というから、丁度年代的には同じくらいの時期になるね。
リシエが「バットマン」に影響を受けて制作したのかどうかは謎!

ジャーメイン・リシエについての解説には一言も出てきていない単語だけれど、モチーフや作品を観る限り、SNAKEPIPEにはシュルレアリスムの影響を受けているアーティストに見えるな。

上の写真はブラッサイが1955年に撮影したジャーメイン・リシエとその作品。
ブラッサイ!
SNAKEPIPEはもちろん、ブラッサイが写真家だってことは知ってるし、写真の勉強していた時には、必ず出てくる名前だったはずなのに代表作を思い出せないよ!(笑)
ブラッサイについて書いてあるWikipediaによれば「同時代の芸術家達と親交があった」って書いてあるから、アーティストの撮影をしていたのは納得だね。

鏡を使って作品をダブルに、本人の顔を鏡の中に見せておきながら、リシエの手はこちらにあるという、なかなか凝った構図で撮影してるよね。
これもやっぱりシュールな感じでとても好き!
魅力的なポートレート写真に仕上がってるよね。
さすが、ブラッサイ!(←知ったかぶり)

ジャーメイン・リシエは彫刻以外にエッチングも手がけていたようだ。
上の作品は1948年から1951年にかけて制作された「Chauve-souris」、英語名は「Bat」である。
前述した彫刻作品と同じタイトルで、モチーフも全く同じだよね。
リシエにとって「コウモリ人間」は、かなり重要な意味を持っていたのかな。
それにしてもこの絵の雰囲気、どこかで観た気がする。

ウィリアム・ブレイクの「The Great Red Dragon and the Woman clothed with the Sun」(大いなる赤き竜と日をまとう女 1803年–1805年頃)に似てるよね?
縦位置と横位置の違いはあるけど、構図も近い。
どうやらこの作品は「ヨハネの黙示録」(新改訳:第12章:1-5)のシーンを描いたものらしく、「聖母マリアとキリストの象徴と竜との戦い」らしい。
上にいる「火のような赤い大きな竜」が下にいる妊婦が産む子供を食らうために待ち構えている図とは知らなかった。
「赤い竜」とはサタン、邪悪そのものを表しているらしい。
トマス・ハリスの「レッド・ドラゴン」にも、ここまで詳しい説明はなかったかな?
リシエが「コウモリ人間」を「赤い竜」になぞらえてモチーフにしていたとすれば、「コウモリ人間」もサタンだったり、邪悪な存在を表現していたのかもしれないね。

1940年代から1950年代に、フランスでどんな文化が流行していたのか、SNAKEPIPEはあまり詳しくない。
パッと思いつくアーティストは、ほとんどが男性だしね。
そんな中ジャーメイン・リシエは、異形モチーフを作品にする特異な存在だっただろうね。
光より闇、正義よりも悪を好んで制作していたように思われるリシエの作風は、現代でも充分通用すると思う。

また好きなタイプのアーティストに出会えて良かった。
実際に作品を鑑賞してみたくなったよ。
まさかの2週連続同じ締めくくりだけど、やっぱりロンドンのテート行かないとダメかしら?(笑)

SNAKEPIPE MUSEUM #19 Kendell Geers

【いきなり暗闇からこんな人が現れたら腰を抜かしちゃうよね!(笑)】

SNAKEPIPE WROTE:

「芸術は爆発だ!」でお馴染みの岡本太郎が、「なんだこれは!?」を褒め言葉(?)として使っていたのをテレビで見たことがある。
人をびっくりさせるような新鮮な驚きを持った作品こそ素晴らしい、という意味だったと記憶している。
現代アートというジャンルは、作品に理念や解説がくっついて初めて作品として成立するような傾向があるけれど、SNAKEPIPEは岡本太郎式にびっくりたまげたり、笑ってしまったり、持って帰りたくなるほど好きと思うような鑑賞方法で展覧会を巡っている。
人それぞれ鑑賞スタイルがあってもいいじゃないか、とグラスの底に顔があってもいいじゃないか風に言ってみよう。(笑)

面白いアーティストいないかなあ、と検索していたら目に飛び込んできたのが上の作品。
まさに「なんだ、これは!」というインパクトの強さ!
タイトルを確認すると「FUCK FACE」と書いてある。
ははあ、なるほど。
顔にFUCKで、まんまじゃん!(笑)
この人は一体誰?と調べることにしたのである。

このアーティストは南アフリカ、ヨハネスブルグ出身のケンデル・ギアーズ
今までアメリカやヨーロッパのアーティストについてはブログに書いたことがあるけれど、アフリカ大陸のアーティストは初お目見えだね。
南アフリカと聞いて連想するのはアパルトヘイトと喜望峰だけで、他には全く知識のないSNAKEPIPE。
先日起きたアルジェリアのテロ事件もアフリカだったけれど、日本企業が進出しているなんてことも全然知らなかったし。
恥ずかしながら世界情勢関連って本当に疎いんだよね。
予備知識としてWikipediaで南アフリカについて読んでみたら、アパルトヘイトは既に廃止されていること、白人の割合が10%以下で、それ以外は有色人種であること、平均寿命が48歳(!)、更にアパルトヘイト廃止後に失業率が上がり、治安が悪化していることなどを知る。
記事を読んでいる限りでは、あまり足を踏み入れたくない土地みたいだね。
さて、こういった予備知識を頭に入れた上でケンデル・ギアーズについて、再度調査を開始!
日本ではほとんど記事になっていないようなので、英語の説明文を自分で訳したんだよね。
文章としておかしな表現だったり、誤訳があったらごめんなさい。(笑)

ケンデル・ギアーズは南アフリカ内では少数派の白人で、アフリカーンス語を話す労働者階級の家庭に生まれる。
15歳で反アパルトヘイト運動に参加するために家を出る。
前線で活動した経験を経て、政治的意味を持つ個人的思念、惨めさを伴う詩的な表現、性的興奮を伴う暴力行為といった複雑な要素を融合したアートを目指す、と書いてあるんだけど意味不明だよね?
どうやらこれがケンデル・ギアーズの本質みたいなんだけどね。
1993年、ベニスにあるマルセル・デュシャンの作品「泉」に放尿し、国際的に非難されたらしい。(笑)
同年5月ベニス・ビエンナーレにおいて学生および市民の革命のスタートを示す「1968年5月」に生年月日を変更する。
この日付がWikipediaなどにも載る公式なケンデル・ギアーズの生年月日になっちゃってるから、実際の生年月日は不明なんだよね。(笑)
そして1993年以降、世界中の様々なギャラリーで作品を発表している。

ケンデル・ギアーズについて検索している時に
「彼はアート界の問題児」
のような記事を見つけたことがある。
彼自身の行動もさることながら、作品の暴力性や政治的なメッセージなどが物議を醸すためらしい。
左の作品は「Self Portrait」(1995年)である。
割れたハイネケンの瓶なんだけど、なんでこれがセルフポートレートなの?
これにはちょっと説明が必要だよね。
ハイネケンはケンデル・ギアーズの先祖であるボーア人のように、南アフリカへ輸入されたことから、このビールをアパルトヘイトが正当な政治制度であると確信している、価値およびボーア人のモラルを表現しているんだって!
植民地支配からの自己の解放へのシンボルとしての作品、ということらしい。
ものすごく乱暴に言ってしまえば、ハイネケンを悪(習慣や価値など)に見立て、瓶を割ることで悪に打ち勝ったワタクシ、ということなんだね。
うーん、この割れた瓶の写真から、ここまで発展させて考えるのは難しいねえ。
他にもこのハイネケンビールの割れた破片を使った作品もあったけど、きっと同じような民族的な意味があるんだろうなあ。
一番初めに書いたけれど、このような説明がされないと理解できない作品っていうのは、なるべくなら敬遠したいSNAKEPIPE。
だったら紹介するなって言われそうだけどね。(笑)
ケンデル・ギアーズの作品制作におけるスタンスについて、非常に解り易い例だと思って書いてみたよ。
えっ?解り難い?(笑)

ハイネケンビールの使用は、上の文章にも出てきたマルセル・デュシャンが始めたレディメイドの概念を踏襲しているよね。
ケンデル・ギアーズの作品にはレディメイドが多く登場する。
右の作品「Carciac Arrest」は警察官が持つ警棒を2つ合わせて十字架にし、更にそれらを並べてハート型にしている作品。
ケンデル・ギアーズは例えばLOVE & HATEのような相反する事象を組み合わせることで複雑な意味を含ませることを得意としているので、このような作品を提示するんだね。
警棒シリーズは他にも警棒を円形に並べたタイプや壁一面を迷路ゲームのように配置したタイプなど、いくつかのパターンが存在する。
無機的で硬質なメタリック素材が大好きなSNAKEPIPEには、どの作品もとても美しく感じられ、家が広かったら壁に飾りたいと思ってしまう。
本来であれば、警棒を見て美を感じることはないだろう。
並べて作品として展示されるとガラリと印象が変わってしまう点は面白いね!

ちょっと小さくて判り辛い左の作品は、「POSTPUNKPAGANPOP」(2008年)というインスタレーションである。
素材がなんとレーザー・メッシュとされているので、カミソリの網ってことかね?
軍事境界線に使用されるという説明がされているんだけど、島国である日本人にはあまり馴染みのないもの。
一応画像検索して出てきたのが左の写真。
有刺鉄線がチクっとする感じだとしたら、レーザー・メッシュはザックリって感じだね。
変な角度で刺さってしまったら肉が削げそう…怖い!
それがラビリンスになっているらしいので、カミソリだらけの迷路を歩いて鑑賞する、とても危ない作品なんだね。
しかも床は鏡面仕上げというから、迷路が更に拡張している気分になりそう。
アート作品鑑賞というよりは、むしろ拷問を受けてる感じだよね?
作品の解説によれば、神秘的な真実の探求を目的としているとのこと。
SNAEKPIPEにはチキンレースみたいな肝試しのように見えるよ。
これも一種のレディメイドになるのかな。
ケンデル・ギアーズは物騒なブツが得意なんだね!


ここからは民族的、宗教的テーマについての作品について見ていこう。
左「Country of my skull」(2010年)は、南アフリカの作家Antjie Krogの著作「Country of My Skull」(1988)からインスピレーションを得て作られた作品。
ニューカレドニアの人喰いトロフィーとのことで、ケンデル・ギアーズの根源に由来する彫像という説明がされていたけれど、先祖なのかな?
その本の中に何か書かれているのかもしれないね。
この点に関しては不明だけど、cannibal trophyという発想に惹かれるよ。

右上「Losing my religion」(2007年)は仏像に単語を書き連ねた作品。
右下「Fuckface (Skul Version)」(2005年)のデザインされた文字にとても似ているように見えるので、やっぱり「FUCK」と書き連ねているのかな?
仏像にFUCKね。(笑)
これも宗教関係者から抗議されそうな作品なのかも。

デミアン・ハーストの「For the Love of God」という、スカルにダイヤモンドをびっしり貼り付けた作品は2007年作なので、スカルにFUCKと書き連ねたケンデル・ギアーズのほうが早いんだね。
何故だかこの「Fuckface (Skul Version)」のケンデル・ギアーズ自身の解説にはナイン・インチ・ネイルズの「Closer」の詩が載っていて、謎だった。
ただしナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナーが、かつてシャロンテート事件が起きた家に住んでいたと読んだことがあるので、どこかに通じる部分があるのかもしれないね?

その共通点かもしれない一つに、FUCKという単語がある。
「Closer」の歌詞の中にも
I want to fuck you like an animal
なんて感じで登場するんだよね。
ケンデル・ギアーズの作品にもFUCK関係がたくさん!
例えば左の作品「FUCK Forever」は、恐らくハリウッド映画に登場するような女優のパロディだろうね。
こんなスマイルで「FUCKよ永遠に!」なんて言われてもねえ。(笑)
実はこのインクで描かれたモノトーンのシリーズは、大股開きの女性や、性器をこれ見よがしに見せつけるようなポーズを取る男性バージョンがある。
きっと日本の美術館での展示は無理だろうね。(笑)
先日の会田誠展にも市民団体から抗議があった、という記事を読んだばかりだしね。
数枚並べて展示したら、さぞやインパクトがあって素敵だろうなと思うし、ポスターがあったら欲しいなあ!

ケンデル・ギアーズの作品は、とても挑発的で暴力的である。
加えてユーモアも含まれているのが特徴的だね。
そのユーモアがブラックな性格だから、余計に印象に残りやすい。
実際に前線で活動する運動家だったという経歴が、かなり色濃く作品に影響していることが解るし、だからこそアナーキーな作品が多いんだろうね。
作品を使って実際に政治問題の告発を行い、安全確保のために身を隠す経験までしているケンデル・ギアーズはアート界のゲリラ指導者といえるだろう。
好き嫌いもあるだろうし、恐らく敵も存在するだろうけれど、思いっ切り奔放にパンクな姿勢でアートなレジスタンス活動を続けて欲しいと願ってしまう。
ケンデル・ギアーズ展覧会、是非鑑賞してみたいものだ。

SNAKEPIPE MUSEUM #18 Aaron Johnson

20121209-top【Now We Hunt Hippopotamusという2009年の作品】

SNAKEPIPE WROTE:

最近は展覧会鑑賞が続き、なかなかアーティスト発掘をしていなかった。
前回SNAKEPIPE MUSEUMを書いたのが7月だったとは。
なんと5ヶ月ぶりの記事になるとは、月日が流れるのは早いねえ。(しみじみ)
SNAKEPIPE MUSEUMファンの皆様、お待たせしました!
今回は一枚の絵を目にした瞬間から魅了された、アーロン・ジョンソンを特集してみたいと思う。

アーロン・ジョンソンは1975年ミネソタ州セントポール生まれのアメリカ人。
現在の活動の舞台や住居はニューヨークとのこと。
1997年にアリゾナ大学で細胞生物学を学んだ後、1998年にはニューヨークでデザインの勉強。
1999年にはPratt Instituteというブルックリンにある美術学校に入学、2005年にはニューヨーク市立ハンター大学にて美術を学んだようだ。
アメリカの学校制度について詳しくないSNAKEPIPEだけど、23歳から30歳くらいまで美術学校や大学に通ってアートの勉強をする人って日本では珍しいんじゃないかな。
もしかしたらアメリカでは一般的なのかしら?
羨ましい環境だよね!
そしてアーロン・ジョンソンは2003年あたりからグループ展に参加、2004年には個展を開いているというから大したもんだ!
ということは大学在学中には作品を発表していたことになるんだね。

上に書いた以外には、残念ながら情報をほとんど入手できなかったよ。
SNAKEPIPEは知らないんだけど、イギリスに同姓同名の俳優がいるんだね?
しかもその俳優が23歳年上の女性と結婚しているらしく、「歳の差婚」みたいな記事ばかりが載っているという、全く意味をなさない検索作業になってしまった。
ウチのブログはその俳優とは別人で、現代アーティストのアーロンについて書いているので、そこんとこ夜露死苦!(笑)
では作品紹介いってみよう!

20121209-01「Stargazer」と題された2005年の作品である。
60.96cm×76.2cmの大きさとのこと。
アーロン・ジョンソンはアメリカ人なのに、作品からは東洋的な匂いがするんだよね。
赤い部分が、本当は血液とか血管なのかもしれないけれど、曼珠沙華の花に見えるせいかもしれない。
曼珠沙華、別名彼岸花も好き嫌いがはっきりする花のひとつだよね。
SNAKEPIPEはあの不思議な形や、色使いが大好き!
山口百恵の歌にもあったっけ。(遠い目)

タイトルには「星を眺める人」という単語が使われているけれど、SNAKEPIPEには魂が少しずつ抜けていき、その人を形作っていた記憶や生命力が空へと漂っていくような絵に見えたよ。
不幸な死に方をしてしまったけれど、念仏唱えて極楽浄土を夢見ているような。
そんな感想を持ったけれど、どうだろう?
怖い印象の絵には間違いないけどね。

20121209-02続いては「Tea Party Nightmare」という2011年の作品。
106.68cm×137.16cmというから、さきほどより大きなサイズだね。
まるでジェームス・アンソールを思わせる作風だけど、アンソールよりも残酷。
ブログだと絵を大きく載せていないので判り辛いけれど、アーロン・ジョンソンの絵は細部の描き込みがすごいの!
主役部分よりも、SNAKEPIPEは魅力を感じてしまう。
例えば上の絵だったら、右から2番めの女性の上部に描かれた小さい女性や、テーブルの上の人間入りハンバーガーなどが気になるなあ。
アーロン・ジョンソンは「アメリカ」を象徴する、例えば国旗や歴史上の人物などを描くことが多いので、上の絵も誰かをモデルにしてるのかもしれない。
そう考えてみると、真ん中の人物がクリントン元大統領に見えてくるよ。
えっ、全然違う?(笑)

20121209-03最後に紹介するのは「Operation Bulldog」という2011年の作品ね。
213.36cm×254cmというかなり大きいサイズだね。
戦車モチーフというのが気に入って、紹介させて頂くことにしたよ。(笑)
その戦車を操っているのはブルドッグ。
その下にいるのは…いばらの冠に手の釘だから…キリストかな?
顔がまるでインド神話に出てくるガルーダみたい。
アーロン・ジョンソンの絵にはキリストを描いた物も多いんだよね。
やっぱりキリスト教徒だからかな?
その割にはコミカルだったり、人によっては冒涜と感じるような描き方をしてるんだけど大丈夫なのかしら?
上の絵でもブルドッグがキリストと思われる人物を喰らっているように見えるんだけどね。
「人間は犬に食われるほど自由だ」
と言ったのは藤原新也だけど、キリストを人間扱いして良いものなのか?
難しい話だから、ここで言及するのはやめておこうね。(笑)
ここでまた調べていたら判明したことがあったよ。
なんとアーロン・ジョンソンの3代前、曾祖父の時代にジョンソン一家はインドでキリスト教の宣教師やってたらしい。
アーロンの時代はアメリカ在住だけど、家にはインド文化が溢れていたなんて書いてあるじゃないの!
これなら東洋文化やインド神話が絵の中に表れていても不思議じゃないね。

アーロン・ジョンソンの絵にはとても不思議な魅力がある。
残酷な笑いとでもいうのか、コミカルさと残酷さの共存。
サイケデリックや浮世絵的な要素の融合。
神話や歴史について研究を続けているという記事も発見したよ。
HPには2011年の作品までしか紹介されていなかったので、残念ながら2012年の活動については不明。
今は一体どんな材料をどんな風に料理して提供しているのか。
こういうアーティストの作品を日本でも観られる日が来ることを待つばかりだ。
エグいのが好きな人にはたまらない展覧会になるだろうね!(笑)